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転生しても受難の日々  作者: 流星明
邪神と聖女との出会い
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幕間 5 マルシアスと執事長セルバンテス

お待たせしました。

ええい、ファルディス家の面汚しどもめが!! どうしてくれようか。ユウキ達が帰還するまでは動けぬのが痛いな。ケビンがこちらに付いているとはいえ、派閥の人数はナージャの方が多い。


‥‥まあ、わしが本気を出せば8割方は落とせるがな。それをするとファルディス家に人材無しと言われかねん。アイラを中心に新しいファルディス家を形成したという状況に持っていきたい。


この1件、あくまでも内密に事を運びたいが難しいだろうな。そもそもの原因を作り出したラングに対し、腹立たしさと悔しさで怒りがこみ上げてくるわい。


「ラングの愚か者めが!! 温情を頂いた皇帝陛下の顔に泥を塗りおって。セルバンテス、まだ奴の居場所は分からぬか?」


「ほっほっほ、ラング坊っちゃんも見事な落ちっぷりですな。まあ、逃げ足だけは早いお方です。黒鷹と言えど、なかなか尻尾がつかめぬようで。しかし、リア様は修道院で男相手に乱行、ロウ様は失敗続きの所をつけこまれて暗黒教団に肩入れ。あろうことか、ナージャ様とルパード様はハダール家に身売り同然の話をもちかける。マルシアス様、どこで教育を間違えましたかな?」


「言うな、セルバンテス! わしの目も節穴であった。まさか、ナージャがここまで愚かだったとはな。自分の地位に固執するあまり、家に餓狼を招き入れおったわ。どうやら、ナージャ側の家族全てを切り捨てねばなるまい」


「落ち着きなされ、マルシアス様。とはいえ、ここまでやらかす無能な方々ですからな。その気持ちはよく分かりますが」


セルバンテスは、ファルディス商会創業時からの仲間で腹心中の腹心。皆が言えない事をわしに言える数少ない人物だ。しかし、ここまで言われれば声を荒げたくもなる。わしも孫達の教育に携わるべきであったか。だが、それではナージャ達の成長を妨げる可能性もあった。


こうなると分かっていれば積極的に介入していたが、さしものわしも器量を見誤ったか。


「しかし、それは困りましたな。拙者の孫娘であるマリーが執心のルー様は除いて頂きたい。どうやらミル嬢の母親の友人たるクイナ殿を通じてユウキ側に情報を流すつもりらしいです。ミューズ様の母上で、アルゼナ神を祀る教会の神官長ですな。かくいう拙者もマリーから情報をもらっていまして。いやはや、ナージャ様の情報管理がザル過ぎて笑ってしまいますぞ」


ルーか‥‥確かに最近は目覚ましい成長ぶりだ。マイカ嬢とも仲良くして事業も順調、マリーやミルと共に仕事を頑張っている。まさか皇帝陛下や高貴な方々との接点をこうも早く構築するとは思わなんだわ。確かに切り捨てるには惜しいな。


それにしてもナージャめ、派手に動くせいで情報がだだ漏れではないか! 余程に今回の不祥事が身に堪えたのかもしれぬが焦りすぎだ。わしの命令でケビン達の黒鷹は動いていないからな。動いたのは金銭や地位に目が(くら)んだ力不足の者達だけ。そんな奴等の警戒網ならマリーは軽く撒けるだろう。


「ルーに関しては咎めぬと約束しよう。とはいえ、セルバンテスよ。マリーの才能は本物よな。あの泣き虫を1人前の男にしおった。もっとも、商人としての実力はまだまだ小僧ではあるが」


「ルー様の努力もありました。そこは旦那様も褒めて頂きたいものです。マリーには子供達の教育係を任せていましたが、大成しそうなのがアイラ様とルー様だけとは少し寂しいものがありますぞ。途中から2人だけに特別授業をしていましたからな。他の方は教えるに足りぬと判断したのでしょう」


マリーは教育係兼護衛として娘と孫の側に仕えていた。故に性格から何から全てを知っている。問題児だったリアやラングはともかくとして、次期当主のロウすら見限られるとは情けない。


「それよりも、これからはアイラお嬢様への教育と関係修復が重要です。魔法使いとしては超一流でありますが、商人としてはまだまだですからな。ルー様の婚約者たるマイカ様のような方が、ユウキ様の周りにはいらっしゃいません。アイラお嬢様自身が成長なさるしかありませぬゆえ」


「分かっておる。ジェンナに学ばせるとしよう。わしはアイラの後見役として仕事復帰する。セルバンテス、お主にも働いてもらうぞ」


「ほっほっほ、隠居に近い拙者らが再び表舞台に出ますか。まあ、それしか手がありませんのう。流れとしてはナージャ様とロウ様の継承権剥奪を手始めに、ルパード様との婿養子解消。アイラ様の中継ぎ当主への指名とルー様のティナート家への婿入りを同時に行う。と、いったところでしょうか」


セルバンテスの計画通り進めば良いが、そうはいかないだろう。わしの弟を倒した時も多くの血が流れた。まあ、横領していた金が盗賊ギルドの取引の為の金だったからな。ギルドの手前、弟と部下の者達は家族もろとも皆殺しにせざるをえなかったのだが。


「血を見ず、ある程度の犠牲でもって当主交代をしたいのだがな。おそらく無理であろう。また家族の血を流さざるを得んか」


「見栄っ張りなナージャ様が当主の地位を手放そうとは致しますまい。あの方は、昔から権力や名誉に対する欲望が強すぎまする。これからの世、間違いなく乱世の只中に入っていくでしょう。ナルム王国が滅亡し、各国の勢力の均衡(きんえい)が崩れましたからな。それに伴い、ナージャ様に甘い言葉で近づいて道を誤らせる者が増えましょう」


「‥‥乱世か。確かに各国の動きが激しくなっているな。北のリビス王国とキリム王国がビトリア聖国の聖戦発動に怯えて軍備増強。ダリア公国はその後方を(うかが)い、西のセルジフ共和国はバージニル帝国との戦いを仕掛けるつもりだ。ふむ、ナージャに誘いをかけて帝国に反する行いに手を染めかねんか」


対して、アイラは警戒心が強く人をよく観察している。人付き合いが苦手で交渉事もそこまで得意ではない。しかし、人脈という強力な武器を持っている。皇女殿下と貴族のエアリアル公爵家令嬢にビリナム男爵令嬢。ユイやミューズのような力を持つ戦士との交流があるからな。何よりユウキを得たのは大きい。


「マルシアス様は静かに待つ事です。ユウキ達が帰って来た時に動き、ナージャ様達を追い詰めて下さい。引き下がるなら良し。可能性としてはこちらの方が高すぎますが、抵抗するのなら思い切り叩きましょう。それでも言う事を聞かないのなら、‥‥永久に黙ってもらうまでですなあ」


「それは本当に最後の手段だ、セルバンテス。わしも家族を殺したくは無いのだから。さて、ユウキ達はいつ帰ってくるのか。全ては彼らの動向次第であるがな」






次回、ユイ視点の話。アイラとの会話。

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