0-1 白昼の庭園
「………ここは………?」
病室の中、ベッドの上で青年は目を覚ました。
初めて視界に入ったのは、真っ白な天井と壁。
非常に殺風景な病室だった。
ただでさえ真っ白な空間に更に白いな机とベッドがある。
新手の拷問部屋かと疑う程にまで、部屋は白かった。
青年はゆっくりと起き上がった。
全身が、筋肉を締め付けられた様に痛い。
筋肉痛の類かもしれないが、それにしては妙な違和感があった。
ふと、ベッドの横に鏡が置いてあることに気がついた。
青年は、その鏡に手を伸ばす──。
鏡を手に取り、自身の顔を眺める。
そこに映るは、オレンジ色の髪に、エメラルドグリーンの瞳をした青年。
至って普通の見た目をしている。
「おや、起きましたか。」
すると突然、病室のドアが開き、白衣を着た男が入ってきた。
その男は、緑髪で、眼鏡を掛けていた。
究極なまでに円に近い眼鏡。その特質な眼鏡は青年の視線を釘付けにした。
「貴方が草原で倒れているのを、とある五人組の旅人が助けてくれたのですよ。その一人が、貴方が心配と言って残っていますよ。感謝しなさい。」
白衣の男はそう語り、扉の先を指差す。
青年はとりあえず、彼に礼を言いに行こうと、立ち上がった。
扉の先には、二人の少年少女がベンチに座っていた。
前髪がとても長く、両目が隠れており、彼もまた白衣を着ていた。
先程の男とは違い、様々な宝石などの装飾品がこれでもかと取り付けられている。
その全てが煌めいており、一目で分かる、高級感を漂わせていた。
もう一人は、活気に溢れている少女。
青白い長い髪を下ろし、背には大きな弓を背負っている。
服装に関しては、軽装な狩人といった所だろうか。
革で作られた部位が殆どで、所々に露出が見られる。
──とにかく若い者が着そうな服装だ。
少年は青年に気づくと、やさしく声をかけた。
「こんにちは。体調の方はどうですか?」
「あぁ、今は大丈夫。頭痛がする程度だ。」
そう言うと、少年はほっと胸を撫で下ろした。
「それは良かったです。僕はフレアイクスと申します。貴方の名前を伺っても?」
「私はシレスターよ!!」
少女が挨拶に割り込む。
「貴方じゃありませんよ。」
フレアイクスは少女を制止し、青年に名を名乗る隙を与える。
「あぁ、俺は──。」
「………。」
何故だろうか。自身の名前が思い出せない。
いや、名前だけでは無い。
青年の家族、故郷、職業、過去、全ての記憶が、空っぽだった。
要するに青年は、記憶喪失だったのだ。
「──どうしたのですか?」
青年が何も発さず、静止していると、フレアイクスが心配そうに話しかける。
その言葉も、青年には届かなかった。
自身の記憶が全く無いという事実に全て上書きされてしまっていたのだ。
数十秒後、青年はようやく声を出した。
「記憶が……ねぇ……。」
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「──なるほど、記憶喪失ということですね。」
白衣の男はカルテを見ながら言う。
「まぁ……そういう事になるな。」
青年は意外にも冷静だった。
記憶を失う──それがどれだけ深刻な事なのか。それは理解しているつもりだった。
しかし、不思議な事に不具合は感じなかった。
「現時点で、他者が記憶喪失を治す方法はありません。──何か、過去の手がかりを探してそれをきっかけに思い出すくらいしかありませんね。もっとも、そんなので記憶が戻れば苦労しないのですが。」
男はそう言った。
青年は絶望した。自身の記憶が戻る事は二度と無いのかと。
自己を消失したままで、生きていけるのか。そんな不安に駆られる。
「頭を思いっ切り殴ったら治るんじゃない?」
絶望の雰囲気を完全破壊するかの如く、シレスターは拳を振り上げる。
「そんな訳無いじゃないですか!!」
またそれを、フレアイクスが制止する。
「───。」
青年はまた絶望する。
だが、絶望の闇の中、フレアイクスが一筋の希望の光を放った。
「……フリタールに、僕の知り合いの脳や心に関する専門家が居ます。彼に聞いてみるのもいいでしょう。──僕が紹介しましょうか?」
脳や心の専門家。つまるところ、精神科医がフリタールという場所に居る。
その知らせは青年にとっての、唯一の光だった。
「……ふむ、ならば、彼について行ってみては?私に出来ることはもう無いのでね。」
白衣の男はそっけなく言い残し、部屋を後にした。
医師にしては、仕事が雑すぎると心の中で文句を垂れながら、青年達も直ぐに部屋を出る支度を始める。
