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転生しても受難の日々  作者: 流星明
邪神と聖女との出会い
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ルー立志伝 14 とある密室会議

お待たせしました。ルーの外伝です。

ファルディス家から引っ越した研究所での日々は、とても充実したものであった。愛する女性達との語らいや逢瀬は楽しいし、商売も順調。ロウ兄さんや両親等と顔を会わせないからストレスも少ない。人生最良の日々なのは間違い無い。


とはいえ、ユウキには負けるけどね。ナルム王国騎士団副団長と戦って討ち取り、参戦諸侯から功を認められ、聖女様にまで会う始末。‥‥神様に愛されてるな。まあ、ティリュが『厄介事も付随(ふずい)するから手放しじゃ喜べないぞ』って言っていたから、大変だろうけどね。


でもさあ、僕もユウキ並みに厄介事に巻き込まれるんだよ。現在進行形だけど!!


「皆、聞いて欲しいわ。この度のナルム王国との戦争で、ファルディス家は確かに活躍したわ。でも、それはアイラやユウキ達の功績。翻って私達は? 通常業務をこなしていただけ。普通ならそれで良かったの。‥‥ところが!」


怒りに任せ、机を思い切り殴り付けた母上。拳から血が出てるけど痛くないのかな? 気持ちは分からなくは無いよ。僕もかなり怒ってるんだ。ラングの馬鹿兄が各国の商家に喧嘩売ったから。目立ちたがりの兄さんが大人しくしてる訳がないとは思ったけど、これは最悪だ。


「あるう事か、ラングがナルム王国騎士団の愚行たる無差別商隊襲撃。それに加担していた事が分かったの。しかも率先してだなんて。まったく、どこまで私達に恥をかかせれば気が済むのよ、あの子は!!?」


母上の激しい怒りを聞いて、研究所の会議室に集まる面々も憤りをあらわにする。父上もロウ兄さんもかなり怒ってるな。しかし、集まった面子を見ると両親やロウ兄さんの部下が多い。僕の陣営はマリー姉さん1人だけだ。マイカやティリュ、ミルは部外者扱いされて入れてもらえなかった。


しかし、こうなるとティリュの言っていた事が現実味を帯びてくる。今日は母上が急な休みを命じて、錬金術師達を研究所から追い出したからね。明らかに人に聞かれたくない話をする気だもんな。


「ナージャ落ち着きなさい。ラングに怒りをぶつけても仕方がないからね。しかし、困った事をしてくれた。皇帝陛下の温情を無下にした罪は極めて重い。このままだと、我々は連座してファルディス家追放の罰を受けかねない」


「お、お待ち下さい! 最早、奴はファルディス家は何の関係もありません。私達には何ら罪は‥‥」


「ロウ兄さん、連座制の内容をお忘れですか? あいにくとラング兄さんは我々の家族です。皇帝陛下の温情を無にし、帝国に対する反逆行為を行ったあの人は罪人の身に戻りました。なれば僕達も処断されるのは当然かと」


「ルー、何故そんなに余裕をかましている!? その連座は貴様にも適用されかねんのだぞ!!」


そんな事は分かっている、だから僕達は先に動いたよ。増毛剤顧客と香水化粧品顧客の方々に協力要請をしたからね。いざとなったら、マイカの実家のティナート家に転がり込む手筈となっているし。


「さすがに僕達の事業を潰そうとは、皇帝陛下も致しませんよ。とある悩みを抱える男性陣や香水や化粧品を愛用する女性達を敵に回しかねませんし。それに『ルー達は今回の罪に問わぬ。罪あるとすれば、余の要請に応じて多忙だったマルシアスやジェンナ、アイラ以外の家族であろう』とおっしゃられましたので」


「ルー、まさか私達を見捨てて1人だけ助かるつもりか!?」


「僕を先に捨てていたのは貴方達でしょうが!? マイカ達の害にしかならない貴方方を捨てる、それ以外の選択肢しかありませんな。では、僕はこれで失礼します」


父上の言葉を切り捨て、僕は席を立つと部屋を去るべくドアへと向かう。皆、あっけに取られているけど当然だよね? 今まで散々お荷物だの、穀潰しだのと言われてきたんだ。そんな家族は見放しても良いでしょ。今や僕の家族は、マリー姉さんにミル、マイカとティリュなんだから。


「ま、待てい、ルーよ! 貴様は両親と兄を見捨てる気かああ!? 助けろ、私達を皇帝陛下に取りなすのだ!!」


「どの口で言うんだ、ロウ兄さん。困った時だけ僕を頼るつもり? 婚約者に逃げられ、新たな婚約者から尻にしかれている男がよく言えたもんだね」


「言うなああ!! お前の、お前のせいだ‥‥」


「お黙りなさい、ロウ! あれは貴方の失態でしょう、見苦しいわよ。皆も落ち着きなさい」


母上が怒れるロウ兄さんを制した。もう少しで見限る大義名分が手に入れそうになったのにな。短気なロウ兄さんなら、何かやらかしてくれると思ったが。くそっ、なかなか言質を与えてくれないか。


