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蒔野哲徒
「――ありがとう、由良くん。こうして、わざわざお見舞いに来てくれて」
「いえ、どうかお気になさらず。それよりも……その、お身体の方は……」
「うん、もう随分と良くなってるよ。心配をかけて申し訳ないね、由良くん」
「……そうですか、それは本当に良かったです」
それから、およそ40分後。
地元の総合病院、その一室にて。
そう、穏やかな微笑で話すのは丸眼鏡の似合う知的な男性。そして、その雰囲気は僕のよく知る女子生徒と何処か重なるものがあって……うん、回りくどい説明なんていらないよね。彼は、蒔野哲徒――僕の大切な教え子たる、蒔野有栖のお父さまで。
さて、これまた説明不要かとは思うけど――あのお話の後、僕らはこうして一緒に彼のお見舞いに来ているわけで。




