表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベアーズロック-神々の晩餐-  作者: ゆる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/115

#98 お面


再び私の前に旦那が現れた。


『そろそろ落ち着いたかい?』


「…うるさい。貴方に心配される筋合いはありません。」


『こっちだ。』


旦那は私の言葉を遮るように違う方向へと歩き出した。

渋々後を着いて歩いて行くと、裏口の扉へと辿り着いた。


『ここからなら抜け出せる。さあ、早くウルルに会うんだ。』

私は、何故か脚が竦んだ。


『どうしたんだい?』

「…結局、あなたの望みは何なの?」


私の質問に旦那は呆れた様子で溜息を吐いた。


『僕はね、獰猛な動物とも共存できる世界を望んでいる。それは僕の両親が熊に襲われて亡くなってしまったからさ。しかし、法律上熊を殺す訳にもいかない。どの熊が両親を殺したのかさえ分からない。では、言葉を話せたら?熊と通じ合えば、両親を殺した熊に会える。そう思ったのが始まりだ。』


彼の語る未来は、彼自身の願望で満ちていた。誰しもがそう思うだろうと、自分勝手な価値観を押し付けているとも知らずに。


「…あなた言ったわよね。ウルルに世界を征服させる為に私に熊を産み続けろって。それが共存とどう繋がるって言うのよ。私に熊なんて産めるわけ…」

この瞬間、私の脳裏にはウルルの姿が過ぎった。


『さっきも言ったが、ウルルは神威の子なんだ。ウルルみたいな力作は、もう二度と産まれないかもしれない。野生のような熊が産まれるのか、それとも特異体質の熊が産まれるのか。未来が分からないからこそ君は熊を、子を産み続けなければならない。これは偶然でなく必然であり運命なんだ。君はもう熊として…いや、熊の王として生きていくしかないんだよ。』


「…狂ってる…私は何故…こんな人を愛してしまったの…」


自身の口から零れたはじめての最低な言葉だった。

愛してしまったが故の惨劇とでも言うべきだろうか。

頬を伝う涙が口に入った時、何故か血の味がした。


私は、そのまま裏口の扉から逃げ出した。


草原を駆け抜け、それらは次第に土へと変わる。時々踏む砂利や石を踏みつける時の痛みに耐えながら、走り続けた。ダラダラと流れる涙と鼻汁を、私は何度も右腕で拭った。

気が付けば辺りは見覚えのある景色へと変わり始めた。

いつか家族で行ったスーパーや飲食店を横目に、過去の記憶が蘇る。胸の内が痛くなりながらも横切り、私はウルルの元へと急いだ。


しかし・・・

暗闇に包まれる街中、奥へ進み続けて行くと人々の悲鳴が聴こえた。


「…何これ。」


そこは黒ではなく橙。

暗闇に炎を灯すように。


悲鳴が交差する中、街は燃え、人は死に、血が飛び散る。

その中に立つ小さな背丈の後ろ姿。

まるで、赤子のような。


振り返るその顔容、無表情で笑みを浮かべているようであった。

頬に付着した血を拭えば、頬の上で赤黒い血が伸びる。


「……嘘…ウ…ルル。」


それは見覚えのある顔。

いや、お面であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