第22話 暗黒教団殲滅
本日、3回目投稿です。筆がついつい進んでしまいました。
「皆の者、我々は遂に神の力を獲る事が出来る。これもひとえにブレスク伯爵が娘を捧げたおかげだ。感謝するぞ、ブレスク伯爵よ」
「いえ、司祭様。敬虔なる暗黒教徒としては当然の事です。ミューズは、この繭の中で神となる。邪神様もさぞお喜びになるでしょう」
俺とユイは、信者のフードとローブを奪って地下聖堂の集会に参加している。しかし、狂信者って怖いな。自分の娘を道具に使って笑ってられるんだから。あの繭の中にミューズさんが‥‥。くそ! 早く彼女を助けないと。
「落ち着いて、先生。さっき、師匠さんから連絡があった。証拠となる書類や物品は押収、使用人達も捕縛して宮廷に送ったそうだよ。それで、伝言。『今から絶望という名の地獄を見せるから巻き込まれないでね』だって」
「なあ、ユイ。気のせいかな。さっきから俺震えが止まらないんだけど」
「‥‥言っとくけどマヤと師匠さん、私以上にキレてるからね? 私が抑え役に全力振ってなかったら、どんな事になってたか」
想像するだに恐ろしいな。2人とも帝都を軽く焦土に変えれる実力者だし。ん、彼らに動きがあるか? 司祭と呼ばれた黒頭巾が全員の前に出てきた。
「蛇神ラミアナーガの誕生と同時に、孤児院の子供達を市中に放つ。彼らはグレムリンやインプの力にしか目覚めなかったが、戦力にはなろう。我々も共に戦い、帝都を邪神様に献上するのだああ!!」
「「「「おおおおおっ!!」」」」
司祭の呼び声に、大声で応じる暗黒教徒達。だが次の瞬間、雷鳴に似た轟音が響いたかと思えば、地下聖堂全体が揺らぐ。天井がひび割れ、岩が落下。次々と暗黒教徒が押し潰されていく。瓦礫の粉塵によって、視界がふさがれてしまい状況が分からない。
「いったい、何が。さっきまで太陽の光が届いていたのに、急に暗くなったな」
俺はシールドを展開してユイを守りながら、辺りをうかがう。その時、誰かの悲鳴が聖堂内に響いた。
「ど、ドラゴンだああ!ドラゴンが出たぞおお!!」
粉塵が落ち着き、視界が晴れた時にそれは目の前にいた。黒い鱗をした竜が、暗黒教徒達を凝視している。彼らは何も言えず、何の動きもとれずに見ているだけ。神眼で調べれば、カースドラゴンって名前が出てきましたね。
マヤさあああん、天災レベルの竜を呼び出さないでくれませんかねええ!! 国が滅んだとか、その強さに邪神すら逃げ出したとかヤバすぎる情報がかなり上がってくるんですけどおお!!!
