第64話 荒ぶる女性陣を説得せよ!
お待たせしました。
「‥‥へえ、ラーナ神がそんな事を。そう、そんなに自分の信者をいじめて欲しいのね。うふふ、ケルベロス。骨は残して、全員食べていいわよ?」
「仕方ないね。全員の首を聖国に送らなきゃ。自分達の犯した罪を死でもって償ってもらうよ」
「うぅ、間に合わなかった。こうなったら彼らで憂さ晴らし! 私の槍が血を求めているわ、さあかかってきなさい!!」
「ええと、皆さん落ち着いて下さい。殺したら問題になりますから。‥‥そうですね、一昼夜ほど頭を出して土に埋めるくらいで。あとは、ハチミツをぬりましょうか?」
「「「「ひ、ひぃぃぃ!!」」」」
やべえ、怒りの限界突破をしたマヤとユイ、ミズキにリーザがぶちギレてる。先ほどまでは、泣きながら俺の帰還を喜んでくれたんだがな。俺達が神帝様達からの通達を伝えた瞬間、これだ。どう説得しようかな?
「皇女殿下。恐れながら、かの者達は聖国でも上位に位置する者達です。無闇に殺さば戦争の原因になりかねませぬ。お怒りは重々承知ではありますが、自重を願います」
あの状態のマヤに諫言するなんて、さすがは8騎士最古参たるライオネル卿だ。斬られた左腕も無事治ったみたいだし、8騎士としてまだまだ活躍しそうな貫禄だよ。
「‥‥ライオネル卿、今回の1件は聖国側に全面的な非がある。それでもか!?」
「はい。それでもでございます。聖国側に落とし前をつけるのは、皇女殿下ではなく皇帝陛下が行いましょう。今回はユウキが帰還出来た事で良しとするべきかと。ミズキにユイ、リーザよ。3人もそれで良いな!」
「「「ぐぬぬっ!」」」
ライオネル卿のおかげで最悪の状態は回避出来た。とはいえ、まだ問題はあるんだよな。とりあえず、ここから離れよう。聖国の皆さんが安堵のあまり、腰抜かして倒れ始めたし。
「ライオネル卿、ありがとうございます。ここをお任せしてよろしいでしょうか? 聖国の件では無く、私的な別件で報告事項がありまして。下手をすると確実に修羅場発生しますので」
「‥‥分かった、構わぬぞ。聖国の連中はわしらで送り出しておく。これ以上、奴等を精神的に追い詰めると自害しかねんからな」
「別件の報告って、何なのユウキ?」
マヤさん、待って欲しいっす。この場で話すと聖国の方々に当たり散らされそうでまずいから。俺は4人と共にテレポートで転移する。そこは、兵士達の宿舎だった建物内にある部屋だ。ベッドでアイラが眠っていて、その世話と護衛をアヤメに任せていた。‥‥さて、どう話を切り出そうか
「ご主人様、アイラさんの体調は良好です。お腹の子供も大丈夫そうですよ。強大な魔力を持っていますから、将来は魔法使いとして大成しそうですね」
「「「「‥‥‥‥はい?」」」」
アヤメさん、あっさりフライングしないでええ!! 空気が凍りついてるよ、春なのに氷点下レベルの寒さが襲いかかってるぞ!
「じ、実はな。師匠‥‥じゃないアイラのお腹には赤ちゃんがいるんだ。俺とアイラの子供で、初体験の夜に出来ちゃったらしい」
「「「「‥‥‥‥‥」」」」
皆さああん、無言だけは止めてくれませんかねえ!? 無表情になったマヤさんとミズキさんが超怖いよ。ユイとリーザは、アイラの側に近づいていく。頼むから何もしないでくれよ!
