表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/30

18

あの後、レイラが帰って少ししてからヴィオラが帰って来た。それも、やつれたような疲れた様な表情をしながら……。


家族との夕食も終わり、寝る準備も終わったレイラは部屋へと戻っていた。

それは、外は暗くなり。家の者達も寝静まっている頃だった。レイラの部屋は明かりがついており、中からは話し声が聞こえていた。


「……それでね! ユーリ様ったらひどいのよ!?」


「……はいはい。また、ノロケな」


(ノロケではないもの!!)


しゃがんでいるレイラの目の前には、黒髪で口元は布で隠しており。糸目の男が地べたに胡座をかいて座っていた。

その男に向かって、レイラはユーリの不満を言っていた。レイラの前に座って話を聞いている男は、何処か呆れた様な表情をしている。

これまでたまっていたものを全て吐き出すかのように、レイラは止まらない。



何故こんな状況になったかというと、それは数時間前まで遡る……。

寝る準備をしてベッドに入ると、疲れていたのかレイラはすぐに眠りについてしまった。

途中寝苦しくなり、レイラが目を覚ました時だった。

誰かが自分の上にのし掛かり、首もとに刃物を当てているのが目に飛び込んできた。


(……どっきりかしら。)


びっくりした表情をレイラはしたが、比較的落ち着いていた。


「チッ……起きたか。ごめんね? お嬢ちゃん、死んで?」


暗闇で顔は見えないが、声からしてのし掛かっているのは男だった。男にそう言われた瞬間、レイラは危険を察知したのか、握りしめた拳を前に突き出して男の顔を殴る。

鍛えていた甲斐があったのか、男の拘束が簡単に解け男はレイラの上から吹っ飛んでいった。

男は、顔に手を当てながらこちらを睨み付ける。相当痛かったのか、男の目が潤んでいるのが見える。


「痛っ! あんた、絶対令嬢じゃないだろ!!」


「なっ! 失礼ね!!」


ユーリに婚約破棄された後、レイラは冒険者になろうと思い鍛えていたのだ。

武器の扱い方や護身術はヴィオラと一緒に学び、部屋では密かに鍛えているのだ。


「あの王子の婚約者は、こんなにもじゃじゃ馬なのか!?」


そう言いながら、男はふっと顔を上げた。

窓越しから入ってくる月明かりで、顔が見える。


(……この顔、どこかで見たことあるわ?)


レイラは、男をじっくりと見る。黒髪で糸目。口元は布で隠しており、分からない。


「な~に? そんなに見つめて、俺に惚れちゃった?」


「なっ! 何を言ってるの!? 私の好きな人は、ユーリ様だけよ!」


「へぇ~。噂通りラブラブだね~。そんなに、ラブラブだと不満なんてないでしょ?」


(不満!? 沢山あるわ!!)


この男の一言で、レイラの中に溜まっていたものが爆発する。

そして、冒頭の様にレイラは男にユーリの愚痴を言っていた。止めようとするが、レイラの口は止まらない。

男は、後悔していた。出来るのであれば、数分前に戻って此処から立ち去りたいと……。


「うわぁ~。やっちまったわ~。」


「それでね! ユーリ様ったら、人目があるのによ!? 私は、恥ずかしいって言っているのに!!」


「はいはい。……じゃぁ、そろそろ帰るわ。」


「え!? もう帰るの? そういえば、貴方何しに来たの?」


レイラは頬に手をあて。首を傾げていると、男は呆れた様な顔でレイラを見た。


「……今頃かよ。お嬢ちゃんの暗殺だよ~。依頼主様は、王子様とお嬢ちゃんが仲良くしているのが嫌らしいよ~?」


「……それ、言っていいの?」


「まぁ、ダメだよね~。でも、お嬢ちゃんがこんなに強いとは依頼主から教えて貰ってないし。教えて貰ってても、お嬢ちゃんを暗殺なんて無理だわ。強すぎ~。まぁ、裏切りもあるよね~?」


(いやいや。裏切りはダメでしょ!? そんなので、大丈夫なの!? 依頼主に怒られない?)


「じゃぁ、帰るわ~。」


レイラの心配を余所に、男は窓から出ていこうとしていた。

そこで、レイラは思い出したかの様に男に近づく。


「ねぇ! 貴方の名前、教えてくださる?」


「ふふっ。な~いしょ」


男はそう言うと、窓から飛び降りてしまった。


(えっ!? ここ2階よ!?)


レイラが急いで窓に近寄り。下をみると、男の姿はもう無かった。窓の下には、漆黒の闇が広がっているだけ。


(黒髪の糸目……。知っている様な気がするわ。)


「あっ! もしかして、暗殺者のクロウ!?」


物語でクロウが出てくるのは、レイラが亡くなった後だった……。

何処かの令嬢が、ユーリと仲良くしているヒロインの事が嫌いで。酒場で出会ったクロウに暗殺の依頼をするのだ。


(令嬢が、酒場に行くっていうのが問題だけど……。)


ヒロインの暗殺は未遂で終わったけれど、それを知ったユーリが怒る。

その後の物語を読む前に、前世では亡くなってしまったから、物語がどうなったかは分からない。

そこで、レイラは可笑しい事に気づく。


(あれ? でも、何でヒロインじゃなくて私なの? それに、クロウが出てくるのはレイラが亡くなる後の筈……。)


何処かでやっぱり、可笑しくなってしまったのかとレイラは不安になったのだった……。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