……だけど、だからこそ――
「それで、恭一くんは今教師を務めているんだよね? すごいね、僕にはとても出来そうにないから」
「あっ、いえそんな! その、僕はまだまだ未熟で、力及ばないことばかりで……それでも、こんな僕を支えてくれる人達がいて、どうにか続けられている次第です」
「まあ、それは仕方がないよ。まだ教師になって月日も浅いんだから。でも、支えてくれる人がいるのは、きっと君自身がその人のために何か行動したからだと僕は思う」
「ええ、私も。こうして話しているだけでも、恭一さんの誠実なお人柄が窺えるし……何より、貴方の大切な生徒さんを見れば一目瞭然……ねえ、蒔野さん?」
「はい。何の誇張もなく、今の私があるのは由良先生のお陰……彼が、私を救ってくれたんです」
「……お父さま、お母さま……蒔野さん」
そう、優しい声音で告げてくれるご両親と蒔野さん。僕を見る皆の目は、声音に違わぬ暖かな優しさに溢れていて。本当に申し訳なく……そして、それ以上にありがたく思う。
……だけど、だからこそ甘えていてはいけない。高鳴る鼓動を抑えるように、自身の左胸に手を当てつつ呼吸を整える。そして、喉から押し出すようどうにか声を振り絞り――
「……あの、お父さま、お母さま。友希哉くんが……お二人の大切なご子息がその尊い生涯に幕を閉じたのは、他でもない僕の責任です。本当に……本当に、申し訳ありません」




