エピローグ 『残された者(陽氷)』
これにて完結です。
ありがとうございました。
エピローグ 『残された者(陽氷)』
氷巫女と陽炎が消滅してから十年の歳月が過ぎた。
剣神陽炎の息子である陽氷は冒険者として諸国を暫く放浪した後、医術を学び辺境の村で医者となった。
その類まれな医術は瞬く間に諸国に轟き、帝国『ブラックガーデン』のお抱えの医者となれと、
皇帝である詩花……自分と母を保護した経緯も含めて提案を受けたが、丁重に断った。
辺境の村で平穏に過ごすことが、自分にとって性に合っていると思ったからだ。
毎日の日課である往診を終えた陽氷は診療所で、一息ついていた。
その間、様々な想いを巡らしていた。母であるフォレスト族の生き残りであるサラは、
今でもブラックガーデンの将軍としてその武威を轟かせている。
元気にしているだろうか。たまに便りを寄越してくれるが、無事かどうか気が気ではない。
そんな時、何の前触れもなく二人の訪問者が現れた。目を見張る青い髪の気高くも凛々しい女性……詩花。
そして、氷巫女の魔力が途絶えたことによって元の姿を取り戻した鷲型の獣人族、
鷲の眼が、診療所の入り口で立っていた。驚きつつ、二人を交互に流し見る。
「鷲の眼さん……そして詩花様……」
暫し呆然として立ち尽くす。まさか、二人の大物が一堂に会するとは夢にも思わなかった。
「陽氷、陽炎に瓜二つだな。だが、陽炎よりも大人しいか」
詩花が、懐かしい者でも見たような反応を見せる。
唯一の帝国であるブラックガーデンの皇帝が、供も連れずに辺境の村にいるのは珍しい。
詩花は幼き頃より、父である陽炎をずっと見ていたという。
ある日突然、父が彼女の目の前から去った時の悲しみは想像に難くない。
「陽氷……お前が、我の恩人である陽炎の息子か……成程、道理で似ているわけだ」
鷲の眼は目を細めて陽氷を値踏みする仕草を見せるが、何処か嬉しそうだった。
「……そうか。今日はあの日から十年目。父と氷巫女が消滅した日」
陽氷はあの日の光景を思い浮かべて、ふと空を眺めた。
入道雲が広がる晴天だった。すると、一頭の炎竜が、大空を悠然と羽ばたいていた。
陽氷はまさか、と思って炎竜を目で追う。炎竜は此方を振り返りもせず、空の彼方へ飛び去って行った。
END
剣神陽炎の物語は完結。
何年も前に書いた小説が投稿できて嬉しいです。
皆さんありがとうございます。
また次回作でお会いしましょう。




