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転生しても受難の日々  作者: 流星明
教え子2人との再会
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ルー立志伝 3 ラングの後始末とマリーの正体

お待たせしました。ルー外伝、マリー視点です。

‥‥今朝、ラングが無様な失禁を見せて過去の犯罪を話してくれました。しかも8歳の少女奴隷を買ってるなんて最低ですね。とはいえ、レアに続くファルディス家の不祥事。そのままにしておく訳にはいきません。ルーは早速、事を収めるべく自分から動き出しました。


ただ、彼の話を聞いてみて考えが甘い部分もあったのは事実。馬車の中で説教と今後の行動指針を説明すると受け入れてくれました。忠告を素直に聞いてくれるのは、ルーの美点の1つです。はあ、とってもかわいくて食べちゃいたいわ。


「正直申し上げますと、ラングは素行も悪くトラブルの多い男でした。ここまでやらかした以上、冒険者資格剥奪しかありませんな。ファルディス家の威光を楯にやりたい放題で、我々も(さじ)を投げる寸前でしたよ」


「‥‥何やってんだよ、ラング兄さん」


やっぱりそうなりましたか。あの色欲馬鹿は後先考えずに行動するから腹立たしいですね。私とルーは帝都の冒険者ギルドに来ているのですが、結果は最悪と言っていいです。冒険者資格の剥奪は大きな犯罪を犯すか、本人が亡くなるかしないとされません。つまり、冒険者ギルドがラングを重犯罪者として認めた訳です。


こうなると冒険者としては生きていけません。ファルディス家も追放されると考えれば、貴族や商家への仕官も無理でしょう。ラングが生きるには傭兵となるか、盗賊等に堕ちるか、大陸を出るかの3択しかないのです。まあ、あの甘ったれは傭兵稼業や大陸脱出は考えないでしょうけど。


「やはり、そうなりますか。愚かな兄がこの度は申し訳ありません。ファルディス家を代表し、心からの謝罪を致します。あと、こちらは迷惑料として金貨1000枚を用意しました。どうぞ、お納め下さい」


「ありがとうございます。これからもファルディス家とは仲良くしていきたいものだ。害悪たる2人が除かれ、ユウキ殿とアイラ殿という2人が加わったのです。ルー殿も2人のようにしっかりと仕事を為されて下さい」


「肝に命じておきましょう。ところで、冒険者ギルドではポーション等の薬が不足しがちと聞いております。私が懇意(こんい)にしている錬金術師が10名程おりまして。ギルドよりも低価格で提供出来ますが、いかがでしょうか?」


ルーじゃなくて私のコネですけどね。‥‥私のアホ母は、父と兄2人に私の家族4人を捨てて若い男と駆け落ちしました。しかし、錬金術師としてはかなりの腕前でしたから多くの弟子がいます。私もその1人で、何故か筆頭弟子とか言われて皆から崇められてる。


仕方がないので、仕事休み等に指導しつつ面倒を見てきましだが、ここで役に立つとは思いませんでした。彼らが作る薬品は、品質量共に錬金術師ギルドよりも高いはずです。ルーの為に頑張らなきゃ。って、ギルドマスター。なんで私の方を見てるんです?


「ルー様。それはもしかしてマリーの母親の弟子達ですかな? あいつも馬鹿な事をしたものだ。ファルディス家の次期執事の妻の座を捨てて、若い冒険者と駆け落ちしたんだから。しかし、弟子達は不思議とまとまってる。なぜならマリーが結婚相手を斡旋したり、錬金術素材の提供や技術指導をしてるからだ。彼女はファルディス家の黒鷹所属の薬剤担当で取り纏め役でもあります。‥‥どうやらその様子では知らなかったようですなあ」


「えっ、マリー姉さんそうなの!? 僕達まったく知らないんだけど。ロウ兄さんにお父様達も、もしかして知らない?」


ええ、知りませんよ。知ってたら皆さんあんな態度とれませんからね。私を敵に回したら、とっても怖いですよ?


