22.悪の手先 その九 フィックスドバトル
-911号室-
放課後、マンションに集合がかかる。
『今度の任務は、黒連の術者の捕縛よ。
術者の名前は、”門脇 孝弘”。
居場所は特定済み。明日、決行します。
今回は、私も同行します。チ-ムで速攻、勝負を決めるわよ。』
『『『『了解。』』』』
御門野からの指示、エゲツねぇ。5対1かよ。
どうする?
黒連に連絡するか?
門脇は耐えれるのか。
マンションからの帰路、路地裏で学校に電話する。
『はい、草津東高校です。』
『1-7の柊です。光田先生(高橋)は、いらっしゃいますか?』
『はいはい、ちょっと待っててね。』
今の誰だ?英語の内田か?
早く繋げよ!くそっ、イライラする。
『光田だ。どうした?柊?』
『あっ、その、アレです。古典じゃない、事で相談が…』
『分かった。俺の携帯から掛け直す。待ってろ。』
すぐに折り返しの電話がくる。
『光田だ。いいぞ。話せ。』
『白鞘の作戦で明日、門脇さんが襲撃される。
居場所もバレてる。
僕も作戦に参加、5対1で襲撃予定。
どうすればいい?』
『ナイス!よくやった。門脇には俺から伝える。
お前は予定通り、白鞘の作戦に参加しろ。
俺の部下が門脇のバックアップに回る。
門脇は、防御力に関しては、黒連でもトップクラスだ。
勝利できなくとも敗北はしないだろう。
柊は、適当に戦闘してくれればいい。
芝居しろ。銃弾程度では、門脇には効かん。
門脇にもお前は殺させない。
携帯の電源は切るな。GPSで追尾する。』
『了解。よろしくです。』
やばい、ドキドキしてきた。
ちょっと、お腹が痛い。
明日は、どうなる?
戦闘で芝居なんてうまくいくのか?
-マンション-
門脇の居場所への移動は、ミニバンを使うようだった。
僕は、すすんで最後尾、3列目のシートに座る。
ここなら誰にも見られないだろう。
僕は、シートの影に隠して、スマホでショートメールを高橋に送る。
『移動開始』
すぐに返信が来た。
『位置確認済。
予定通りに。』
僕は、スマホをジャケットの胸ポケットに入れる。
御門野、新堂、宇梶、平田、運転手。
皆、前方を見ている。
見られてないな。よし。
門脇の居場所らしき大津市内のマンションに着くと、
ちょうど門脇は車で移動しようとしていたところだった。
ミニバンは、その後を尾行する。
20~30分移動しただろうか、
人気のない道の駅に車を駐車し、門脇は車を降りた。
足取りはトイレに向かっているようだ。
片手で携帯をイジっている、高橋と連絡しているのだろう。
『行くわよ。』
御門野の指示で、僕らは、車を降りた。
『新ちゃん、車のタイヤ、潰しておいて。』
御門野は淡々と指示する。
新堂は従い、門脇の車のタイヤを撃つ。
『ブシュッ、ブシュッ!ブシュッ、ブシュッ!』
『ボシュン、ボシュン!ボシュン、ボシュン!』
大きな音と共に、前輪と後輪、全てパンクさせた。
門脇はトイレから出てこない。
『柊君を先頭、陽子、2人でトイレに入って。』
『了解。』
えっ?
躊躇う事なしに男子トイレ入ります?
あんた、つーかあんたらすげえよ。
僕は、ワルサーをジャケットで隠し、宇梶とトイレに進む。
小便エリアは…誰もいない。
個室は、4つの内、2つが閉じている。
『どーする?』
小声で宇梶に相談する。
『私が開けるから、ワルサー構えてて。』
『分かった。』
僕は、ワルサーを構え、個室の前に立つ。
無言で宇梶に向かって合図する。
『ガゴン!』
個室のドアを宇梶が蹴り、こじ開ける!
空だ。
『次、行くわよ。』
残りの個室前で、ワルサーを構える。
『ガゴン!』
空だ。
どういう事だ。
宇梶と首を傾げる。術で逃げたのか?
『いないです。』
僕が御門野に報告すると、車の側に居た平田が叫ぶ!
『裏から逃げとる!』
換気口から出やがったな。
古典的なネタをしやがって。
御門野と平田を先頭に僕らは門脇を追う。
道の駅の裏は森に繋がっており、薄暗かった。
『ないとは思うけど、罠に警戒して!』
御門野の激が飛ぶ。
暗くてそんなの見えねぇよ。
『”バニラ・ソード”!』
門脇が振り向き様に叫ぶと
門脇の空中周辺に5箇所、白い粉が集まっていき、
それらは棒状になり…
ん!ミサイル系か!
