↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここから  作者: きさら
PR
17/38

第17話 父と彼と故郷の秋

10月17日。


今日は私のパパの誕生日。


そして繋と一緒に私の地元へ帰る日でもあった。


今住んでいる街からは少し距離があるけれど、せっかくなら私が育った場所を繋にも知ってほしかった。


私の好きな景色や昔から食べてきたもの。


それから私の家族のことも。


今回は一泊二日のプチ旅行。


繋と一緒に地元へ帰るのはなんだか不思議な気分だった。


今日は私が案内する番だ。


……ちゃんと楽しんでもらえるかな?


そんなことを考えながら私たちは故郷へ向かった。


地元に着いてまずはおじいちゃんとおばあちゃんに会いに行った。


二人とも結構な高齢で少し認知症の症状もあった。


繋を紹介してみたものの、反応はというと……。


……誰や?


そんな感じだった。(笑)


特に驚くわけでもなく興味津々で質問してくるわけでもない。


まぁそんなものかな。


とりあえず顔を見せられたから良しとしよう。


祖父母への挨拶を終えたあとはお昼ご飯へ。


せっかく地元まで来たんだから繋にはこっちならではの美味しいものを食べてほしい。


そこで選んだのは地元で親しまれている辛い麺料理だった。


今住んでいる街では当時まだあまり見かけなかった料理だ。


私にとっては馴染みのある味でも繋にとっては少し珍しかったと思う。


そもそも繋は辛いもの苦手だしね(笑)


でも、こうやって自分の好きなものを紹介できるのがなんだか嬉しかった。


お昼を済ませたあとは地元のスーパーへ向かった。


目的はパパへの誕生日プレゼント。


パパはビールが大好きだ。


だから今回は500ml缶のビールを1ケース買うことにした。


……何日持つのやら。(笑)


でも好きなものをもらうのが一番嬉しいでしょ?


そう思って選んだプレゼントだった。


ちなみに繋はスーパーの規模や取り扱っている内容に圧倒されてテンションが上がってた(笑)


買い物を終えた私たちは一度ホテルへ向かった。


パパは祖父母と暮らしているので今回はホテルに泊まることにしていた。


そして夜。


いよいよ私おすすめの地元グルメを食べに行く時間だ。


私が繋を連れて行きたかったのは地元でお気に入りの鶏料理のお店。


私の得意料理でもある郷土料理や炭火で香ばしく焼いた鶏肉、それから新鮮な鶏肉を使った料理。


せっかくこっちまで来たんだからぜひ食べてほしかった。


特に郷土料理!


今住んでいる街でも食べられるけれどやっぱり地元のものは違うと思う。


繋にもその違いを知ってほしかった。


料理を食べた繋はこんなことを言った。


「莉衣奈が作る方が美味しいけど、こっちで食べるのとは全然違うね!」


……え?


私の方が美味しい?


むふふ♡


それ、めちゃくちゃ嬉しいんだけど!(笑)


そして繋は続けた。


「これが本場の味か!」


そうそう!


これを食べてほしかったの!


自分が慣れ親しんできた味を繋にも楽しんでもらえる。


それだけで連れてきて良かったと思えた。


それから鶏肉のお刺身。


実は繋お腹があまり強くない。


以前同じような料理を食べてお腹を壊したことが何度もあった。


食中毒になったこともあるらしい。


だから今回も少し気になっていたのだけれど……。


不思議なことにこの時はお腹を壊さなかった。


もちろん生の鶏肉に食中毒の危険がないわけではないけれど。


美味しいものを食べてお腹も満たされて。


こうして一日目は終わった。


ホテルに戻り明日に備えて休むことにした。


翌日。


昨日はお仕事で会えなかったパパに会いに行く。


昨日は祖父母に顔を見せたけれど、今日はパパと繋が初めて顔を合わせる日だ。


実は少し心配していた。


というのも、パパは結構な人見知りなのだ。


ちゃんと会話できるかな?


気まずい雰囲気にならないかな?


そんなことを考えていたけれど、実際に会ってみると意外と普通に話していた。


……あれ?


思ってたより会話してるじゃん。


そういえば繋はパパと外見が似ている。


以前繋を見た妹が「パパ?」と言ったことまであった。


だから親近感があったのかな?


