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20.閑話

???視点になります

黒色の髪の毛に細目の男。この国で珍しい黒髪で目立つ筈なのに、男は空気に溶け込むかの様に音をたてずに行動する。それは、習慣付いてしまっている癖みたいなものだった。

男は今日もいつもの様に依頼を受け、仕事が終わったらいつもの様に酒場で知らない奴らと飲む。毎日、そんな

つまらない事の繰り返しだと思っていた。


だが、数日前。

その日は、いつもと違った。


どっかの令嬢が、いきなり酒場に来て男に暗殺の依頼をしてきた。それだけ、裏の世界ではこの男は有名だった。

だが、その対象者は公爵令嬢ときた。つい、報酬が良かった為に男は受けてしまったのだ……。


(……この対象者のお嬢ちゃん、この国の王子の婚約者じゃねぇ~か。)


「あぁ~。ばれたら、めんどくさい事になりそうだな~。」


そんな一人言を呟くが、受けてしまったものはしょうがない。事前に屋敷周辺を調べてみると、侵入が出来る所が沢山あった。その事に男は驚愕した。


(……公爵家なのに、こんな警備で大丈夫なのか? それとも、これは罠か?)


そんな事を思っていた。だが、暗殺当日。屋敷にあっさりと侵入出来てしまったのだ。警備の為に兵士が立っては居るが、難なく目的の場所まで男は行けてしまった。


「公爵令嬢と言っても、か弱いお嬢ちゃんだろうから早く仕事が終わるだろう」と、その時は心の中で思っていた。


(……それにしても可笑しい。こんなにも警備の者が居なくて大丈夫なのか?)


門の所には警備の者達は立っていた。だが、屋敷の中には全然居らず。時々、執事や侍女が廊下を通るぐらいだ。

男は警備の薄さを心配をしながら、レイラが寝ている部屋に侵入をした。

男は、ぐっすりと寝ているレイラを確認し。レイラの首に、刃物を当てた時だった。


レイラは目が覚め、男と目と目が合う。


「チッ。起きたか。ごめんね。お嬢ちゃん、死んで?」


レイラの顔は真っ青になった後、何か覚悟を決めた様に此方を見た。


(悪いな~。お嬢ちゃんに恨みはないけど、俺も仕事だからな~。)


そんな事を呑気に思っていたからなのか、レイラがか弱いと決めつけていたからなのか分からないが、レイラのいきなりの攻撃に、男は防御が遅くなってしまった。

気づくと男は吹っ飛ばされており、レイラとは距離が出来てしまっていた。

体勢を立て直し。レイラの方を見ると、手を前に突き出した状態で男の方を見ていた。


(……もしかして、このお嬢ちゃんに俺は殴られた?)


痛みを訴える頬が現実を物語っていた。


「痛っ! あんた、絶対令嬢じゃないだろ!!」


「なっ! 失礼ね!!」


男はそう口に出していた。


(もしかして、来る事をバレて身代わりの奴がお嬢ちゃんの振りをしていたのか? でも、王子の婚約者はこの国では有名だ。俺が見間違う筈がない……。じゃぁ、本物か??)


その後、男の一言で何故かレイラのノロケを永遠と聞かされる事になってしまった。


「うわぁ~。やっちまったわ~。」


男は、つい言葉に出てしまったが。レイラは聞いていなかったのか喋り続けている。


(そろそろ帰らねぇと……。)


男は無理やりレイラの話を終わらせると、レイラの部屋の窓から飛び降りる。

後ろから、びっくりした様な声が聞こえたが後ろを振り向かずに立ち去った。


「あんなお嬢様も居るんだな~」


先程のレイラを思い出すと、男は笑いが込み上げてきた。


(さっさと、令嬢様に暗殺失敗だと報告して帰るか~。)



男は、依頼をした令嬢の所に行き。報告をすると、真っ赤な顔をして怒っていた。

令嬢の後ろに控えていた護衛の奴らが、男に襲いかかってきたが返り討ちにする。

振り下ろされた剣を避けながら男は考える。


「……あんなお嬢ちゃんの下で働くんだったら、楽しそうだな~。」


(この令嬢とは全然違う、じゃじゃ馬の様なお嬢ちゃんか……。)


男のつまらない毎日が、変わる様な気がした。

襲ってきた奴らを片付け。外に出ると、いつの間にか朝になっていた。


男は「あぁ。今日も、つまらない日が始まる。」と、思いながらも家に帰る。


(あぁ……眠い。家に帰ったら寝てしまおう。)


ドアを開け。家に入ると、いつもと違った。


「やぁ。お邪魔しているよ」


低く、心地の良い声が聞こえた。

何故か、この国の王子であるユーリ・フレムが自分の家の椅子に座っていたのだ。

男が咄嗟に武器を構えるが、ユーリは椅子に座りながら微笑んでいる。


「……どうやって入った?」


「ふふっ。それは、秘密だよ?」


(家の鍵は閉めていた筈……。)


「……さて。本題に入ってもいいかな?」


ユーリはそう言うと、首を傾げながら微笑んだ。


「……何の用だ~?」


「フフッ。君の事は調べさせてもらったよ? 裏では有名みたいだね? ……クロウ」


ユーリは目を細めながら、笑った。それを見たクロウは、背筋が凍る様だった。


(あのお嬢ちゃん、優しくて。いつも優しい目をして笑っているって言ってたけど、全然違うじゃねーか! ……俺は、厄介な奴に捕まってしまったみたいだな。)


この日を境に、クロウを裏の世界で見ることが無くなったのだった。



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