手紙
そう、ゆっくりと言葉を紡ぐ。暫し、沈黙が場を支配する。その間、僕はじっと俯いて……いや、分かっている。逃げちゃいけないって。……それでも、怖い。どんな瞳を……どんな言葉を向けられるか――
「……良かったら、これを読んでくれないかい。恭一くん」
「……へっ?」
卒然、すっと届いた柔らかな声。顔を上げると、視界には真っ白な封筒が一つ。……えっと、僕に、だよね? 一応ご了承を頂き、ゆっくりと封をあける。すると、現れたのは三つ折りになった一枚の用紙。これが何か……流石に、確認するまでもない。お二人のご子息――そして、僕の大切な友人たる友希哉の手紙。きっと、最期に僕に宛てた手紙だろう。
……うん、分かってる。ただ、この紙を開くだけ……ただ、それだけのこと。……なのに、開かない。先ほど以上にいっそう震える手が、開くのを……内容を目にするのを拒むように――
「…………蒔野さん」
ふと、ポツリと呟く。隣にいる彼女が、そっと僕の手を取ったから。大丈夫です――言葉にせずとも、その優しい手が……その暖かな微笑みが伝えてくれる。そんな彼女に、僕も微笑みそっと頷く。
……うん、ありがとう。もう、大丈夫。すっかり震えの止まった手で、ゆっくりと手紙を開く。すると、そこには――




