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第5章 華やかな裏街と迫る影

風浪に近づく主人公の運命は?

 ネオンの眩い光と重低音が響き渡る下層区画の深部。イアの変装道具によって目元と声を偽装した直影は、巨大な建造物の前に立ち、思わず呆れたような声を漏らした。


「……なんだよ。裏の集会所って、ただのカジノじゃないか……?」


 イメージしていた陰惨なアジトとは程遠い絢爛豪華な光景に、直影が小さく文句を呟くと、耳元に仕込んだ超小型通信機からイアの軽い声が返ってきた。


『ふふ、驚いた? ハンターっていうのはね、大金と情報を効率よく集めるために、こういう煌びやかな場所に集まる確率が非常に高いのよ。カジノの熱気に紛れて、異世界のレアな情報や獲物の売買が行われているの』


「なるほどな……怪しまれずに潜入するにはおあつらえ向きってわけか」


 直影は息を整えると、背筋を伸ばし、慣れた足取りでカジノの重厚な扉をくぐった。


 店内には様々な種族が入り乱れ、コインの弾ける音と歓声が渦巻いていた。気配を消して店内を見渡していた直影の視線が、バーカウンターの隅で静かに酒を煽る巨大な影に留まった。


 人型の肉体に、狼の頭部と毛皮——特級ハンター『風狼』だ。


 直影は手元のホログラムメモ帳を取り出すと、肩の力を抜き、うさんくさいフリーライター特有の馴々しい口調へと切り替えて風狼に近づいた。


「いやぁ、旦那! 素晴らしい毛並みだねぇ。ちょっとお話を聞かせてもらってもいいかい? 異世界を渡り歩く噂のハンター様のお姿を、記事にしたいと思ってねぇ」


 酒杯を傾けていた風狼が、煩わしそうに鋭い黄金色の瞳を直影に向けた。


「……お前もライターか。生きるのに余程苦労しているな、そのなりで分かる」


 鼻で笑う風狼のセリフに対し、直影は「いやあ、面目ない! 貧乏暇なしでねぇ」とヘラヘラと笑いながら話を合わせていく。そして、周囲の喧騒に紛れさせるように声を落とし、本題の核心を突いた。


「ところで旦那……あんたらが自由自在に異世界へ渡って、一体『何』をしてるのか、教えてくれないかねぇ?」


 その問いを聞いた瞬間、風狼の瞳から一切の余裕が消え、殺気が立ち込めた。


「……そのことを知っているのは、一部のハンターか……中央タワーの連中だけだ」


 低く唸るような声とともに、風狼がテーブルを激しく蹴り飛ばした!

 ドガァンッ!!という破砕音とともにカジノ内に悲鳴が上がり、客が一斉に逃げ惑う大騒ぎとなる。


「チッ……!!」


 風狼は混雑に乗じて一瞬で裏口へと姿を消した。直影が追撃しようとしたその時、混乱する人混みを縫うようにして、一人の謎の女性が風狼の後を追って飛び出していくのが目に入った。


(あの女……まさか……!?)


 直影もすぐさま二人を追ってカジノの外へ躍り出た。だが、先ほどの混乱の中で揉みくちゃにされた際、イアからもらった通信機とグローブの機械部分が衝撃で火花を散らし、完全に故障してしまっていた。


「くそっ、イアとの通信もグローブのサポート機能も駄目になったか……!」


 直影は路地の影へ走り込む。人気のない暗い路地裏では、すでに風狼と先ほどの女性が激しい打ち合いを繰り広げていた。女性の素早い身のこなしと冷徹な攻撃に対し、風狼も野性的な爪で迎え撃っている。


 直影は風狼と女性の間に割り込むと、至近距離から女性へと問いかけた。


「君……アンか?」


 女性は足を止め、影に隠れた素顔のまま一瞬沈黙し、静かに答えた。


「そうだ」


「そうか。……なら話が早い。君たちと、ゆっくり話がしたいんだ!」


 アンが関わりを拒むようにその場を去ろうとし、風狼が「邪魔だ!!」と爪を振り下ろしたその瞬間——直影は腰の帯からイアに作らせた『試作忍具』を取り出した。


「はっ……!!」


 投げつけられた特殊構造の仕込み縄と強粘着の煙幕が爆発的に広がり、風狼とアンの二人の動きを一瞬にして完璧に封じ込め、その場へ取り押さえた。


「なっ……動きが封じられただと!?」


 風狼が狼狽する中、直影は二人を見据えた。だが——その時、路地の入口から重厚な靴音が響き渡った。不動が手配した『ノーネーム』の治安維持部隊が、大騒ぎを聞きつけて目と鼻の先まで迫ってきていたのだ。


 それを見た風狼の瞳が不敵に光った。


「警察の犬どもが来たか……ここらでおさらばだ!!」


 風狼が咆哮すると、凄まじい暴風が路地裏に吹き荒れ、拘束具を吹き飛ばした。風狼は風を纏って建物の屋根へと跳躍し、逃亡する。同時に拘束を脱したアンも、気配を消して闇の奥へと身を躍らせた。


「くっ……仕方がねぇ!!」


 治安部隊に捕まるわけにはいかない直影は、風の軌跡を残して逃げた風狼を追いかけ、闇の中へとその身を消した。


 屋根から屋根へと風狼を追いかけながら、直影の脳裏には一つの強い疑問が渦巻いていた。


(風狼は力任せに脱出したが……あのアンという女性、俺が使ったあの『忍び道具』の構造と仕組みを、最初から完全に理解して避けているように見えたな……)


 見知らぬ異世界のハンターが、なぜ自分の故郷の忍術道具を知っているような動きをしたのか。

 深まる謎と胸のざわめきを抱えたまま、直影は夜の闇を疾走するのだった。



個人的な感想・どうしても台本…小説とは思わない思いがあります。

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