「ば、馬鹿な。あれはカースドラゴン、災厄の象徴と恐れられる竜ではないか! 人間の領域には滅多に入ってこないはずの存在なのに、な、何故?」
「それは私が召喚したからですわ。ご機嫌よう、暗黒司祭殿。そして、ブレスク伯爵。この裏切り者め。最早、罪状は明白。潔く自害でもなさったらいかがかしら? もし応じぬとあらば、このマヤ=ヴァングリーブが粛清して差し上げましょう」
マヤも〇れん坊〇軍ばりの啖呵の切り方だな。さて、あいつらどうする。あの時代劇の展開的には、おそらく‥‥。
「ええい、最早これまで! 子供達を放て、皆の者応戦じゃ。カースドラゴンという大物なれば、召喚持続時間は短い。耐えきれば我等の勝ちぞ!!」
「抵抗するか。ならば死ぬがいい、愚か者」
あのくそジジイ、なかなか冷静だな。しかも、見事に悪党の様式美を貫きおったわ。とはいえ、マヤは分かってやってるだろうし、何か策はあるだろう。
「おっ、王道的悪あがきだな。さてと先生、私も行くね。マヤに頼まれたんだ。指揮官連中を殺し回れって。先生はミューズさんを助けるんでしょ?」
「ああっ、惚れた女を守れぬようじゃ男じゃないからな。もっとも、ユイにマヤ、師匠が拐われても命がけで助けに行くぞ。例え相手が、どんなに強大な敵であろうともな」
「っつ! ずるいよ、先生。ますます惚れちゃうじゃないか。お互いに頑張ろうね」
顔を赤くしたユイは刀を抜くや、対抗すべく動いた暗黒教徒達の中へと消えていく。俺は地下聖堂の壁際に沿って進み、繭の側へと近づく。その時、地下聖堂全体が揺らぐ程の熱量が辺りに充満する。見れば、カースドラゴンがブレスを放とうとしていた。
慌てて止めに入ろうとしたグレムリンやインプが竜に迫るが、爪で軽く蹴散らされる。うわあ、細切れの肉片に変わってグロいぞ。暗黒司祭は青ざめているな。魔物達がやられ、自分達で身を守るしか無くなった。ただ、あの竜は人数を集めても勝てそうに無いが。
「いかん、あれを喰らえば消し炭になる。くそ、防衛魔法を張れ。繭を守るのじゃ」
「司祭様、だめです。魔力を束ねるはずの魔法使いの指揮官が全員始末され、防衛魔法が使えません。このままでは‥‥我々は滅ぼされます!!」
「な、なんじゃとおお!!」
絶望にあえぐ連中を尻目に俺は繭の側へと急ぎ向かう。ブレスからミューズさんを守らないといけないからな。だが、近づく俺に剣を振り下ろす人物が現れた。ブレスク伯爵、ミューズさんのくそ親父だ。
「娘は渡さぬ。あれは我等の希望だ。暗黒教団復活の象徴足りえる存在なのだ。ゆ‥‥があああっ!」
「誇大妄想にミューズさんを巻き込んでじゃねえ! それにな、敵を目の前にグダグダ言ってるんじゃない。隙だらけなんだよ、あんた!!」
「血が、血が止まらぬうう。動けぬ、誰か、誰か回復魔法を!」
俺はウインドブレードを利き手と伯爵の息子に放った。結果、二重に血の噴水が吹き出て、彼は動けなくなる。うん、ボルハを仕留めた時以来、得意になってしまったな急所攻撃。さて、邪魔者は消えた。後は繭か。
「ミューズさん、聞こえますか。今から助けますよ。とりあえず、テレポートを使います」
俺は魔力を行使し、テレポートの魔法を使う。転移先はブレスの届かない死角となる地下聖堂の入り口だ。しかし、俺はある事に気づく、
「魔力が足りないだと!? 俺とて師匠と同じ位の力を得たはずなのに」
「それは経験の差ね。私とユウキでは魔法使用年数が違うわ。だから、安心して。いずれは私に匹敵する魔法使いになれるから。さあ、時間がないわ。すぐに繭を移動させるわよ。まったく、なんで恋敵を助けないといけないのかしら。ユウキ、1つ貸しね」
さっそうと師匠が現れ、嫌々ながらも手伝ってくれる。よし、これで繭を動かせる。ここに来てくれた全員に感謝しないといけないな。テレポートを使用できる準備は整った。魔法を行使しようとした瞬間、ユイが飛び込んでくる。ユイさん、俺に抱きついてきたから、師匠が凄い目で見てるんだが。
「私も乗せてって。あいつらはおそらく助からないよ」
テレポートが終わってすぐ、地下聖堂に熱線が降り注ぐ。人や悪魔など関係なく焼き尽くす冥府の炎だ。ユイの言うとおり、助かる者などいないだろうな。
次回、蛇神の目覚め。