「───。」
ベッドの傍に、小さな鞄が置いてあるのを見つけた。
青年はそれを手に取る。
鞄には、橙色の鳥の紋様が刻まれていた。青年の着用している服にも、同じものがある。
服や鞄は同じブランドの物で揃えているのだろうか。そうならば、これは十中八九自分の物だろう。そう思い、青年は鞄を腰に掛けた。
「見たところ、君はテラリライム人のように見えますね。顔のつくりは違うけれど、服装は近い。もし違うのなら、南の大陸の出身でしょう。」
フレアイクスは青年の顔のつくりや衣服を分析し、大体の出身地を割り出そうとしていた。
「因みにここはどこなんだ?」
「ここは東の大陸の、メイリオという国です。ここから北上すれば、フリタールに着きますよ。」
「そのフリタールという国まで、どのくらいかかるんだ?」
「そうですね……ここから馬車で三日程ですかね。」
馬車で三日。決して近くは無い距離だ。
だが、記憶が戻るのなら、行く価値はあるだろう。その思いで、青年はフリタールに行くことをその場で即決する。
「よし!行こう!」
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「それではまた明日、ここで待ち合わせしましょう。」
「あぁ、そういえばなんだが……シレスターは何処に行ったんだ?」
「あぁ……それはですね。」
フレアイクスは少し気まずそうに口ずさむ。
あの病院のような施設を抜け出した後から、彼女の姿を見ていない。
「──彼女は殺しました。」
「……は?」
平然と放たれるその衝撃的な言葉に、青年は言葉が詰まる。
「──ちょっと待て!何故だ?何故殺した!?」
青年の問いに、フレアイクスはただ沈黙。
恐怖心が更に刺激される。
妙な冷や汗が頬を伝う。
「この世界は、狩るか狩られるか──なんですよ。」
「──はぁ…?」
青年は唖然とした声しか発せない。
「───。」
「……ははっ、冗談ですよ。彼女は生きています。そんなに怖がらないでください。」
フレアイクスは表面上の笑みを浮かべる
彼はそう言っているが、あの言動がとても冗談だとは思えない──それ程の気迫があった。
「……はぁ……。」
「それでは、本日はここで解散としましょう。」
青年とフレアイクスは宿屋の前で解散した。
初対面の相手だが、圧倒的な恐怖を植え付けられた気分だ。
──青年は、今起きた事は忘れる事にした。
「───。」
「……記憶喪失……か。」
改めて、自身が置かれた状況を整理する。
当たり前だが、初めての経験だった。
今まで積み上げていった経験が全て消失する感覚。恐怖というものだけでは表現できないような感覚。
そんな状況に置かれたが、青年は微かにワクワクしていた。
こういった事に対し、恐怖や不安を覚えるのではなく、胸が高まる。記憶を失う以前の彼は、一体どんな経験をしていたのだろうか──。
「───。」
ふと、思い出した。鞄の中身をまだ見ていない事を。
もしかすれば、鞄の中に何か手がかりがあるかもしれない。そう考え青年は鞄を開けた。
最初に目に入ったのは、やけに目立った、折
りたたまれた紙。
開いてみると、それは地図だった。
地図というのには少しばかり……ではない程に大きすぎた。
お世辞にも持ち運びに適しているとは言えないだろう。
大きさは部屋一室分ほど。図書館の床に貼られているタイプの地図でしか見た事が無いサイズだ。
そういえば、彼は過去に体験したことのみを全て忘れてしまっている。逆にそれ以外の、一般常識や言語などは覚えている。
これは、「エピソード記憶障害」というものだろう。
地図の下には、財布。
ただの皮財布。お札は1枚も入っておらず、小銭が大量に入っている。それだけ。
特筆すべき事は無いだろう。
次にナイフ。
鉄製では無いことは分かる。妙に輝かしい見た目をしている事から、随分と高価な代物だと推測が可能。
格好は良い。男心がくすぐられる。
次に、謎のガラス板。
ガラスの板を両端から金属で挟んだもの。
触れていると妙に安心感を覚えた。
用途は一切不明だ。
最後に、謎の石。
微かに橙色に光っている。尖った八面体の石。
ネックレスのように、紐がくくりつけられている。
青年は何も考えずに、そのネックレスを首に掛けてみる。
なんの変哲も無い、ただのネックレスであった。
青年が一度広げた荷物をまた鞄にしまっていると、突然、背後から寒気を感じた。
青年は咄嗟に振り返る。
彼の目には、モノクロに蠢くオーブのようなモノが写った。
それがとても異質な存在に見えた。
