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音咲成海
「――こんにちは、音咲くん。ここ、お邪魔しても良いかな?」
「…………え?」
それから、数日経て。
昼休み、中庭のベンチにぼんやりした様子で腰掛けていた男子生徒に声を掛ける。以前、ある女子生徒に掛けた時と同じように。すると、ややあって少し驚いた表情でこちらを向く美少年、音咲くん。そして――
「……なんで?」
そう、怪訝な目で尋ねる。……うん、まあそうなるよね。驚きつつも受け入れてくれた彼女の方がきっと珍しいタイプだろう。……さて、どうしよ――
「……はぁ、なんか分かんないけど……別に、好きにしたら?」
「……へっ? あ、うん……ありがと、音咲くん」
すると、僕から視線を離し呟くように言う音咲くん。そんな彼の言葉に驚きつつ、たどたどしく答えベンチへと腰掛ける僕。……うん、良かった。