「‥‥ルー、座りなさい。私達に思う所は多々あるでしょう。ですが、私はファルディス家当主の地位を失う訳にはいきません。まして、妹たるアイラに奪われるなど! 貴方には私達に協力してもらうわ。入ってきなさい!」


母上の命令で入ってきたのはケビン配下の黒鷹達だ。‥‥えっ? なんでティリュさんが捕まってんだ。彼女ってかなり強いはず。本人が言うには確か‥‥。


『ふむ、主殿の宿敵ユウキの女たる皇女殿下にアイラとユイ、ミズキにリーザか。人間にしては強大な力を持つが、まだまだ我の敵では無い。‥‥ただ、アヤメとレイは別だからな? あの者達はこの我でも少し手に余る。特にアヤメは両親も強さがヤバすぎる。くれぐれも敵に回してくれるなよ』


と話してくれた。ユウキの女性陣が化け物揃いなのは問題過ぎるけどさ! なに、あいつは世界征服でも狙ってるの!? おっと、そんな事よりティリュを何とかしないと。


「母上、何をしているのです!? 彼女は関係ありませんが」


「貴方を従わせる為には仕方がないわ。ルー、彼女の命が惜しいのなら私達に手を貸しなさい。当主の座を守る為ならば、敵であった彼とも手を組みますから」


母上の言葉を受け、奥の部屋から出てきたのはとんでもない人物だった。なんでこんな所に彼がいるんだ!? この建物は機密の塊なのに。幸い重要な物は全て地下金庫に入ってるけどな。鍵はマイカが持っているから安心していい。ティナート家に行くと言っていたからね。さすがの彼も手は出せまい。


「いやあ、ナージャ殿。その決断に感謝致しますよ。これでハダール家とファルディス家にティナート家の連合がなります。そうそう、ルー殿。貴方には我が娘を嫁がせますので。これで我等は安泰ですなあ、はっはっは!」


そうか、あんたが裏で糸を引いていたんだな。ハダール家当主サジーム=ハダール。父上が苦虫を噛み潰してるような顔をしているのを見れば、不本意だったのだろうな。長年敵対していた奴と手を組むなんて誰だって嫌なものだ。


ちなみに僕もある人物と手を組んだ。いや、正しくはその人物の関係者とか。さっそく大きな情報が手に入ったから知らせたいが、まずは目の前の連中をなんとかしよう。


「サジーム様、失礼ながら僕はこれ以上女性を欲しくはありません。また、マイカの実家たるティナート家も良い顔をしますまい。折角の連合に修復不可能な溝を作るつもりですか?」


「若いながらもなかなか言いおるわ。君の懸念(けねん)は最もではある。だが安心するが良い。既にティナート家当主とは話をつけた。正妻はマイカ嬢に、第2夫人に我が娘を迎える事に決定している。ルー殿、私の後ろ楯たる宰相閣下も今回の件は承知なさった。正直、ユウキ=ファルディスの力が強大になりすぎている。ファルディス家のみならず、貴族社会でも影響力が出てくるのは必至でしょう。なれば、片方だけでも閣下の味方にせねば」


ああ、その可能性はあるね。貴族社会とファルディス家を得ると発言権有りまくりだろう。しかも、皇女殿下やエアリアル公爵家の後ろ楯があるし。


「ルー、この騒動が決着するまでティリュさんの身柄は私が預かります。私達の為に力を尽くしなさい。良いわね?」


「分かりました。ユウキ相手の戦い、僕も参加しましょう。マイカにも伝えますので、これで失礼します」


僕の言葉にホッとする会議室の面々。あいにくだけど、泥船に乗る趣味は僕には無い。味方のふりして敵方に情報を渡しておこう。しかし、僕がケビン達の真似事をするなんて思ってもみなかったな。サジームや両親にバレぬよう慎重に動かねば。


「主殿、我の事は気にするな。貴方の思うまま行動すれば良い」


小声で話しかけてきたティリュを見れば、ウインクして大丈夫だとアピールしている。‥‥まあ、本当に大丈夫なんだよ。いざとなったら、彼女は透明化スキルですぐに脱出出来るし。吸血鬼特有のスキルらしいけど欲しいなあ。男なら誰だって、1回は透明人間に憧れると思う。色々悪さ出来るからね。


マリー姉さんは‥‥笑顔でうなずいてるな。どうやら、この場での僕の行動と振る舞いは合格だったらしい。でも、僕は知っている。あの笑顔はキレる寸前の状態だと。両親やロウ兄さんが酷い死に様にならないよう、しっかりと手綱を引いておこう。








次回、ユウキ捕らわれの身に。

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