それとも私が事前に繋の情報をいろいろ話していたからだろうか。


理由は分からないけれどとりあえず一安心だった。


そしてパパに誕生日プレゼントを渡した。


大好きなビール。


500ml缶を24本。


きっと喜んでくれるはず!


そう思っていたのだけれど。


「別に要らなかったのにぃ」


……出た。(笑)


パパのこういうところ。


素直に喜べばいいのに!


でもこれもパパらしい。


まったくツンデレさんなんだから。(笑)


さて。


今回の帰省には、もうひとつ目的があった。


繋に稲刈りを体験してもらうことだ。


私にとっては馴染みのある田舎の風景でも都会暮らしな繋にとってはなかなかできない経験だと思う。


せっかくなら楽しんでもらいたかった。


ところが。


……稲刈り機の調子が悪い。


えぇー!?


せっかく繋に体験してもらおうと思ってたのに!


残念ながら機械を使った稲刈りはできそうになかった。


そこで鎌を使って稲を刈ることになった。


……ずいぶん原始的な体験になっちゃったなぁ。(笑)


でもこれはこれで貴重な経験かもしれない。


そしてここでパパの出番だった。


「鎌はこうやって使うんや!」


そう言って繋に実演してみせる。


……ねぇ、パパ。なんかめちゃくちゃ生き生きしてない?(笑)


普段は人見知りのパパが鎌を手にした途端なんだか誇らしげになっていた。


慣れた手つきで稲を刈りながら繋にやり方を教えている。


「こんなに早く出来るんだぞ!」


「凄いですね!」


なんて、楽しそうな会話。


その姿がなんだか面白かった。


繋も実際に挑戦してみた。


「意外と難しいね(笑)」


そう言いながら慣れない鎌を使って稲を刈っていく。


そうでしょ?


見るのとやるのとじゃ結構違うんだよね。


やってもないけど私がドヤる(笑)


機械が使えなかったのは残念だったけれど、パパが直接繋に教えている姿を見られたのは嬉しかった。


初めて会った二人がこうして同じ作業をしている。


なんだか不思議な光景だった。


稲刈り体験が終わったあと。


ふと見るとパパと繋が狭いところで何やらこそこそしていた。


……ん?


何してるんだろう。


「何してるの?」


そう声をかけると二人は企んでいたことを白状した。


なんと。


私に投げつけるための芋虫を探していたらしい。


……はぁ!?


ちょっと待って!!


何しようとしてくれてんのよ!!!


しかもパパだけじゃなくて繋まで一緒になって!?


さっきまで仲良く稲刈りしてたと思ったら、今度は二人で私へのイタズラを企んでいたのだ。


……この二人、何やってんの!?(笑)


腹が立った私はパパのお腹に一発お見舞いしてやった。


まったくもう!!


人見知りだからって心配してたのに、いつの間にそんなに仲良くなったのよ!(笑)


でも考えてみれば。


初めて会った二人が、一緒になってくだらないイタズラを企むくらいには打ち解けていたということなのかもしれない。


……いや、だからって芋虫はやめてよね!!(怒)


こうして一泊二日の帰省が終わった。


祖父母に繋を紹介して。


地元ならではの麺料理や郷土料理を食べて。


パパへの誕生日プレゼントを選んで。


そして翌日はパパと繋の初対面!


鎌を使った稲刈り体験にまさかの芋虫イタズラ未遂事件。


……本当にいろいろあったなぁ。(笑)


でも楽しかった。


私が育った場所。


私が慣れ親しんできた味。


そして私の家族。


その一つひとつを繋にも知ってもらえた。


少し前には私が繋の家族に会った。


そして今度は繋が私の家族に会った。


少しずつ、お互いの世界を知っていく。


それがなんだか嬉しかった。


帰り道。


今回の旅行を思い返すとやっぱり一番印象に残っているのはパパと繋の姿だった。


誇らしげに鎌の使い方を教えるパパ。


慣れない稲刈りに挑戦する繋。


そして二人でこそこそ芋虫を探していたこと。


……最後のは本当に余計だったけど!(笑)


それでも。


私の大切な人たちがこうして同じ時間を過ごしてくれたこと。


それが何より嬉しい故郷の秋だった。


――第17話 父と彼と、故郷の秋 終

平和ですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。