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6。fīnālitās

「み、見つけました!」

「何処だ?」


城の隅、気を失ったまま倒れてる少女をある騎士が見つけ出した。


「ど、どうしますか、団長。」

「この姿を見せたら、全員殺されます。」


悩みの果て、騎士団長は口を切る。


「まずは連れていく。」

「団長!」

「仲間の命がかかっている。このまま俺たちだけ逃げても意味がない。」


門が開けると、王座から手遊びしていた女王が立ち上がる。迎えにきた足音は徐徐に遅くなり、いずれ立ち止まる。


「あら。」


荷物のように運ばれてくる少女を見た瞬間、女王はスイッチがきかないおもちゃのように首を傾げた。


「もしかして。」


女王が近づいても、指で触っても、いくら撫でても、反応はなし。その時、女王の中の何かが壊れた。


「コワレタ?」


女王が笑った。冷えた視線が、騎士たちを向いた。肉片をむしられた仲間の悲鳴に、騎士団は仰天する。


「こ、これはいったい!」

「悪魔、悪魔だ!」

「悪魔を殺せ!」


誰もが剣を抜き放ち、攻めてくる。ありえない理由と共に攻めてくる理由は、生きたいから。


「殺す?儂を?」


飛びかかる騎士たちを見て、女王はにこり笑う。


「ああ、そう。反逆には然るべき処置をする。」

「ぐあっ!」

「そんな論理だったっけ?」


錆び付く剣が腐食した。消え去る剣と共に、人々の肌も皺が寄る。


「気が済まない。」


腰が曲がり、白髪になる。女王は死ななくて苦しむ命をじっと見つめた。


「どうすれば気が済むかな。」


わからないから、全てを試してみる。偶然と気が済むまで苦しめたらよい。そう決めて手を上げる時、後ろから抱きしめる温もり。よろめきながらここまで来て、自分を止める小さなて。その感覚に気づいた瞬間ー。


「不思議ー。」


女王の目が、閃いた。


「ねえ、君は優しいふりをするの?それとも、もしくは人類愛で満ちているの?」


腰を抱いてる小さな手をギュッと取って、女王は少女を振り向いた。


「こんな状況でも、きみはあれらを救いたいの?」


女王は両腕を広げて、倒れそうな少女を受け取った。


「ますますおもしろい…。」


手で振るとびくびくする体が、ありえないぐらい愛しい。この子は特別。人を操り、弄びたい気持とは違って、少女とは話し合えたい。もっともっと、彼女を知りたい。


「ねえ、教えて。」


少女が話せるほど、女王は支配していた感情を緩んだ。わけのわからない快感から解き放たれた少女はやっと気持を声にした。


「その気持は、偽りです。」

「へえ。」


今のは嘘。興味深い顔さえ仮面。


「それは全部、妙薬のせいです。」

「そうか。」


この笑いさえ嘘。


「全然知らなかった。」


全ては嘘。嘘ばかり。


「では、解毒するまで、責任を問って欲しいが。」

「えっ。」


驚いた少女が感情の果てを見せた。その時を逃せず、女王は少女の感覚を歪めた。


「ねえ、これはとても合理的な要求だよ?」

「はぁっ、ひぁあっ…。」

「きみが儂をこんな目に合わせたから。」


霞む記憶と濁る気持。暗闇の中に落ちるように、意識がどんどん曇る。多分、おかしいほどの罪悪感に惑わされ、なにを要求しても受け入れるはず。


罪悪感が少女を苦しめても構わない。手や足を断絶するよりは楽だと思うし。勝手に消えてしまい、約束を破ったのも少女だし。こんな言葉で捕まえておくことが出来るなら。


「なら。」


首筋を触れると、首筋が立つ。その粒さえ一つ一つ愛しい。


「儂に愛情を見せろ。」


感覚をまやかして、感度もあげたのに。ぼんやりとしていながらも少女は答えない。多分、持ち堪えるため精一杯。その意志が愛しくて、絶対的に折ってあげたい。


「ありえないだろう。儂がこれほどきみを愛しているなら、きみはその半分でも儂を愛すべきだろう?」

「あっ、あんっ…!」


少女を覆いかぶさる。今までの経験により、このポーズになれてしまった少女は、のしかかられても逆らわない。だって、これはあたりまえなことだから。


「これだけ愛してるのに、答えられないなんておかしい。」

「はんっ…!」

「だって、それがー。」


女王の手が少女の深い谷間を刺激する。指が隅々を触れるたび、呼吸も声も変る。少女を奏でるのがすごくおもしろくて、女王は指を止められない。


「取り引き、だろう? 」

「くぅっ、んぐっ!!」


一つをうけると一つをあげる。それが世界の真実だと洗脳した以上、少女にはこの話にならないわがままさえ、論理的に感じられる。


「大丈夫。全ては要求しない。ただ儂が望むほど。ちょうどそれだけ、きみも儂を見て欲しい。少なくても、その『妙薬』の効果から自由になるまで。」


そんな事ない。震える指も体液が漏れる脚も、一緒離さないから。動かなくなった瞳から滲む涙さえ味わってあげる。


「だからー。」


女王の手振りが薬の瓶から赤い水を持って来る。女王は一粒の薬を少女の口の中に流れる。青い瞳に衝撃が広がって、揺れ動いて、突然色あせる。


少女は思う。ああ、そう。この人なら、全てを捧げてもいい。心の底まで犯されても嬉しいだけだからー。


「一緒に遊ぼう?」


あの笑顔に、答えないと。

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