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39.悪の手先 アナザー6 Reckless fire

-高松市内 レインボーロード-


 『カンッカンッ!!バキッ!』


 遠藤の発砲した弾丸がRX-7のサイドミラーを弾く。


 『おいおいおいっ!直したばっかだぞ!』


 濵口は、運転席で悪態をつく。


 大学で昼寝をしていたら、いきなり狙撃された。


 ”赤マント”で防ぎつつ、


 なんとか車まで辿り着き、北へ走らせる。


 しかし、平日だというのに車は多く、なかなかスピードが出せない。


 追跡者は、なおも追走してくる。


 黒のセダン。マークX…わナンバーって事はレンタカー。


 グラサンのオールバックとスキンヘッドの2人。 


 いきなりなんだ?


 警察じゃあない。やり方が露骨すぎる。


 殺しにきてる。




 『ははは、どうせ高飛びするんじゃい!


  遠藤、撃ちまくったれ!』


 運転席で門脇は笑う。


 既に前を走る濵口のRX-7は酷い状態だ。 


 門脇は、後ろから追突し、RX-7を近くの公園に突っ込ませる。


 『そのまま、吹き飛べ!』


 運手席から飛び出て、門脇は笑う。


 携帯で車の中の爆薬を点火させる。


 ハリウッドのアクション映画さながらの轟音を上げ、


 2台の車は爆砕、炎上した。




-玉藻公園-

 

 『誰だい?あんたら、俺、ホモじゃないんだけどさ。』


 なんとかRX-7から脱出した濵口は、額の傷を拭い、

 

 自分を追ってきた2人の男達を睨む。


 『知る必要はない。』


 門脇の返事が会戦の合図となる。




 『”バニラ・ソード”!!』


 門脇は、5つの白い氷の剣を濵口に向かって打ち出す。


 『百鬼夜行テラーテイル 赤マント。』


 濵口が吼えると、左手が紅く染まり、布が盾のように展開される。


 白い剣は、紅い布に突き刺さり、進むのを止めた。


 濵口に2本刺さるが、傷が浅い。


 『ちぃっ、やっぱり、腕上げてやがる。』

 

 門脇は、小さく舌打ちをする。


 その間、遠藤が距離を詰め、ナイフで濵口に切りかかる。

 

 『ギン!』


 濵口は、躊躇いもなく、そのナイフを左手で受け止めた。


 『…そこまでかよ。』


 門脇は、木陰に身を隠し落胆する。


 くそっ。


 遠藤が何度も切りかかるが、悉く濵口の左手で払われる。


 戦闘慣れしてやがる。


 事前調査以上に、殺してやがるな。


 遠藤では、もうダメだ。


 『ヒュィィィィィン!』


 ”怨恨波動”も稼動中だが、濵口には効いていない。


 対陰陽士に特化させた事がここに来て裏目に出た。


 周りを確認すると僅かだが、一般人がいる。


 サイレンが聞こえる。


 警察が来るのも時間の問題…、マズイな。


 門脇がアサルトライフル AK-47を装備しようとした時、


 『百鬼夜行テラーテイル 首なしライダー!』


 濵口が、左手の形態を変える。


 門脇は、直感的に身をよじる。


 『ヒュオン!』


 風が、空気が鳴き、何かが門脇の頭上を通る。


 『ブシュッ!』


 噴出音がした。


 見ると遠藤が両断されていた。


 ゆっくりと、まっ二つになる。


 まだ、それはいい、まだ。


 マズイのはこっちだ。


 門脇の右手もゆっくりと体から離れていく。


 『ぐぁぁぁぁ。』


 焼けるような痛みが遅れてやってきた。


 くそっ、”プレパ・レイド”を出すべきだった。


 出しておくべきだった。


 後悔は、本当に遅れてやってくる。


 『首なしライダーを初見で避けるたぁ。


  あんた、やるねぇ。』


 濵口が笑う。


 『けど、片手落ちじゃあ、次はどうかな。


  百鬼夜行テラーテイル 口裂け女。』


 濵口の左手に禍々しい黒い鋏が出現する。


 『ちっ!』


 門脇は、左手でグロックを抜き、発砲するが、


 鋏を盾にして、濵口は、距離を詰めて来る。


 『フィナーレだ!』


 濵口が叫ぶ。

 

