表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂った針は戻らない  作者: 暦海


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

138/242

……ごめんね、蒔野さん。

 そう、柔らかに耳をくすぐる声。既に名前は確認してたけど、確認そうせずともその声だけで分からないはずもなく――



「……うん、久しぶり……蒔野まきのさん。うん、お陰さまで。蒔野さんは?」

『ふふっ、何ともテンプレートな返答ですね。はい、私もお陰さまで』


 そう答えると、少し可笑しそうな声で返答こたえが届く。あの後、お母さまの申し出を断ったという蒔野さん。だけど、それでも夏休みくらいは一緒に過ごさないかとお誘いを受けたようで。一緒に暮らすという最初の申し出を断った申し訳なさ、そして久しぶりにお母さまと過ごしたいという気持ちもあり、夏休みだけならと承諾し、ここ一ヶ月ほど北海道にいるわけで。


 ともあれ、およそ一ヶ月ぶりの蒔野さんの声……うん、ほんとに久し――


『……ところで、由良ゆら先生。この一ヶ月、よほどお忙しかったようですね?』

「……ん? いや、別にそれほど……あっ」


 すると、ふと届いた彼女の言葉に疑問を抱きつつ答えるも自身で留める。と言うのも……何処か不満の窺える彼女の声音からも、何を言わんとしているか流石に分かったから。


 ……うん、僕も思ったよ? どうしようかなって。でも、然るべき理由もないのに生徒に連絡するのは流石に教師という立場として……いや、今更どの口が言ってるんだと自分でも思うけども、それはともあれ――



「……ごめんね、蒔野さん。それから、声を聞けて本当に嬉しい。……正直、寂しかったから」

『…………やっぱり、ずるいですよ、先生』


 そう伝えると、ややあって微かに届いた言葉。……ずるい、か。これでも、全部本音なんだけどね。



 その後も、彼女との楽しいやり取りは暫し続いて。お母さまとの他愛もないやり取りや、来て初めて分かった北海道の魅力など話題は尽きないようで。次は是非ご一緒に、と言ってくれたけど……うん、それは流石にちょっと返答こたえに困ったり。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