僕は、大げさに横っ飛びをする。
当然、僕には当たらないだろう。当てられては困る。
が、新堂は避けられなかったようだ。
新堂の左足が地面と凍結してしまっている。
『私は大丈夫です。標的を追って下さい。』
御門野を先頭に僕ら4人は門脇を追う。
森を抜け着いた先は、開けており、どうやらゴルフ場のようだ。
門脇は、振り返り僕らに向かって構える。
御門野は霊槍を、宇梶は霊剣を、
平田は手甲を、僕は、ワルサーを構え門脇をゆっくりと包囲する。
今日、始めて知ったが、平田は近距離攻撃タイプか。
じわり、じわりと門脇との距離を詰める。
門脇、大丈夫なのか?
『”バーニング・サン”!』
門脇がこぶし大の”火の玉”を平田に向かって放つ!
『ハッ、この程度!』
平田が手甲で弾こうとする。
その時、門脇がわずかに笑うのが見えた。
『触っちゃ、ダメだ!!』
『バグォォォン!』
僕の忠告も空しく、火の玉に触れた平田が吹き飛ばされる。
『着弾良し。』
門脇が笑う。
『ハッ!』
御門野が叫び、槍を携え門脇に向かって突進する。
迅えぇ。一気に門脇との距離が縮まる。
御門野が突進の勢いそのままに槍を突き出す!
その刹那、門脇が叫ぶ!
『”プレパ・レイド”!』
『ガィン!』
門脇まであと数センチの所で槍は、停止する。
御門野と門脇の間に淡いピンク色の壁が出現して、
それが槍を防いでいる為だ。
御門野のわずかな躊躇の間に、門脇が詠唱する。
『”衝動”!』
『ゴゥッ!』
つい今しがたまで御門野がいた場所が大きくえぐられる。
間一髪、御門野は避けていた。
『ちぃ、やる!』
門脇が舌打ちする。
『柊君、あみを!』
『はい!』
僕は、すぐさま平田に走りより、”慈恩”を施す。
爆発の影響で気を失っているが、手甲のお陰で火傷は酷くない。
『柊君!』
宇梶の声で振り返ったが、遅かった。
『ぐぅぇえっ。』
押された様な衝撃を背中に受け、
僕は平田もろとも吹き飛ばされた。
大した傷じゃないが、体中を擦りむいてしまう。
門脇の野郎、ちゃんと手を抜いてくれてるのか?
『くそっ、なめやがって!(台本通りやれよ!)』
僕は、大げさに毒づく。
『あみを連れて、下がりなさい!』
御門野の指示が聞こえる。
言われずとも分かってる。
これは、そういう戦闘なんだからな。
御門野と宇梶は何度も門脇へと攻撃を繰り出すが、
あの壁に阻まれている。(プレパ・レイドだっけか?)
押しているのは、2人なのに門脇に攻撃は届かない。
予定通りとは言え、大したものだ、門脇の防御力は。
平田を後方、木陰へ運び、
僕は、機を見て適当にワルサーを門脇に発砲する。
『ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ!』
『カン!カン!カン!』
当然、弾かれる。当たる訳がない。
『そんなんじゃあ、僕には届かんよ、坊や。』
門脇が笑う。
坊やって。
あんた、僕はそこまで子供じゃねぇよ。
『参ったね。4対1は流石にツライ。』
門脇が肩をすくめる。
戦闘が拮抗状態になった頃、スマホにメールが来た。
ワルサーのマガジンを交換する振りをして確認すると、
『門脇と白鞘の距離を取れ。』
とある。
ならば…
『御門野さん、宇梶、下がって!撃ちます!』
右手に円陣を記し、僕は詠唱する。
『”流れる白光、薙ぎ払え、雷吼鞭!”』
右手が発光、白い稲妻が怒り狂ったように走る。
『ドゴァ!バチチィッ!』
門脇のあの壁に当たった。
やっべ、当てちった。門脇、大丈夫かな?
爆煙で一時、門脇の姿が見えなくなる。
煙が止むと門脇の姿は消えていた。
門脇の声が響く。
『また、会おうぜ、白鞘の坊や。』
ふぃ~、良かった。無事みたいだわ。
『逃げられたわね。』
御門野が舌打ちする。
『すみません。撃つべきじゃなかったですね。』
僕は、頭を下げる。
『いいのよ。私と陽子では、あの壁を破れなかった。
あのまま、戦闘が長引いて、援軍呼ばれたらアウトだったし。
あみを運んで、新ちゃんと合流しましょ。お疲れ様。』
なんとか、戦闘は終わった。
八百長試合とは言え、肝を冷やした。
帰りの車中、”雷吼鞭”で焦げた右手を治療し、
今日のメールを全て削除してから僕は目を閉じた。




