第23話 蛇神の目覚め
お待たせしました。
「ぐおおおっ!」
「オードル様ああ、お助けをおお!!」
「熱い、熱い、熱いいいい!!」
カースドラゴンより放たれたブレスによって、暗黒教団の面々は火だるまと化し、骨も残さず塵と消えていく。すげえな、まるで〇ルゲンを襲撃したア〇ド〇ーイン並みの圧倒ぶりだわ。
「すごいねえ。BGMは〇ラゴン〇ーンの歌かな、先生。あれ、流れると盛り上がるんだよね」
「いや、ユイさん。たまにマンモスとか巨人やら山賊なんかの敵とやりあうけどな。基本的にドラゴンは街や主人公目掛けて襲いかかってくるから、あのゲーム」
そう、突然やってきて次々と有用な街の人々を軽~~く殺していくんだよな。ゲームに興味を持ったユイに貸したら、嬉々として山賊やら悪党連中を殺しまくる動画を送ってきた。
ユイさん。暗殺レベルの不意討ちで、砦全員の連中を殺していくのはあんまりじゃないですかねえ。やってるゲームがスカ〇リムじゃなくて、〇サシ〇クリ〇ドになってるぞ。
「ふう、さすがにカースドラゴン召喚はきつかったですね。魔力が空になってしまいました。先生。無事で何よりですが、またまたお楽しみだったようで‥‥」
魔力が切れたせいか、カースドラゴンの姿は消え去ってマヤがやってくる。うっ、やっぱり怒ってる。当然と言えば、当然だよな。皆には心配かけたのに、あんな事をしていたんだから。どうやって償おうかな?
「私も聞きたい。どういう経緯でそうなったのかをな。ユウキ、詳しく説明してもらおうか」
師匠もまた不機嫌そうに尋ねてくる。これは真実をありのままに語るしかないよなあ。俺、嘘つかない。これは大事ですよ! 下手したら一生監禁されかねないから。
「分かりましたよ。師匠、マヤとユイも聞いてくれ。こういう事だったんだ」
俺はミューズさんが暗黒教団に立ち向かった事。捕まって蛇神にされそうになっていた事やその謀に俺が巻き込まれて利用された事を話す。最後にアルゼナからの託せんで、ミューズさんが4番目の妻に決定した事を告げる。
「アルゼナ様、何してくれてるんですかああ! うぅ、先生はハーレム願望でもあるんです?」
「‥‥なんだろう。私はミューズを嫌いになれないな。私と似た境遇だけに受け入れられそうだ。もっとも、1番は譲らないがな」
「また増えたか。まっ、先生が私を愛してくれるならいいけどね。ミューズさんをこの繭から出さない事には始まらないでしょ? どうやって出そうか」
三者三様の答えが出てきたが、先にミューズさんを助けないとな。さて、どうやって中にいる彼女を助けよう。方法を考えながら繭に近づく俺の前に、そいつは現れた。
「くっくっく。どうやらまだわしに運が向いて‥‥のわああ! いきなり殺す気か、貴様」
「まだ生きていたのか、暗黒司祭。さっさと殺さないと余計な事をしでかしそうだからな」
「ふん、まだ死ぬ訳にはいかぬわ。我が野望は未だに達成しておらんからのう。残念であったな、ユウキよ!」
ちっ、不意打ち気味に放った魔法を相殺しやがったか。だが、どうやってあの地獄から脱出したんだ? 確か暗黒教徒の連中がいた場所にいたはずだが、まさか‥‥。
「察しが良いな。わしとて、テレポートは使えるのじゃ。まあ、貴殿やアイラ嬢のようにはいかんがのう。短い距離なら何とか跳べるわい。皇女殿下も最早、カースドラゴンは呼び出せまい。ならば、わしに勝機はある。さあ、ラミアンナーガよ。目覚めるがよい、わしに仇なす敵を討つのじゃ!」
暗黒司祭の魔力によって繭が裂け、羊水が辺りにこぼれだす。生臭い香りが辺りに広がり、繭の中からミューズさんが現れる。濡れた長い赤髪、顔に上半身は変わっていない。だが、下半身には足が無く蛇の尾へと変化していた。赤い鱗は鈍く輝き、うねる動きをしながら石床へ降りたつ。右手には2メートル近い槍を握っており、明らかに神器だと分かる。かなり強い力を感じるからな。
「もしかして、今は戦うしかない? かなり強そうだね、8騎士に匹敵する力を感じるよ」
「いざとなれば、テレポートで撤退も視野に入れねばならんか? ユウキ、お前の判断に任せるぞ」
ユイと師匠がそう言ってくれるのはありがたかった。とはいえ、俺は全く心配していない。マヤも動じない所を見れば、この後起こる事が分かっているのだろう。残念だったなくそジジイ、世の中そんなに思惑通りにはいかないんだよ。
「暗黒司祭よ、降伏するなら今の内だぞ。このままだと無駄に死ぬ事になる」
「はん、小賢しいわ! ラミアンナーガは下位神だが、並みの人間に相手が出来る相手ではない。組織と人員を失ったのは痛いが、これで‥‥ぐはああっ!!」
暗黒司祭、ミューズさんに槍でなぎ払われるの巻。見事に飛んで壁に激突、そのまま石床に叩きつけられた。うん、今度こそ死んだか? ゴキブリのごとき最後を遂げた彼は置いとくとして、ミューズさんだな。目を見れば、蛇眼になっているが光は清らかなままだ。心が闇に囚われなくて良かったぜ。
「ご主人様、私を妻にして下さいませんか? 邪神を殴り飛ばしたアルゼナ様が、貴方なら受け入れてくれるとおっしゃられました。もう、他の殿方など考えられません。どんな事でも致しますから、お側に置いてください」
「「「えっ!!!」」」
突然の逆プロポーズに驚く女性3人。いや、俺も驚いているか。ここまで気持ちをストレートに言われたの、前世の時も無かったからな。言葉を告げたミューズさんの顔は真っ赤になってるし、体も震えている。勇気をもって告白してくれたのなら、俺も答えないといけないな。
「もちろんだ、ミューズさん。俺も君の事が大好きだ。是非とも妻になって欲しい」
「う、嬉しい。私が今まで生きた中で1番の幸せです。ご主人様、一生付いていきます」
「ああ、俺も嬉しいよ。美人で気立ての良いミューズさんが、嫁に‥‥ひっ!!」
空気も凍るような強烈な殺気が突き刺さったので、後ろを振り返ると師匠とマヤが鬼の形相でにらみつけていた。ユイはあきれた様子で俺を見ている。‥‥突然のプロポーズに舞い上がったのは、とてもまずかったのかもしれない。だが後悔はせぬ。例え、この後地獄を見ようともミューズさんを受け入れない選択肢はないのだから!
‥‥あっ、お仕置きは軽いのでお願いします。命が無くならない方向で、何卒お願い致しまする~~!!
次回、ルー外伝。ミル登場と占術師カレンとの出会い。