41.悪の手先 アナザー8 STRAIGHT JET
-南京街-
『お主、長老教会というのを知っておるか。』
翁が、門脇に尋ねる。
『ん?長老教会?
あぁ、サンタ・テレサ・マルグリット十字教会だろ、正式には。
確か、旧約派と新約統一派が揉めてるんだっけ。』
門脇が、肉まんをほお張りながら答える。
『ほう。では、内情はどこまで知っている?』
『内情?宗教にはお決まりの派閥争い、暗部の大活躍。
日本にゃ、信者、支部が少ない。日本人は、無神論が根強いからかな。
カリバー?カリバーン?とかいう戦闘集団がいる事。
陰陽術やあんたらの気孔とは違う系統の術を使う事。錬金術だっけか。
そん程度くらい。』
『では、戦闘した事は?』
『一度、暗殺されかかったな。逃げ切ったけど。』
『カド、敵多いね。』
横から春風が口を挟む。門脇の介護役、月も笑っている。
『十分だ。』
翁が指でテーブルを小突く。
『指令だ。愛知県にマグノリア修道院という施設がある。
そこを襲撃してもらう。』
『襲撃?施設破壊って事?』
門脇が聞き返す。
『正確に言うと、そこにいるシスターを暗殺してもらいたい。
名前は、シスター・ケイト。この写真の女だ。』
翁が写真を門脇に投げる。そこには、銀髪の女性が写っている。
年は、30代前半?、セミロングの髪、シスターのくせにサングラスをかけて、
タバコを吹かしている。
隠し撮りにしても、もうちょっといい写真はなかったのか。
『これ、シスター?売春婦にしか見えん。』
門脇は、笑って写真を春風と月に回す。
『カリバーンの一員だ。我々の組織も数人被害が出た。
汚辱はそそがんとな。』
『メンバーは?僕と春風?』
『月も使え。薄々、気付いておるだろうが、武術の心得がある。』
『方法は問わず?それなら僕一人で遠距離から狙撃するけど。』
『お主、狙撃もできるのか?』
珍しく、翁が驚く。
『あれ?言ってなかった?どちらかというと遠距離の方が得意よ。僕。
(監視がいるから動きづらいし、これ以上、能力を見せたくない。
+長老教会に顔を知られたくない。あいつら、しつこいしね。)』
『…方法は問わん。』
『OK。狙撃する。時刻指定なし?
私物回収させてくれない?』
『よかろう。但し…』
『分かってる。トンズラしないよう春風か月をつけてくれて構わないよ。』
門脇は、笑って翁の言葉を遮る。
『行こうぜ。春風。月もたまには南京街でるか?』
月の顔が輝く。やはり、この街を出る機会が少ないようだ。
2人を連れて、門脇は部屋を出る。
『カド、また、アウトレット行きたい。』
部屋を出て、車に向かう道中で春風がねだってくる。
『アウ…レット?』
月が首を傾げる。
『三田行ったから、竜王か長島に行ってみるか?』
門脇が指を折り、提案する。
『+*‘L‘PL、O*‘L+、+JHT…』
春風が月に説明している。
中国語の為、詳細は分からないが、月の顔が笑顔に満ちている。
わざわざ聞く必要もないだろう。
『竜王と長島、どっちが大きいか?』
春風が、上機嫌で腕を組んでくる。意外に胸あるなコイツ。
『確か、長島の方が大きいよ。』
『長島。』
春風が即答する。
月は、笑顔のまま黙ってついてくる。
『カド、中国では…』
『男が払う。だろ?
覚えてないけど僕を運んでくれたのは、春風と月だってな。
恩返し。好きな物選びな。』
『‘*{}+、@pl:」HBjkbv、うBUBYUvbjbk!!』
春風が大騒ぎする。月もぴょンぴょン跳ねている。
どんだけ薄給であのじじいにこき使われてんだ、こいつ等。
横で飛び跳ねる春風に振り回されながら、門脇は苦笑する。
さて、狙撃には”螺旋連結弾”を使うとして、どこから狙うか。
地図で位置確認せんとな。
ある程度、栄えてないと場所に困るンだよなぁ~。
”高さ”がないとね。
-愛知県 とあるデパートの屋上駐車場-
『変テコな銃。』
春風が物珍しそうにマジマジと門脇の銃を見る。
普通のライフルとは明らかに形状が違う。
全長は、門脇の身長以上。
形状で言えば、マスケットに似ているが、異様で過剰なまでの装飾、
銃身の3/4もあるレンズが付いている。
月は、アウトレットで騒ぎ疲れたのかレガシィの中で寝ている。
何しに来たんだこいつは…
『あれ、知らない?結構、有名よ。この業界では。』
門脇が銃を組み立て、微調整しながら答える。
『使える弾が限られるからかな。使用者は…限られるか。』
門脇は、自問自答し、納得する。
『こんな昼間から撃つか?』
春風が驚く。
『こんだけ距離があるし、気配も殺意もへったくれもない。
これ以上の”高さ”が稼げる場所、ナビにもないっしょ?』
門脇は、ナビを指す。
『多分、大丈夫だと思うけど、周囲警戒よろしく。
僕は、あの看板の間から狙撃する。』
『あい。』
春風は、文句も質問もせず即答する。
アウトレットの端金で黙って従ってくれるとは安い限りだ。
門脇は、周囲に人がいない事を確認した後、銃を担ぎ、
看板を身軽に登っていく。
そして、看板の隙間から銃身を出し、冶具で銃を固定する。
銃床を肩に固定し、深呼吸、一つ、二つ。
『風力……良し。湿度……良し。』
門脇は、レンズを覗きながら、一人つぶやく。
この装備がもっと早く届けば、”濵口”もスマートに暗殺できたかもしれんな。
少しだけ、悔やむ。
いかん、いかん、集中、集中。
ゆっくりと弾丸を銃の薬室に込め、ボルトを操作し準備を終える。
『螺旋連結弾、集力…』
銃が熱を帯び、蒸気を出す。
門脇は、シスター・ケイトをレンズで確認する。
他のシスター達と談笑している。
”濵口”のような盾を持っていないと有り難いな。
事前調査では防御系は所持していないはずだが。
『……………パァン!』
タイミングを見計らい、門脇が引き金を引くと銃身から六つの火花が出た。
弾丸は、回転しながら真っ直ぐ進み、
”連結”弾の由来である弾丸の構成を途中で3度分離し、
対象の頭蓋を的確に貫いた。
門脇達には聞こえないが、修道院では、シスター達の悲鳴が響いた。
『任務完了。』
銃を分解しながら、門脇は春風に伝える。
『翁に言う。』
春風は、ポケットから携帯を出し、何かを話す。
『翁から。』
春風が携帯を門脇に渡す。
『あいよ。こちら、門脇。』
『こちらでも戦果を確認した。仕事が速くて助かる。』
『命の恩人の頼みだからな。』
『ふははははは。給料は、以前の口座でいいな?
仕事がお前を待ってる。南京街に戻れ。』
『アイ、アイ、サー♪』
門脇は、笑って電話を切る。
『翁、なんて?』
『サンクスだってさ。帰ろうか。僕らの街に。』