「ユイ、リーザ。悪いのは俺だから、アイラは悪くないからな!」
「‥‥ユウキ兄ちゃん、復数回のデートと買い物、添い寝で勘弁したげる。母親になったアイラを傷つけたくないからね。アイラは私に似て家族との縁が薄い。私達がしっかり家族になって支えないとね」
アイラの髪を優しく撫でるユイ。いつの間にか、2人はすごく仲良くなってるな。同じ境遇に加え、趣味の料理を一緒にしたりしているのが良かったのかもしれない。ユイ、ありがとう。無言で頭を下げると笑って許してくれた。
「はあ、アイラなら仕方ありませんね。私が出会う前の話でもありますし。ユウキ、幸せにしないと駄目ですよ。あ、あと出来るなら私も幸せにしてください」
分かってます、リーザさん。俺は彼女にうなずき返す。こ、これでユイ、リーザの2人は認めた。残るはマヤとミズキの2人なんだが‥‥。
「‥‥なんで、なんで? なんで私は妊娠してないの!? ラミアの魅了を使って、あんなにしたのにいいい!! ユウキ、私も妊娠したい。しよ、すぐにしよ!」
「ミズキさん、落ち着いて下さい。昼間からやたらに盛るのは止めて下さいね。アイラさんが起きますよ」
服を脱ごうとしたミズキを威圧で抑えるアヤメ。さすがのミズキも手が止まったな。俺がしたのはアイラとミズキだけだ。なのにミズキは妊娠しなかった。悔しい気持ちは分からなくもないが、これは神の思し召しの領域の話だからな。
「ミズキ、落ち着いてくれ。俺も最近知って動揺してるから。それにミズキは騎士学院卒業まで後1年残っているんだろう。ここで妊娠したらまずいから」
「うぅ、分かったわよ。でも、ユウキ。ペナルティとして私もユイちゃんと同じ事を要望するわ。帝都に帰ったら、絶対に履行してもらうから」
何とかミズキを説得?に成功したか。あとはマヤさんですね。さっきから全く言葉を発しないのが怖いんだが、大丈夫かな。
「ユイ、貴女悔しくないの? 異世界で再会したユウキを盗られたあげく、妊娠までされたのよ。どうして、どうして私はアイラさんより先に会えなかったのよ!」
マヤからしたら、そう考えてしまうか。マヤと再会した夜にアイラが夜這いしたからな。盗られたと思っても間違いじゃない。どう話すべきか考えていると、ユイが口を開く。その言葉は驚く程に穏やかなものだった。
「マヤ、確かに私も思うところはあるよ。でも、誰も知る人がいない異世界で、ユウキ兄ちゃんに人の温もりを初めて与えてくれたのがアイラなんだ。だから、私は嫉妬はするけど憎んだりはしない。マヤ、分かるだろ? ユウキ兄ちゃんが人の為に力を尽くす事が生きる活力になっている事を。そのおかげで、ユウキ兄ちゃんは今、この場いるんだと思うよ」
「それは分かります! 前世でもユウキは私を助けてくれましたから。ぐぅぅ、分かりましたよ。認めます、認めればいいのでしょう。でも、ユウキ。ユイやミズキさんと同じ約束を私としなさい。あと、物欲しそうな目で見ているリーザも。命令だから貴方に拒否権なんて無いからね!」
‥‥あれ、丸く収まりはしたが何かまずい予感が。また金がどんどん無くなりそうな気がする。しかし、しかしだ。ここで拒否をするのは男がすたるというもの。第2弾、女性陣に対する大散財の幕開けだ!
ええと、報償金とか慰謝料とか出ないかな? 将来を考えると借金してまで散財する訳にはいかない。頼む、神様! 更なる血を見る前にお金を下さいまし!!
『君って、苦労人だねえ。まっ、大丈夫だよ。報償金とか慰謝料かなり貰えるから。とはいえ、あまりにかわいそうだからこれをやろう。1日1回金貨が1枚が貯まる貯金箱。まれに大金貨が出るからお楽しみにね』
『ほ、本当にもらえるとは。アルゼナ様、ありがとう!』
1年で金貨365枚確定はありがたい。とりあえず、まずは女性陣に美味しい食事でもおごるかな。貯金もしつつ、彼女達を喜ばせる。当面の目標はこれでいこう。
次回より、帝都。マルシアスと執事長との幕間。