第21話 王都の妨害
「……面白くないな」
その一言から始まった。
ルクスバリア
王都貴族院。
豪奢な会議室には、
重苦しい空気が漂っていた。
机に積まれているのは、
最近の経済報告書。
そこに何度も出てくる名前。
ノルディア辺境
。
「辺境の物流量増加」
「商会流入」
「新規雇用拡大」
報告を読みながら、
貴族たちは露骨に顔をしかめていた。
「あり得ん」
「雪しかない土地だぞ」
「何故発展している?」
その答えを、
彼らは理解したくなかった。
理由は一人。
エレノア・ヴァレンシュタイン
。
婚約破棄された“悪役令嬢”。
追放同然で去った女。
そのはずだった。
なのに。
今や辺境経済は、
王都商人たちの注目市場になり始めている。
年配貴族が舌打ちした。
「放置すれば危険だ」
「辺境ごときが力を持てば、
王都の権威が落ちる」
結局。
彼らにとって重要なのは、
国家ではない。
利権だった。
数日後。
王都から新通達が出される。
辺境向け物流制限
関税引き上げ
商会監査強化
露骨な妨害だった。
特に商会への圧力は酷い。
「辺境との取引を減らせ」
「王都許可を見直すぞ」
暗黙の脅迫。
いつもの王都政治だ。
だが。
商人たちの反応は、
貴族たちの予想と違った。
王都中央商業区。
大商会長
クロード・ベルマン
の執務室では、
複数の商人が集まっていた。
「関税強化だそうです」
「辺境取引を減らせと」
若い商人が困った顔をする。
だが。
クロードは鼻で笑った。
「減らす理由がない」
即答だった。
「ですが貴族院が……」
「利益を保証してくれるのか?」
誰も答えられない。
クロードは机へ報告書を投げた。
「王都市場は飽和」
「規制だらけ」
「許可制」
「賄賂必須」
そして。
「辺境は違う」
空気が静まる。
「契約が速い」
「物流が安定」
「余計な中抜きがない」
商人たちが頷く。
皆、
同じことを感じていた。
今、
一番稼げる市場は辺境だ。
感情論ではない。
数字の話だった。
一方その頃。
辺境では、
王都の妨害報告が上がっていた。
領主館。
役人たちが焦っている。
「関税が増加しました!」
「南部物流も一部停止!」
だが。
エレノアは驚かなかった。
「想定内です」
紅茶を置く。
落ち着きすぎている。
レオン・グレイハルト
レオン・グレイハルト
が苦笑した。
「焦らないのか?」
「市場原理に逆らう政策は長続きしません」
即答。
彼女は資料を机へ広げる。
「利益が出る限り、
商人は来ます」
それが全てだった。
王都貴族は勘違いしている。
商人は忠誠で動かない。
利益で動く。
そして今。
利益があるのは辺境だった。
数週間後。
妨害はさらに強まった。
だが。
同時に、
辺境へ来る商会も増え続けていた。
理由は単純。
儲かるから。
酒場では商人たちが笑っている。
「王都の連中、
まだ理解してねぇな」
「金の流れは止められねぇよ」
誰かが酒を掲げた。
「結局、
勝つのは利益だ」