 『舐めるな!”プレパ・レイド”!』


 門脇が吼える。


 黒き鋏と淡い紅色の壁がぶつかり、鈍い音が辺りに響く。


 『しぶとい。さっさと死ね。』


 濵口は、上下左右に鋏を振るう。


 門脇は、左手で右手を、右手があった場所を押さえ”プレパ・レイド”を展開し続ける。


 しかし、ジリ貧。


 出血により顔色も青ざめていく。


 やがて、”プレパ・レイド”を維持できなくなり、淡い紅色の壁は消える。


 『今まであった中では一番しぶとかったよ、あんた。


  名前が聞けないのが残念だ。』


 鋏を肩にかけ、濵口は、深呼吸をする。


 『…ふぅ…心にも…ない事を。』


 門脇は、荒い息をなんとか押さえ言い返す。


 『さよならだ。』


 濵口は、門脇に向け鋏を突き出す。


 『くっ。』


 残りの力を振り絞り、門脇はなんとか横に飛び、かわす。


 ふらつきながらも距離を…予定の位置へと動く。


 『往生際の悪い。』


 濵口は、笑って門脇に向き直る。 


 打つ手なし。いや、ラス1か…


 門脇は、薄れ行く意識を奮い起こし、濵口に対峙する。 

 

 この距離では、爆発に巻き込まれるが仕方ない。


 濵口がなめきって、ゆっくりと門脇に向かって歩いてくる。 


 そして、遠藤の死体を踏み越えた瞬間、門脇はスイッチを入れる。


 耳を劈く轟音と共に二人は光りに包まれた。

 



-???-


 門脇が目を覚ますと、見知らぬベッド、天井だった。


 窓から僅かに光りが差し込んでいる。


 恐らく夕方なのだろう。


 体中が痛い。まともに動けない。


 だが、失ったはずの右手がある。感覚も僅かだが生きている。


 包帯で巻かれているところから誰かに治療された…のか?


 どこかで嗅いだ事のある匂いがする。お香か何かだろうか。


 いかんせん動けないので確認のしようがないが…


 『カド、起きたか。』


 後ろから女の声がした。


 なんとか、上半身だけ動かし、姿を確認する。


 春風だ。


 ということは、ココは南京街。


 もう、バレちまったということか。


 『激戦じゃったな。』


 春風の後ろから翁が姿を現す。


 『見てたのかよ。』


 『一部始終な。一応、けじめは着いた事にしておこう。』


 『そりゃ、どーも。』


 『しばらく、動けんじゃろうて。療養するがいい。』


 『意外だな。中国人は、もっとドライだと思っていたが。』


 『もちろん、ただではないぞ。これからは、我々の為、働いてもらう。


  黒連の術者 門脇は死んだのだからな。』


 『ん?どういう事だ?』


 『カド 死んだことにした。新聞にも書いた。』


 春風が横から補足した。


 公式には死人か。


 高飛びする必要はないし、もう、できんな。


 『体が治り次第、働いてもらうぞ。


  体が不自由な間は、”月”に世話をさせる。』 


 『よろしく。』


 翁の後ろから少女がひょこっと顔を出す。


 ショートカットで顔立ちがかなり幼い。


 十代前半か?一部の人間に受けそうな顔だ。


 だが、僕の介護、監視をするという事はそれなりの戦闘員という事か。


 しばらくは、おとなしくしておくべきだな。


 『給料は出るよな?』


 『もちろんだ。治療費は、天引きさせてもらうがね。』


 翁が笑う。


 『しっかりしてらー。』


 門脇は、ベッドに再度、横になった。


 ぎりぎり、”プレパ・レイド”が間にあって良かった。


 発動できるか不安だったが。


 まぁ、いいさ。


 生きてる。


 金、職場…


 今後の事はおいおい考えるとしよう。 




-瀬戸内海 漁船-


 『おい、なんか浮いてるぞ。ん?人だ、人。


  また、自殺かねぇ~。』


 日焼けした中年の漁師がため息をつく。


 『お~い、一応、仏さん、上げとこう。坊主、アレ出して。』


 漁師がもう一人の漁師、青年に声を掛ける。


 『おやっさん、コレでいいすか。』


 青年は、大きな熊手のようなものを漁船の奥から出す。


 『おぉ、それでいいわ。船、寄せぇ。』


 『はぁい。』


 船は、海に浮かぶ人に近づく。


 『よっこいせ。』


 漁師は、熊手で浮いていた人間を船に上げる。


 『ん?飛び降り自殺にしちゃあ、変だな。


  全身、火傷みたいだぞ。』


 『あ、ホントですね。体に火をつけて、飛び降りたんですかね。』


 二人の漁師が首を傾げる。


 『アレじゃないすか。堅気じゃない…ヤクザ絡みかもしれないっすね。』


 青年は、頬を指でこすり指摘する。


 『むごいこっちゃ。』 


 『陸まで持って行ったらマズイんじゃないすか?』


 『仏さんじゃぁ、簡単でも供養ぐらいしたらな。』


 『了解っす。』


 二人の漁師は、浮かんでいた人間をブルーシートで包む。


 船は、ゆっくりと陸へ向かう。






 『定刻になりました…自動発現…百鬼夜行テラーテイル 注射男』


 プシュッ……………




 ………トクン。

 

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