↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
97/185

仲間はどこに?

 レーガとロベルトがテントに入ってくると、目の前の光景にあんぐりと口を開ける。


 男は言葉の通り、凍り漬けになっていた。


「判定は、そうだなぁ……B+」

「どうして」

「奴をご覧なさい。氷漬けじゃないか。これじゃあ話が聞けないよ。加減なさい」

「……先生、私『身柄確保』はしたわ」


 ロゼッタの言う通りだ。

 サモンが言ったのは、『身柄確保でA判定』であって、その手段も程度も、サモンは何も指定していない。


 サモンは大きくため息をついて「Aだよ。ちくしょう」と、花丸のシールをロゼッタにあげた。

 ロゼッタはそれを大事そうにポケットに入れた。


 サモンは杖で男の額を叩く。


「起きとくれよ。アンタに話があるんだからさ」


 しかし、魔法が解ける様子はない。

 ロゼッタの戦闘魔法の成績から考えると、それもそうか。


 サモンは杖でもう一度、男の額を小突く。



「もうお終い」




 サモンが魔法を解くと、男はハッとしてサモンを押しのけてテントを出ようとする。だが、ロベルトが咄嗟に男に足をかけて転ばせた。

 転んだ男の腕をねじり上げて、その場に押さえつけた。


 サモンはため息をつくと、男に杖を向けた。


「『操り人形劇ジョコ・デッラ・バンボラ』」


 男はむくりと立ち上がると、サモンの前まで歩いてくる。

 テーブルにあった縄で自分の足と椅子の足を括り付け、後ろに回した手に手錠をかける。


 ようやく男が体の自由を取り戻す。遅すぎる抵抗を睨み下ろして、サモンは問いかけた。


「お前がロウラント・ラグトーアだね?」

「それが何だってんだ」

「捕まえた妖精たちはどこにいる?」

「知りたきゃ対価をよこしな。……そこにいる坊主、体が丈夫そうだな」


 ロウラントは、ロベルトをじっと見つめる。

 薄気味悪い笑みを浮かべると、ロベルトに向かって舌を出す。


「いい労働力になりそうだ。高値で売れるぞ」


 ロベルトは剣に手をかける。サモンは「売る気はないよ」と、きっぱりと言った。

 サモンはレーガたちをテントの外で待機するように指示を出し、ロウラントに向き直る。


「情報には、対価がいるんだっけ?」


 サモンは生徒がいなくなったのを確認して、ロウラントに尋ねた。

 ロウラントは「ああそうだ」と、強気な態度をとる。


 彼の持つ仲間の情報は今一番欲しいものだ。

 出来る限り正しい情報が欲しい。けれど、ロウラントが話す情報が全て真実という確証もない。


 ロウラントに情報に見合う対価をよこせば、情報を提供してくれるだろう。だが、彼が欲しがっているのは、サモンが保護するロベルトの身柄。奴に渡せば、ロベルトは奴隷のように働かされる。


(いや、奴隷そのものになる)


 それは避けなくては。


「私はお前に対価を支払って情報を得るつもりはないよ。ロウラント、お前には選択肢が二つある」

「ほう、聞いてやろうじゃないか」

「一つは、大人しく情報を渡して、無事に解放される。もう一つは、死にたくなるような目に遭って、情報を渡す」

「へぇ、俺に暴行でもする気か? それとも魔法で拷問? 意味ねぇぞ。俺はそんなことで喋ったりしねぇ」


 ロウラントは余裕綽々といった様子でサモンを見上げる。


 たかが暴力で泣いたりしない。苦しんだりしない。

 その程度のことで、俺が情報を渡すと思っているのか?


 そう言いたげな彼の様子に、サモンは眉を下げる。


 魔法で吐かせることなんて容易い。けれど、せっかく『良いもの』を持っているのだ。

 ―—使わなくては損だろう。


 サモンはエイルに渡された資料を掲げた。

 普段はしないような、爽やかな笑みを浮かべて。




「ちょっと、聞きたい事がたぁっぷりあるんだけどねぇ」




 ***


 テントの外で待機するレーガたちは、サモンの帰りをけなげに待っていた。

 だが、サモンが一向に出てくる気配がない。


 レーガは「ちょっと覗く?」と二人に尋ねた。

 ロベルトはサモンの言いつけを守ろうとする。ロゼッタも同意見だ。


 けれど、テントの中から、ロウラントの悲鳴とサモンの愉快な笑い声が響いている。

 サモンが魔法で嫌がらせをしているのだろうか。それとも、三人には想像も出来ないようなことをしているのだろうか。


 三人は顔を見合わせて、テントに突入した。


 だがそこで行われていたのは、恐ろしい事ではなかった。


 顔を真っ赤にして叫ぶロウラントと、それを面白がるサモンの姿があった。

 サモンはけらけら笑いながら、資料の内容を読み上げる。


「『二年前、母親と口論した際に『飯がまずい』と言った。その後、母親に『お前の下着を誰が洗っているのか』と怒鳴り返されて戦意喪失』……自分の服くらい自分でお洗いなさいな」

「うるせぇ! 若気の至りだ!」

「若気? アンタ、42歳だろう。二年前が若気か? 母親は現在7……」

「うーるーせーぇー!!!」


 ロウラントをこれでもかというほど揶揄い、資料を大声で読み上げていた。

 ロウラントは止めることも、抵抗することも出来ずに叫ぶしかない。


 サモンはここぞとばかりにロウラントで遊んでいた。

 ロウラントが「もうやめてくれ」と言っても、サモンは聞こえないふりでをして、次々と恥ずかしい話をほじくり返す。


 サモンはロウラントが降参しても続けた。

 エイルが調べ上げた情報を余すことなく使って、ロウラントを屈服させた。


 ロウラントの拘束を解くと、彼はもう抵抗する力もなく、だらんと床に座って情報を提供してくれた。


「密猟者の卸先はみんな一緒だ。『デュークの錬成釜の店』だ。地下にある、元オークション会場で今は取引をしている。部屋に入るには、合言葉が必要だ」

「ほほぅ、その合言葉は?」

「……『かくれんぼしよう』」


 ロウラントはそう言い残して倒れた。

 ロベルトはロウラントの首に触れ、脈を図る。


 気絶したことを確認すると、ロベルトはサモンをじっとりと睨んだ。


「先生、やりすぎだろ」

「ちょうどいいかと思ったんだがねぇ」


 サモンは資料を脇に挟むと、テントを出る。

 ロウラントに聞いた、『デュークの錬成釜の店』を探す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。