↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/108

104.正義の味方アナザー 殺し屋はカローラフィールダーでやってくる#5

『F/O Nighthawk』


一人、自宅のリビングで”力”を発動させる。


解像度は悪くない。輪郭もしっかり出ている。


分身は僕の動きをずれなく追従してくる。遅れなし。


一通り動きを試した後、深呼吸して、ゆっくりと分身と僕自身を重ねる。


『訓練ですか?意外と勤勉なんですね』


『のぞき見はご遠慮頂きたいところだね』


僕はスマートウォッチを操作し、F/Oを解除してから、真咲の方に向き直る。


こういった日頃のトライアンドエラーが、能力の稼働時間や精度に影響しているのはわかっている。


その為、時間を見つけてはこそこそレベル上げに勤しんでいる訳よ。


あなたにはわからないかもしれませんがね。


当の彼女は興味深く僕を見ていた、観察していたと言った方が正しいだろう。


狐のような、ハンターのような目で見ている。


僕がまだ知らない、開示されていないだけで、


F/Oは使えなくとも、いわゆる陰陽術は習得しているのかもしれない。


体術に加えてなのか、件の小娘達の一人のように体術を強化するのか。


まぁ、いずれ分かるだろう。その時に、その力が僕に向けられていない事を願うばかりだ。


少なくとも気配を消して近づいてくる事に対して、なんらかの対応策を講じないと不味い。


近接戦では圧倒的に不利。


それに加えて、こんな近くに寄られるまで僕が気づけないのは致命傷になりかねない。


F/Oに集中していたのを棚に上げても、ここまで無防備に近づかれるのは僕の落ち度だ。


『事前情報では、うつ病を患い、無気力で怠惰だと記載されていましたが。。。』


『誰だって、うつ病を患い、薬漬けになれば無気力になるでしょうよ。


 誰だよ、間抜けな情報を記録した奴は』


『さて?記録者までは私は知りません。


 次のミッションが開示されました。破壊工作です』


そう言って、真咲はテーブルの上に地図と資料を置いた。




彼女が開いた地図を見ると、琵琶湖の北東部から東部、滋賀県と岐阜県の県境に


いくつかの赤丸が書かれており、


拡大航空写真が目立っていた。


『ビル?工場?いや…、ソーラーパネルかな』


『ご名答!中国資本のソーラ発電施設。恒阜賀メガソーラです』


『そんで、このソーラパネル基地をどうするのさ』


いくつかの写真を確認した後、新妻を見る。


『破壊します』


『過激、テロリストかよ』


『……』


『えっ、本気で言っているの?』


『冗談ならもう少し、派手に言うわ。延暦寺焼き討ちとか、琵琶湖大橋粉砕とか…』


お前、頭おかC。数秒の沈黙の後の彼女の回答に正直に言って、ヒイてしまう。


『あのな、僕は戦闘タイプではないし…』


『破壊方法は爆破、いわゆる爆弾で実施します』


『写真で見る限り、結構デカイ施設だ、そんな火力が出るの?爆弾は僕と君で運ぶの?』


『周辺までは私とあなたで車で移動。爆弾の設置はあなたが、起爆は私が行います』


真咲が地図を指でなぞり、メガソーラの上で軽く爪を鳴らす。


『……』


『もちろん、あなたが帰ってきてから起爆します。妻を信じなさい』


うーん、背中を預けるに足る人物なのか、まだ判断つかないんだよね。


私事ながら、女を見る目があるとは思えない。


僕の不信感を感じ取ったのか、真咲は続ける。


『基本的に無人の施設ですし、よほど危険はありませんよ。ちょろい仕事です。


 あなたの能力、F/Oがあれば楽勝』


『あのな、今のセリフがフラグって言うんだ。


 無人の施設、設備ならば単独でも、普通のチンピラでもできるだろ?


 戦闘経験者2人を派遣する。且つ、僕はステルス専門の人間だ。


 明らかに不測の事態が、高確率で、予測されるから。

 

