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その身は誰のために  作者: GB
序章
1/3

王国の始まり

世界観編です。感想などをいただけたら幸いです。

ーここは、とある異世界の話

昔々、とある村があった。その村に住む人々は、他の街に住む人間からは異質の存在に見えた。

アイル王国の国教とは違う宗教を信じていたからである。自己犠牲によって奇跡は起きる。それがこの異教の教えであった。特に変わり者として見られていた父子がその村にいた。

父の名はアドラース・エリック、子はアドラース・フレイトであった。

今でこそ、魔物の勢力圏は大きく減ったが当時は魔物が肥沃な大地のほとんどを支配しており人間は常に貧しい生活を送っていた。

父であるエリックは司祭として人々を救うためにとある計画を立てていた。そしてエリックはフレイトが成人した時に彼の計画の全貌を話し、協力するように頼んだ。フレイトは合意し、それから一月ほど後に計画は遂行された。

教会の中で禁断の儀式を執り行うアドラース父子。床にはエリックの血によって描かれた独特な魔法陣があり、フレイトはその中央にエリックの頭を置き、詠唱を始めた。

詠唱の直後、魔法陣が光り輝き、床が波打ち始めた。

床がエリックの体を飲み込み、異教の神アメリゴがフレイトの前に姿を現した。

神は彼に囁く。「汝が求める者は誰か」と。

彼は「人の世を作り上げる力を持つ者を」と答えた。

その後、神は波打つ床の中に姿を消し、辺りは静寂に包まれた。

彼はその後、とある村人の家へと向かった。

その家では新しく生まれた赤ん坊を祝うささやかな催しが開かれていた。

彼は赤ん坊の胸元を見つめた後に、「間違いない!神の子だ!」と叫んだ。

その声を聞いた住人たちは喜びを隠せなかった。

誰もが人の世が始まると信じて疑っていなかった。

エリックを生贄として神の子を呼び出すーこれがエリックの計画の初めであった。

神の子は街への道に捨てられ、とある親切な夫婦が彼を自分たちの子供にした。

その後、18年という月日が流れた。

神の子はカルクと呼ばれ、アイル王国に名前が知られていた。カルクはとても強く、賢く、物を知っていた。

街の騎士団が苦戦したミノタウロスに鉄の剣一本で勝利した。5歳の時である。

数少ない、作物が育つ土地を増やして人々の飢えを改善した。7歳の時である。

王国の中でも使える人がほとんどいない大魔法を含め、全ての魔法を知った。10歳の時である。

いくつもの街を滅ぼし、騎士団を壊滅させたレッドドラゴンを討った。14歳の時である。

人間の活動範囲を広げるための作戦で王から直々にリーダーに推された。18歳の時である。

彼が率いる騎士団が、異教の村に通りかかった時、司祭となったフレイトが彼の前に突然現れた。

それを合図にカルクは騎士団に向かって傀儡の魔法を放った。

司祭のもとにカルクが駆け寄り、「今こそ、あなたの父の悲願を果たす時です。」と言った。

そして司祭は彼の声に応え、彼と共に街へと向かった。

傀儡になった騎士団が街を制圧し、カルクが人々に洗脳をかけ始める。

2時間後、街は廃墟となっていた。しかし、街の人々は洗脳によってアメリゴ王国(・・・・・・)のカルク騎士団長(・・・・・・・)が魔物から街を守ったと信じていたのだ。

同様の手段で次々に街を襲撃、支配して行ったカルク達。

アイル王国の王が異常事態に気づいた時にはもう遅く、王都は陥落。

洗脳によってアイル王国の存在は消滅し、古くからアメリゴ王国が存在していた事になったのだ。

その後、口封じとして異教の村人を皆殺しにし、フレイトはアドラース王としてカルクと共にアメリゴ王国の拡大を進めていった。

カルク率いる騎士団の活躍もあり、5年後には魔王城周辺以外の地域を支配圏に置くことに成功した。

そして魔王は、カルクと相討ちになって死んだ。

人々は皆、カルクの死を嘆いた。彼の葬儀は盛大に執り行われることになった。

それから数十年後、フレイトもまた寿命より死んでいった。彼の息子が王となりその後も平和な、飢えることがない世界となりつつあった。

魔王の死後も魔物による侵略は続いていたが、騎士団達によって制圧されていた。

その後もまた、アドラース朝によってアメリゴ王国は発展していった。

けれども、偽りの王による統治を認めない者達も存在していた。

彼らはカルクによる洗脳から運よく逃れることができた者達である。

昨日までは神に祈りを捧げることを至上としていたのに洗脳によって自らの肉体をアメリゴ神に捧げることを至上とする人々。その中にも違和感を覚え、彼らの組織に合流する者もいた。

もちろん、王が気付かないはずがない。組織のアジトに騎士団を送り込み、彼らを反逆者として処刑をしていた。人々に気づかれないように。

又、常に平和な時代であるとは限らない。騎士団でさえ、太刀打ちできない強大な敵が現れることもある。

そんな時はまた、かつてエリックらが行った儀式で神の子を呼び、解決していたのであった。

時と場合により、呼ばれる神の子も違う性質を持っていた。

魔物を従えることができる者。

どんな強固な意思を持つ者も、洗脳する者。

全ての知識を持ち、文明を発展させた者。

彼らもまた、王国のために働いた。

これから話すのは10人目の神の子。そして、彼を巡って起きるとある事件である

主人公が出てくるまでもう少しかかります。

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