寒気、恐怖、執念、希望、騒音……様々な感情と感覚が青年を襲う。
目の前に佇む喪失感。この世の全てから拒絶されたかのような存在。
一言で表すならば──『虚無』。
両者は見つめ合った。
実際には一瞬にも満たない瞬間の筈なのに、青年にとって、それが数年のように感じられた。
「──。」
「──。」
暫くすると、オーブは駆け出した。
青年は、それを追いかけていた。
自分の意思でそうした訳ではない。身体が勝手に動いたのだ。
まるで、精神と肉体が分離されたかのような感覚だった。
青年の肉体は、全力でオーブを追いかけていた。
肉体が何を考えて動いているのか、青年には一切分からなかった。
しかし、その行動には強い『執念』を感じた。
「───。」
──やがて、オーブと青年は街外れの草原に辿り着いた。
草原といっても、半ば遺跡のような場所だ。
空は灰に濁っており、辺りに命の気配は全く感じられない。
そして、墓場にいるかのような寒気が青年を襲う。
両者を囲むように立てられた大量の石碑が、彼らを見物していた。
その石碑の数は、数万をも超えるだろう。
そんな異常なほど数があるのにも関わらず、不思議と『異常』は感じれなかった。
オーブは、その中央に佇んでいた。
少し離れた位置で、青年は追う足を止めた。
──また、両者の見つめ合う時間が始まった。
青年の肉体の顔は、憎悪に歪んでいた。
「──!!」
肉体はオーブに向かって、叫んだ。
「……。」
「────!!────!!!」
──叫び終わったと思えば、肉体は鞄からナイフを取り出す。
震えた手でナイフを強く握り、刃先をオーブへ向ける。
「─────!」
肉体が雄叫びをあげた直後、肉体は無鉄砲にもオーブの方へ突進。
ナイフをオーブへ突き刺した──かと思えば、刃はオーブを通り抜けた。
オーブに物理攻撃は無効だった。
次の瞬間、オーブは分散し、肉体を覆い尽くす。
瞬時に肉体は全身で『虚無感』を感じた。
必死に藻掻くが、それは意味を成さなかった。
やがて『虚無感』は脳の浸食を始め、肉体の制御は効かなくなっていった──。
「───!!!!!」
肉体は最期に怒鳴り声を上げ、視界は暗転した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
──目を覚ますと、そこは先程までの濁った景色とうってかわって、きらびやかな空間だった。
庭園のような場所。白を基調とした石材建築、パステルカラーで彩られた植物。雲の一つも無い、透き通った空。
見かけだけで言うならば、まさに天国のような空間だった。
青年は状況が掴めなかった。
あの禍々しいオーブと戦っていたら、突然ここに連れて来られたのだ。
青年は庭園を探索する。
どれだけ歩いても、景色は変わらない。
無限に続く回廊。
景色こそ美しいものの、その実態はどうも穢れたものだった。
──暫く歩き続けると、違った空間に出た。
細い一本道だった。
その先には、一つのベンチがこちらに背を向けて置かれていた。
そのベンチには、一人の少女が座っている。
無性に青年は少女に惹かれ、彼女の方へと歩み寄る。
少女に近づき、手を伸ばす──。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
気がつけば、元の空間に戻されていた。
状況は先と同じ。両者が見つめ合った状態。
肉体は再び動き出す。
ナイフを強く握り、刃先をオーブの方へ向ける。
今回は、手は震えていなかった。
「───────!!!!!!、」
肉体はがむしゃらに叫んだ。
何故、叫んだのか。それは青年にも分からなかった。
ただ喝を入れる為だけだったのかもしれない。
その叫びをトリガーに、ナイフが白色に発光した。
何故だろうか。肉体は力を感じていた。
底知れぬ力だ。
この力を使えば、あのオーブを打ち倒せる。肉体はそう確信していた。
思いっきり足を踏み込み、ナイフを振りかざした。
「─────!!!!」
──まるで隕石でも降ってきたかのような衝撃。
空は輝き、地は割れる。
世界は一瞬で白に染まった。
音も無く、光だけがそこに残された。
──光が治まった。
オーブが居た場所。そこには巨大なクレーターのような穴が空いていた。
肉体は、そこで力尽きた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ベッドの上、青年は目覚めた。
温かい木の天井、レンガの壁。宿屋の中だった。
(今のは………夢だったのか…?)