 と僕は確信したぞ』


『あら、やっぱり鋭い。妻としてはうれしい限り。


先行班によると無人にも関わらず、迎撃されたそうです』


『攻撃方法は?地雷とか?レーダ探知された?』


『不明。まだ、死体も回収できていないそうです』


『ちょろい仕事だが、死人がでるこの矛盾。よく納得できたね』


新妻の眉間を指さし、非難するが、当の本人は涼しい顔だ。どういう神経してんだよ。


『その死体が、学もない無防備な反グレと、ニート上がりなのでちょっと判断に困るのよ。


 薬やってたのか、薬が切れたのか。本当に攻撃を受けたか怪しいの』


誰がどの口で”反グレ”なんて言っているんだよ。




”ニート上がり”。


もし、僕がF/Oに覚醒していなかったら、立場は変わっていた可能性もあるな。


『死体が回収できない理由は?』『回収する価値なし』


『ドライだね』『吐いて捨てる程いる人間だもの』


こういう言葉の節々に、この組織の性格が出るな。


末端の構成、実務の人間もこう考えていると。


『どんな死に方をしたか知っている?』


『頭を抱えて、血を吐いて倒れて、動かなくなった』


『動画はある?』『なし』


『写真は?』『これだけ』


真咲の出した写真は、二人の男性が違う服装、違う場所で倒れて、うつ伏せになっているもので


全く何も判断できない、情報にならないものだった。


『作戦の日程は?』『今週末から2週間程度』


『急ぎではないが、まったりもできない。全箇所破壊は苦しくないかい?』


『私の推測だけど、完全破壊が目的ではないと思います。中国系への嫌がらせがメインでしょう』


『陰キャすぎるwww』


フフフと彼女は笑っているが、笑うポイントでも無いような気がする。


こういう所も合わない。


政略結婚?でなければ、付き合うことも、籍を入れることもなかっただろう。


『破壊できた施設数、規模により高報酬ゲットだぜ!』


『そんなポ●モン風に言われても、かわいくないわ』


胸の前で両手を握りしめる彼女に突っ込む。


FPSとかのゲームのミッションぽいな。


メガソーラ近くまで車で移動して、F/Oでステルスかけて、爆弾設置して、脱出か…


拠点間は結構距離あるから、一日で2か所を巡るのが限度かな?


『でもさ、破壊工作、および嫌がらせ行為であればね。


 あの子、金髪の着火マンを採用してもよいのでは、僕より火力はあったでしょ?