「そうです、私が錬金術師で薬殺担当のマリーです。知ってるのはケビン隊長とマルシアス様にジェンナ様位ですね。だからルー達の教育係兼護衛になれたんです。マルシアス様の許可を得て、悪さをしている使用人の処断も担当しています。ルー。いつの間にかいなくなったり、唐突に故郷へ帰った使用人とかいますでしょ? あれは私が処断してますの」


新しい毒や解毒剤の実験には生きた人間がいりますからね。お金を横領した不届き者や情報を他家に流す愚か者は、漏れなく実験台に使わせてもらいました。私をいじめてくれた主犯格の女も、男に騙されてかなりの情報を売ってましたからね。復讐込みで強力な毒の被験者にしましたよ。


‥‥穴という穴から血が吹き出してきて、あまりのグロさに使えないと判断しましたけれど。


「‥‥あれえ、僕って凄く怖い女性を奥さんにしようとしてない? でも‥‥それでも僕は嬉しいな! マヤ様にアイラ叔母さん、ユイ=リンパードに負けない位の女性だって、マリー姉さんが分かったから」


「ルー、過剰評価は止めて下さい。か、顔が熱いし、恥ずかしいですから! ギルドマスター、笑うな!! 貴方の増毛剤、もう卸しませんよ」


「おい! マジでそれは止めろ!! 今、良い感じに生え揃ってるんだぞ。後少しで全盛期に戻れるんだ。それだけは、それだけは止めてくれええ!」


まったくルーったら、あんな事を言うなんて。でも、アイラお嬢様並みに評価されて嬉しいですね。今夜は寝かせてあげませんから。ギルドマスターは‥‥どうしてくれましょうか?


「この私を笑ったんです。ポーションの件はギルドマスターの権限で確実に決めて下さいね。ポーションを月で500程は卸せますから。錬金術師ギルドの方々だと月産300が限界でしょうしね。この案件受け入れてくれるかな?」


「い、いいですともっ! だから、だからあ!!」


「分かってますよ、増毛剤はお渡ししますから。ただ、髪の定期的な保全は大事な事です。そこでこの薬。毛穴や表皮にある汚れを除去し、髪を優しく保護致します。今回起きた騒動の謝罪と致しまして、半年程は無償で提供しますよ。そこからは金貨10枚程頂きますが」


よし、恩を売ると同時に実験台確保! 貴族や教会関係者、果ては魔族の方々も髪の問題はお困りでしょうから。彼等を実験台にするのはまずいですが、アホ母の元冒険者仲間だった彼なら大丈夫。弱みはしこたま握ってますからね。これを売り出せれば、ファルディス家内での地位は安泰。愛しいルーを守れるし、一石二鳥です。


「‥‥1年じゃ駄目? ラングにはかなり迷惑をかけられてな。何度お偉い貴族の方々に頭を下げに行った事か」


「分かりました。1年無料提供致しますよ。ところで、その貴族の方々の情報を下さいませ。ルーと一緒に謝罪行脚(しゃざいあんぎゃ)しますので」


お金ではなく、私達の作る薬で事を収めるとしましょう。強精剤に増毛剤、後は新しく作った石鹸(せっけん)なる物を贈るのも悪くありませんね。


私の部下たる錬金術師の1人が弟子を取ったら、天命人だったらしく石鹸を作ってくれました。何でも、汚れを簡単に落とせる代物らしいですから売れそうですね。もちろん、彼にはしっかり報酬を支払いますよ。金の成る木はしっかり育てなくては。


「分かった。貴族のリストはこれ‥‥」


ギルドマスターが机の引き出しから取りだそうとした時、ドアを勢いよく開けて女性が入ってきた。ギルドマスターの娘であるヨミですね、父親に似ず美人になって良かった。仲の良い友人の1人ですがかなり慌ててますね。余程の出来事があったのかしら?


「ギルドマスター、大変です! ウグイス亭で冒険者達と8騎士の1人であるウィルゲム卿が交戦。重田弥生以下、要注意冒険者10数名が死亡!! 現場にはユウキ=ファルディスやユイ=リンパードの姿もあり、ラング=ファルディスは片腕を斬られ重傷との事です」


「な、なんだとおお! 何で8騎士が出てくるんだ!?」


「そ、それが。ウィルゲム卿の恋人である占術師カレンを重田弥生が傷つけたらしいのです。激怒したウィルゲム卿が、皇帝陛下の許可を得てウグイス亭に乗り込んだらしく‥‥」


まったく、次から次へとラングとその仲間はとんでもない事をしてくれますね! 占術師カレンといえば、帝都で大人気の占い師です。貴賤問わず信奉者は数多くいますのに、あの馬鹿たれは!! このままだと引きずられて、ルーもマルシアス様に排斥されかねない。何とかしなくては。


「ギルドマスター、リストを早く渡して下さい。ルー様。貴族の謝罪行脚が終わったら、占術師カレンにも謝罪に参りましょう。事を早く収めないとファルディス家の浮沈に関わりますので!」


「わ、分かった。次から次に厄介事が起きすぎて怖すぎる。‥‥騒動が終わったらお祓いに行こう」




次回、ユウキが謝罪行脚の先で‥‥。

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