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朝にいきなりユーリが、レイラの元を訪れた。
レイラは慌ててユーリが居る部屋へと行くと、居るはずのない人がユーリと一緒に居た。
(あれ? 幻覚かしら……。何故。ユーリ様と、私が会いたいと言っていた男……クロウが一緒にいるの??)
微笑んでいるユーリの横で、クロウは苦笑いをしながら立っている。
そんな二人をびっくりした表情で、レイラは見ていた。
「レイラ。今日から、この人……クロウが陰で護衛に就くからね」
「えっ!?」
(クロウとまた話せるのは嬉しいけれど、ユーリ様と知り合いという設定なんてあったかしら?? むしろ敵よね!?)
「大丈夫。側にはずっといるんじゃなくて、少し離れた所で護衛に就くから。」
「そうなんですね。よろしくお願い致します」
「よろしく~」
やっぱり、レイラが思っていた通りこの男の名前はクロウだった。
にこやかに微笑みながらクロウに挨拶していたレイラだったが、頭の中はパニック状態だった。
(貴方、フリーの暗殺者じゃなかったの!? 物語と違いすぎないかしら……。)
「良かったね。レイラ。クロウに会いたいって言ってたんだろ??」
「はい。ありがとうございます……?」
(……あれ? 私、ユーリ様にクロウの事を話していないわよね? なのに、何故知っているのかしら?)
バッ!!
レイラは、勢いよく後ろに居たヴィオラを見る。レイラが向いた瞬間にヴィオラは横を見て、目線を合わせようとしない。
(やっぱり貴方ね!! 可笑しいと思ったのよ! 昨日話していた事が、現実になるなんて!! 貴方の主人は、私でしょうが!! こら! 目線反らさずに此方を見なさい!!)
そういう思いを込めながらヴィオラを見るが、一向に此方を見ない。
「それより……ねぇ、レイラ? クロウから聞いたんだけど、レイラが襲われたなんて僕聞いていないんだけどな~。それに、他の男に……それも襲われた男に会いたいって何でかな~?」
(ユーリ様が凄く怒ってらっしゃるわ!!)
ユーリの方に振り向いて確認するまでもなく、分かってしまう。ゆっくりと後ろを向くと、ユーリはニコニコと笑いながらレイラを見ている。
その笑顔が、逆に怖かった。
「あの……襲われた事を言わなかったのは、申し訳ございません。」
(怒らせてしまったわ。ユーリ様に、嫌われてしまったかしら…。)
そう思うと、顔がどんどんと下を向いてくる。
「レイラ。此方を見て」
そう言いながら、レイラの顎に手を添え。顔を上に向ける。
「ふふっ。目に涙なんか溜めて、何を心配していたんだい? 僕が、そんな事でレイラを嫌う訳ないじゃないか」
ユーリは、そう言いながらレイラの目元に口付けた。
レイラは声が出せないほど恥ずかしくなり、口がパクパクとなる。
「……ごめんなさい、ユーリ様。ただ、話してみたかったの」
「大丈夫。分かってるよ、ヴィオラに聞いたから。僕は、少し席を外すからその間にクロウと話しときなさい?」
(何か問題でも、有ったのだろうか……。)
レイラは心配になり、ユーリの方を見る。
「少し、クロウを護衛に就けた事で周りの虫が煩いからね。……黙らせるだけだよ?」
「……虫?」
意味が分からなく首を捻っていると、ユーリは何も言わずに微笑み。レイラの頭を撫でて、何処かに行ってしまった。
「ハァ~」
クロウは、いきなりため息を溢す。
「クロウ! また会えて嬉しいわ!!」
「お嬢ちゃんか、殿下に俺の事話したの」
「いえ、私の従者よ。……ヴィオラ!! 言わないでよ!」
ヴィオラの方を向くと、ヴィオラは飲み物を淹れながら首を横に振った。
「無理ですよ。あの魔王に、お嬢様の秘密を喋らないなんて!!」
(……だから、何故ユーリ様を魔王と呼んでいるのよ。)
「確かにな~。あの人は、魔王だわ」
「そうでしょ!? クロウさんとは、仲良く出来そうです。」
(貴方達、何仲良くなって握手してしまっているの?)
「ユーリ様は、魔王なんかじゃないわよ?ただ、怒った時は怖いけれど……。」
(でも、優しいからすぐ許してくれるし。そ、その後の、お仕置きの方が私は耐えられないわ!!)
お仕置きだと言って、ユーリはレイラを膝の上に座らせて髪を撫でたり。頬にキスしてきたりするのだ。
レイラは思い出すだけでも、恥ずかしかった。
「「ハァ~。」」
そんな事を思い出していると、二人に溜め息をつかれてしまった。
「「そんな事を言えるのは、お嬢様だけだ……。」」
「あの魔王の恐ろしさを知ったら、そんな事も言えなくなりますよ!? 人の弱みを握り、脅してくるんですから!!」
「……何考えているのか、分からねぇ~」
「……貴方達、そこらへんで止めといた方がいいわよ。」
「何でですか!? お嬢様が知らない、殿下を教えます! あの魔王の弱点はお嬢様だから、お嬢様が一言言ってくだされば何とかなるかも!!」
クロウは何かに気づいたのか、目の前から一瞬で消えてしまった。
(……逃げたわね。)
「あの、ヴィオラ?」
「そりゃぁ、お嬢様の事を報告するのは良いですよ?」
止めようとしても、全然止まらない。
そんな事を思っていると、ヴィオラの肩に手が置かれる。
「……ヴィオラ。楽しそうな事を話しているね?」
ヴィオラは、壊れた玩具の様にゆっくりと後ろを振り向く。ヴィオラの後ろには、ユーリが立っていた。
用事が終わったのか、ユーリが戻ってきていたのだ。
二人は気づいていなかったのか、ユーリの事をずっと喋っていた。レイラは、本人が居ることを言おうとしたけれど、二人は聞く耳を持たなかったのだ。
「ねぇ。ヴィオラ、先程魔王だと聞こえたんだけどね?誰の事を魔王と言っているんだい??」
ユーリは、優しく微笑みながら首をかしげている。
「いえ……あの……。で、殿下?聞き間違いでは……?」
「そうか、僕の聞き間違いか……。ねぇ、ヴィオラ。向こうで少し話さない?」
ユーリは、そう言いながらヴィオラを引きずって行ってしまった。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
二人が出ていき。ドアが閉まったと同時に、クロウがレイラの目の前に現れた。
「ハァ~。危なかった~」
「……貴方、逃げたわね」
「ククッ。お嬢ちゃんのお陰で助かったわ~」
クロウはそう言うと、レイラの目の前の席に着き。ヴィオラが淹れていた紅茶を飲んでいた。




