123/242
……全く、敵わないなぁ。
『……ですが、当然ながら無理にとは言いません。これが、先生にとってどれほどのリスクなのかは幾ばくか承知しているつもりですし。なので、少しでも抵抗があれば遠慮なく――本当に、遠慮なく断っていただいても構いません』
すると、僕の返答を待たずしてそう付け加える蒔野さん。初めから、これとセットで言うつもりだったのだろう。こういった配慮も、何とも彼女らしいと沁み沁み思う。
……まあ。正直のところ懸念はある。だけど、それは僕自身というより――
『――あっ、ちなみに私のことはお気になさらなくて結構ですよ? 私としては、むしろ誰かに聞いていただきたいくらいですし』
『……全く、君って子は』
すると、僕の懸念に答えるように告げる蒔野さん。時折見せる、何とも悪戯っぽい笑顔で。……全く、敵わないなぁ。




