第21話 反撃開始
本日2回目の更新です。
しまった、どうやら寝てしまったらしい。ベッドで目を覚ました俺は辺りを見渡す。隣で寝ていたミューズさんがいない。その事に気づいた俺はベッドから降り、浴室やトイレを見る。
しかし、どの部屋にもいなかった。どうやら、寝ている間にどこかへ連れていかれたようだ。うん? 誰か来るな。もしかして暗黒教団の連中か?
「あらあら、ようやく色男のお目覚めだね。あんたの探してる女は既に邪神の繭の中さ。性欲が目覚めないと蛇神ラミアナーガには転生出来ないからね。まったくこんなにうまくいくとは思わなかったよ」
牢屋のドアが開き、入ってきたのは鬼ババアのような邪悪な老女と2人の美しい女性だった。うん? 女性の方はミューズさんと似ているな。神眼で調べたらブレスク伯爵の娘か。正妻の娘で、ミューズさんとは異母姉妹にあたるらしい。
この神眼、見れる時と見えない時がある。どうやら、邪神の加護が高いと見えない傾向があるようだ。だって、鬼ババアのステータスが見えないもの。
「で、何の用だ? 俺はミューズさんを邪神の繭とやらから救わねばならん。あんたらの相手をしてる暇はないな。怪我をしたくなければ、そこを退いてもらおうか」
こいつらの謀に、俺はまんまとのせられた訳だ。しかし、ミューズさんの主が俺になった事には、まるで気づいてないよな。そういう意味だと俺はこいつらを出し抜けたのか?
「ふん。あんな妾の娘を助けるなんて物好きよね。どうせ大きな胸につられただけでしょうけど。ブレスク伯爵家長女たる私の方が、あの娘より良いという事を教えてあげるわ。ねえ、私とも楽しみましょうよ」
ドレスを脱ぎ、裸を見せる姉に妹の方も慌てて脱ぎ出す。‥‥あれ? 全く欲情しねえわ。これはあれだな、2人に無関心だからだろう。
「おばあ様、お姉様。早くさせてよ。ミューズばっかりずるいわ。私も気持ち良くなりたい」
「我慢の出来ない娘だね。という訳で、ユウキとやら。私の可愛い孫を抱いとくれ。天命人にして、その若さで時空魔法の達人だ。さぞ、良い子供が出来るだろう。邪神様も優秀な手駒が増えてお喜びだよ」
「お断りします。あいにくミューズさんだけで満足ですので。種馬扱いは勘弁して下さい。俺はサ〇デー〇イレ〇スでも〇ィー〇イン〇クトでもないんだよ!」
お前、ミューズさんの祖母だったのかい! 考え方が優性思想と狂信者の融合ミックスで怖いわ!! あと俺は女なら誰でも良いわけじゃないからな。ミューズさんなら抱けたけど、この2人は無理。心がまったく美しくないし、好きなタイプじゃないわ。
前世の婚約者の事を思い出して、若干トラウマ気味だよ。あっ、ヤバい。怒りのオーラMAXな方がご降臨された。‥‥大丈夫か、俺!?
「大丈夫、私達があんな娘の事を忘れさせて‥‥ぐっ!」
突然、姉が吐血してそのまま倒れてしまう。背中にはナイフが刺さっており、血がみるみる石床に広がっていった。
「ね、姉様、しっかりして! 誰がこんな‥‥がっ!!」
いつの間にか背後を取ったユイが妹の喉をナイフでかっ斬る。喉から盛大に血が吹き出した妹は石床に勢い良く倒れこんだ。
「ヤッホー、先生。元気してた? 感動の再会に水を差す、邪魔な女がいたから始末したよ。人の男を裸で誘うなんて最低。そ・れ・に、これ以上先生を奪わせる訳にはいかないからね。‥‥私の心の平穏の為には」
怒れる彼女は、登場と同時に女2人を軽くあの世に逝かせた。ユイさん、殺気が強烈過ぎて怖すぎであります! 悲鳴を上げさせないのを見るとかなり手慣れてるな。さて、鬼ババアをどう料理しようか。そのあと、俺がユイに料理されそうだが今は考えない!
「よ、よくも私の孫達を。貴様、許さ‥‥ガフッ」
見事なローキックをかまし、鬼ババアを倒すユイさん。‥‥悪党だと老若男女問わず、容赦しないからな。長幼の序? 悪い奴は年齢だの地位だの関係なく、ぶっ倒すのがユイのモットーなのだ。
「人の恋人奪っておいて、盗人猛々しいにも程があるね。さて、色々と吐いてもらうよ。既に屋敷はマヤ達が制圧してるし、ブレスク伯爵家討伐の勅命も出されてるからさっさと喋ってね」
いくらなんでも対応が早すぎなんですけど! 暗黒教団の皆さん、敵に回したらヤバい女性を敵に回したのは失策だったな。俺なんかを誘拐するから悪いんだぞ。
「ば、馬鹿な。私達は帝国の中枢に何人か味方がいる。いかに皇帝といえど‥‥」
「いやあ、マヤと師匠さんを怒らせたのは不味かったね。ファルディス家の諜報網と皇帝直属の諜報部隊が動いて、全員捕縛の上で拷問。あんたらの協力者が誰かとか、今回の計画の内容を全員吐いたよ。領地も8騎士が派遣されて、制圧する予定。折角の地位も名誉も崩れ去って、残念だねえ」
手際が良すぎて怖すぎです、皆様。これは、暗黒教団側は逆転の目が無くなったかな?
「そ、そんな我らの野望が、ブレスク伯爵家の未来がああ! う、うーーん」
‥‥あれ、ババアあっさりと気絶したぞ。存外精神面は強くなかったんだな。うむ。ひとまず終わった事だし、まずはユイに謝らねば。
「さて、先生。私達が必死に探してる中で、女性と逢瀬を重ねるなんて良いご身分ね。今回の落とし前、どうしてくれようかしら?」
ユイさん、結構怒っている。無理もないか、逆の立場だったら俺でもキレるからな。だとすれば、俺がすべき事は‥‥。
「こ、この度は誠に申し訳ございませんでしたああ!」
元教え子にして恋人に、土下座を敢行する俺。えっ、あまりにも弱くないかって? 喧嘩して、とても勝てる相手じゃないからな。ここは、命大事にを主目的とする。年長者の誇りなんて、とうに捨ててるよ。
「はあ、そう来られると怒るに怒れないな。事情を調べてみたら、先生あまり悪くないし。まっ、このくらいはしてもいいでしょ」
そう言って、ユイは俺の顔をあげるや唇を奪う。って、ちょって待て! 舌が口の中に入って来た。思いっきりディープキスじゃないか!! まあ、ユイにも心配かけたし仕方ないかな。
「ぷはっ。うふふっ、とうとうキスしちゃった。それはそうと先生、少しお説教はしますからね。マヤや師匠さん、私がどれだけ心配したか」
このあと、ユイからの説教が5分程行われた。本当はもっと言いたい事があったんだろう。ミューズさんを助けたい俺の心を理解したのか、短時間で切り上げてくれた。心配をかけた3人には、後日色々としてあげないとな。
次回、3人娘による惨劇開幕。