夢にしては、妙に現実味があった。とても夢とは思えない。
あの『虚無感』は、今も鮮明に脳に刻まれている。
一体何だったのだろうか。あのオーブの存在、石碑の遺跡、自身が放ったあの力。
試しに、手を強く握り、あの夢の中のように、力を出す方法をイメージした。
………。
………。
ピュッ
液体が発射されたかのような音と共に、青年の手の先から、白黒の物質が吹き出た。
青年は言葉を失った。
あの夢は、あの力は、本物だったのだ。
しかし、夢で見たような程の出力は出せなかった。
何度試しても、あれ程の力を出す事は叶わない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
青年はあの力を出力を高める方法を試行錯誤していた。
──気づけば、もう朝日が世界を覗いていた。
「……もう朝か。」
青年の目の下はクマで塗れていた。
一睡もしていないが、具合はそこまで悪く無い。むしろ調子が良いくらいに感じられた。
もう一日くらいは頑張れるか。と思いつつ、宿をチェックアウトし、青年はフレアイクスと約束した集合場所へと向かう──。
「……そういや、俺は何て名乗ればいいんだ?」
記憶喪失となり、彼には名前が無い状態だ。
生きる上で、名前が無ければ不便な面は多い。
ひとまず、仮としての名を決めようと、青年は思考を巡らせる──。
(──とりあえず、俺の外見から名前を決めるのが安牌だよな……。)
青年は自身の外見を振り返る。
オレンジの髪に、エメラルドグリーンの瞳。
髪は少しボサっとしており、目は釣り目でも垂れ目でもない、よく見るタイプの目。
白いシャツの上に、黒いコートのような上着を着用。それには鳥の模様が刻まれている。
ざっとこんな感じだ。
この特徴から、青年は名を絞り出そうと奮闘──。
「───。」
「『橙雀』だな。」
『橙雀』。それが青年の仮の名前だ。
『橙』は髪の色から取り、『雀』は上着に刻まれている鳥の模様から取ったものだ。
他にも、『普橙』とか、『黒鴉』とか候補があったが、最終的にはこれに落ち着いた。
少し安直な気もするが、仮の名前なのだから、多少は適当でも良いだろう。と浅い考えで決められた。
とりあえず、記憶が戻るまではこの名前を名乗る事になった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「おはよう!」
青年は一睡もしていないからか、妙にテンションが高ぶっていた。
「随分張り切っているようですね。」
フレアイクスはそのハイテンションさに驚く。
「とりあえず、もうフリタールってとこに行くのか?」
「そうなりますね。貴方も記憶をいち早く戻したいでしょう?ならば1日でも早く行った方が良いですよ。」
「そうだな。」
「とりあえず、馬車は用意してあります。行きましょう。」
そうして、彼らは馬小屋へと歩き出す──。
『橙雀』の旅が今、始まろうとしていたのだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その日の夜中。
とある廃墟での出来事である。
「観察、ご苦労さんだ。」
コンクリート製の部屋の真ん中のソファに、男がどんと腰掛けていた。
天窓から差される淡い月光が、彼の姿を照らしていた。
金髪の、少し屈強な男だ。
「『変数』はフリタールへ移動した。──彼に異常が見られましたが、どうするんですか?」
その金髪の男ともう一人、フードを深くまで被った男が、金髪の男へ問う。
「異常?──まぁいいだろ、ほっとけ。後はあの水女に任せればいい。」
「水……スレインさんに?」
「あぁ、そうだ。後はアイツに任せとけば良いんだ。」
金髪の男は邪悪な笑みを浮かべた。
煩悩の塊のようなその姿に、フードの男は苛立ちを覚えながらも、金髪の男へ報告を続ける。
「僕はこのまま観察を続ける。──お前はどうなんだ?」
男は視線を傾け、窓際に座る少女の方へ向けた。
長い黒髪を下げており、頭の天辺には狼の獣耳が生えていた。彼女は獣人族である。
「………私?」
「君以外に誰が居るんだ?」
少し間を開けた後、少女は表情の一つも変えずに答える。
「勿論、私も行くよ。」
「………仕事の為にか?」
フードの男は何かを察する。
彼女が仕事の為に動く事は殆ど無い。それは経験からすぐに推測できたからだ。
「いや、違うよ。──もっと大事な事。」
その時だけ、少女が微かに微笑んだような気がした。
「──まぁ、お前らは行くってことで良いんだな。」
金髪の男は言う。
「お前らは」。まるで彼は行かないといった口ぶりだった。
彼は続ける。
「──俺はテラリライムの方に用があるからな。そっちには行けねぇ。」
「……そんな事だと思ったさ。」
フードの男は呆れた。
金髪の男もまた、仕事の為に動くことが殆ど無い人間なのだ。
少女に比べれば、まだマシかもしれないが、所詮はどんぐりの背くらべだ。
「そうだ、最後にこれだけ言っておこう。」
金髪の男は思い出したかのように言葉を挙げる。
いつもよりもトーンが高かった。
これは彼が何か良からぬことをを企んでいる証拠だ。
「──『虚無』には気をつけるんだぞ。」
その言葉が、少しだけ淀んで聞こえた。
To Be Continued……