 弾数制限はあるかもしれないけどさ』


『言い方。最大で2回の限定条件よ、正直に言って使い物にならない。


 2発撃ったら、数分間は確実に失明よ。


 要介護者を抱えてどーすんの?その後、また放置するの?』


彼女は、件の夜を思い出したのか、恨みを十二分に含んだ目でこちらを見てくる。


相当、根に持っているようだ。


『ノンノン、そこまでドライじゃない。


 火力は十分、一回撃っても時間を空ければリチャージできて無限に撃てる。


 ここまで合ってるかな?』


僕は彼女の前で大げさに人差し指を振り、話を続ける。


『無限は言い過ぎかもしれないけど、時間を空ければ再度、使用可能は合ってる』


『ならヨシ。彼女には砲台になってもらおう。


 射程は何メートルなのか、再チャージに何分間かかるのか、


 後、そうだね彼女自身の体重がいくつか確認してほしい。


 あっ、能力の制約条件は開示してくれないかな…大体の数値でいいから共有したい。


 射程が分かれば、現地に直行してカローラフィールダーに乗ったままで施設を着火できるのか、


 もしくは僕のF/Oで射程に入るまで接近しての着火なのかを判断できるし。


 2発撃っても体重次第では彼女を搬送できるしね。


 例え、連発できなくても、


 嫌がらせをメインの目的とするならば、週末のドライブがてらの強襲でもなんとかなりそう』


『よくこの短時間でそんだけ思いつくわね』


『……そうかな?限られたリソース、手札から取れる良案だと思ったけどね。


 烏丸に連絡しておいてよ』


『了解。でもね、もし、ジュリにね、金髪の着火マンが協力を拒んだら?』


『その時は次の訓練時にステルスで近づいて、後ろからセクハラしてやる』


『それは私がいないときにしてね、一応、未成年よ』


真咲の僕を見る目がゴミを見るモノのようになり、ふと何かに気づいて声を上げる。


『あっ!お前、さてはその能力で余罪、前科があるな?』


『やめろよ、冗談だよ!冗談』


『なるほど、こないだの夜の発言通り、躊躇なく実行できると。。。』


『シテナイヨー、ホントニ、ナニモシテナイヨー』




『ジュリもマリも空いているけど、ジュリだけでいいのよね?』


『ナイフブンブン丸は今回、出番なしだね』


真咲が自前のノートパソコンを操作しながら尋ねてくるのに対して、


ふざけて両手を回しながら軽口で回答する。


『了解。今回の任務期間中だと、健康診断で半日ダメな日がある。


 けど、他の平日、休日は空いている。希望の日程はある?』


『さすがに学生を平日に連れ出すのはどうかと思うよ。土日でいこう。


 と言うかホテルの予約みたいな聞き方するね』


彼女がてっきり、烏丸とチャットでやりとりしているのかと思って、モニターをのぞき込むと


文字通り、ホテルの予約サイトのような画面が開かれていた。


『ナニコレ?』


『ナリサイトよ。成田の人材派遣予約サイト』


真咲はこともなげに回答した。


『人材派遣?』


『あっ、そうか、こういう知識ないのね。えっと、白鞘とその協力会社で運営している


 戦闘及び工作員のスケジュール共有ページ。


 特定の、長期期間任務についていないフリーランスはここに登録されるの。


 ここで依頼を出したり、受けたり。ゲームのギルドみたいな、似た感じのものと言えばわかる?』


『便利だが、あんな能力者が登録されてんの?物騒すぎる。。。』


画面にはジュリの顔写真といくつかの履歴とカレンダーが映っており、


右上には時給金額と注意事項が赤文字で記載されていた。


『生々しい金額まで記載されとる、見るんじゃなかった…』


『今回、依頼任務だし、烏丸に話を通して研修扱いで割引できるわ』


『まぁ、そこらへんは勝手がわからないのでお任せします。この注意事項は何?』


『ジュリの出自とか、開示可能な能力の一部とか、生理周期とか、過去の失敗とか』


『えぐいな、いいよ。見ないし、聞かない』


『一応はあなたにも知っておいてほしいんだけど』


『プライバシーまでは…』


『ジュリ。本名不明。過去の震災でデータロスト、家族とは死別した模様。身内なし。


 社会保障上は、成田 ジュリ。


 成田館セイデンカンに引き取られて、能力に開花するものの、


 使用の際には失明の危険性、弊害があり、白鞘の陰陽師試験では2年連続で不合格。


 工作員としてみた場合、能力はあるものの協調性が著しく低いことから、


 採用履歴も少なく、任務完了率は2割に留まる。


 同期の成田 マリ及び、指導者、烏丸のみコミュニケーションが可能…』


『やめろよ、聞いてない。セイデンカン?』


 彼女に向って、手を振るもののどこかで聞いたことのあるフレーズについ、聞き返してしまった。


『たまにニュースにもなるでしょ?身寄りのない子を引き取る施設よ。


 健康診断で血液検査等を実施、才覚があればこっち側に、なければあっち側に』


『あっち側?』


『みんな大好きオゴト駅周辺♪』


真咲が人差し指で窓の外、南側を指し示す。


ちっ、踏み込みすぎたな。僕は顔を背けて冷蔵庫にお茶を取りに行く。


『お酒は飲まず、風俗にも行かない。


 人間関係には過敏で、深入りを避ける傾向にある。事前情報通りね』


真咲は僕を見て、いやな笑顔を浮かべた。人の嫌がる事を的確につく嫌な女だ。


『ほんのつい、こないだまで真っ当なサラリーマンだったんだ。仕方ないでしょ』


僕は顔をしかめながら反論するが、彼女は続けて一蹴する。


『工作員なんて関係なく、震災孤児、風俗堕ちはあるでしょ?


 みんながみんな、きれいなキャベツ畑で生まれて、花をめでながら生きていけるとでも?続けますね』


僕の回答を聞く前に彼女はジュリのページを再び読み始める。


『下記理由から採用時は要検討すること。おススメはしない。


 ①震災時、津波に巻き込まれて溺れたようで、海や湖、大きな池、プールを極端に嫌がる傾向あり。


  水辺周辺の任務遂行が極めて困難。


 ②地震に遭遇した際はパニックになり制御不能になる。


  過去の任務にて車両移動していた際に偶然地震に遭遇。


  パニック状態で能力を開放し、自身も含めて同行者を病院送りにしている。


 ③生理時はホルモンバランスの影響か、能力の加減ができず、出力が極めて不安定になる。


 ④震災時の後遺症か、過去の任務での負傷か、能力の弊害かは不明だが、右目が"色覚異常"である。


  本人曰く、左目は正常に見えるとの事だが、検査結果はグレー』


『色覚異常?』


聞きなれない言葉だ。


『色盲といった方が分かりやすい?』


『色が判別できないと』


『YES。生理周期と報酬額についてはどうする?』


『さすがにそこまではいいよ。知りたいのは能力条件。詳細まで開示されているの?』


『パイロキネシスのみ。烏丸とか上級資格者であればもう少し詳細も見れるかも』


『そっか、いいよ。色覚異常はおそらくパイロキネシスの弊害だろうね』


『私もなんとなくそう思うけど、なぜ?』


『こないだ対戦した際も、"右目"で初弾を放ってきたよね。


 覚えた順番なのか、彼女の癖なのか、発動条件として"右"からなのかは不明だけどね。


 流石に2発撃つと失明状態になるから、基本的には一発しか撃たない。


 つまり、常に右目のみ酷使するから。


 あと、こないだの戦闘時も右目で初弾を放った後、


 左目ではなく、右目の方が強くが光ったままのように感じてさ。

 

 左目は緊急時、暴走時ぐらいしか使わないし、使えない。


 後、戦闘後の休憩で右目のみ目薬を使っていたこと。からかな』


『そんな所までよく見てますね。ん?えっ、あなた結構長い間、ずっとあそこにいたの?』


『そうだよ、君は早々に僕がトンずらしたと思っていたのかもしれないけど、


 F/Oの稼働時間確認も含めてあそこにずっと、じっとしてました。


 女子会、4人で僕の悪口で盛り上がっていたのも、ぐっと堪えて聞いていましたよ。


 車回収して先に家には帰っては来ましたがそんなに時差はなかったよ』


『気持ちワルッ!陰キャすぎる、ガハハハ』


『……ジュリちゃんは土日だけ予約しておいて』


高笑いする嫁に一言告げて、僕はお手洗いに逃げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。