第18話 尻拭いの最中で
お待たせしました。
「分かりました。ファルディス家の誠意を信じ、今回の件は水に流します。マルシアス殿らには、そうお伝え下さい」
好々爺な感じを受けるブレスク伯爵は謝罪を受け入れてくれた。何でもラングの馬鹿たれ共が護衛任務の途中で金を幾ばくかくすねたらしい。まあ、少額だったのが幸いか。盗まれたお金の倍近くは彼に渡してある。これで収まったなら何よりだ。
「ありがとうございます。此度の1件は我々としても不本意でした。ラングは皇帝陛下が直々にお裁き下さるとのこと。家としては恥ではありますが、世間から見れば公平な裁きが期待出来るでしょう。では、失礼いたします。重ね重ね申し訳ありませんでした」
頭を下げ、貴族の部屋から廊下に出る俺。つ、疲れた。どんだけラング達は迷惑をかけたんだよ。今日昼より、師匠やケビンさん達と手分けして謝罪行脚をしている。
ラングの被害を受けた彼らの対応は様々だ。恐縮しながら礼を言ってくれる者、ここぞとばかりに苦情を訴える者。そして、高圧的に物言いを行い、賠償金を踏んだくろうと企む輩も現れた。
「‥‥どこの世界にもいるよな。金を余計にもらおうとする欲深が」
ラングの周りで起きた事件や事故をファルディス家の影の者達が調査。結果を俺達に伝達済である。当然盛っていたり、嘘をついている奴らはバレる訳で‥‥。
「そんな奴等は、少しお仕置きしたから良いとして‥‥。次が大変だな。なにせ、8騎士様の恋人である占い師だもの」
ラング達が傷つけた占術師カレンの事だ。彼女の訴えを聞いて、ナルソス様が動いたらしい。はあ、どうしてあいつらは虎の尾を踏むような事をするかな? 忠告を無視した結果、3人死亡で1人死刑確定なのは自業自得なんだろう。とりあえず、店に向かうか。迷っていても仕方がない。
「ふっふっふ、ユウキ殿でいらっしゃいますかな? 少し時間を頂きたく」
「はい? どちら様で‥‥うおっ!」
しばらく廊下を歩いていると、突然俺の前に謎の集団が現れる。気付けば周りを囲まれている上に、よくよく見てみれば格好が怪しすぎる。現代日本で取り囲まれたら、即通報するレベルだ。
「‥‥おいおい、見るからに怪しい集団じゃないか。なんで帝都に黒頭巾姿の変態連中が出て、取り締まられないんだよ。鎌とかドクロの杖とか普通にありがちすぎる装備だし、趣味悪すぎだな」
「なんだと、貴様!」
「これは我らの正装だ。侮辱するなら容赦はせんぞ!」
「ふん、所詮は貧民街出の小僧にすぎんな。我らの力を見誤るとは」
俺の単刀直入な発言に怒りをあらわにする連中だったが、リーダー格の黒頭巾に制された。
「静まれ、者共! ユウキ殿、わしらは邪神オードルを信奉する暗黒教団の者じゃ。今は人避けの魔法を使い、わしらは外界とは隔離されておる。いかに、そなたの女どもと言えど干渉は不可能じゃよ。ユウキ殿には我々と共に来てもらう、よろしいか?」
俺に聞いているが、脅迫以外の何物でもないよな。数は全部で20名弱か。俺の実力じゃ勝てそうにないな。テレポートを使える隙もないし。
「はい、分かりました。と、でも言うと思ったのか? 明らかに悪巧みへと加担させるつもりだろう。とはいえ、人海戦術で来られるとなあ‥‥」
「ふん、よく立場を分かっておるではないか。力ずくで招待させてもらおう。者共、さっさと捕らえよ」
俺の両手は黒頭巾達に取り押さえられる。このままだと魔法を封じられるのも時間の問題か。ならば彼女達に連絡位はしないとな。
「悪あがき位はさせてもらおう。ギャラルディオ!」
「?? 特に何も起きぬな。まあ、よい。我らの教会へと連れていくぞ」
先程の魔法は、危機を知らせる音を恋人3人に送る魔法だ。もし、俺の身に何かあった時はすぐに使え。ためらうなと厳命させられた魔法である。何でも彼女達の近くで荘厳なホルンの音が響くらしい。
‥‥はあ、男の立場が無いんですがねえ。向こう3人の方が強いから、仕方ないと言えば仕方ないけどな! 現実を見ても意味がない。今は俺に出来る事をするだけさ。
「しかし、この屋敷が魔の巣窟だったとは信じられなかった。ブレスク伯爵を神眼で見たが、怪しい所は無かったからな」
屋敷内を歩く俺達を使用人の何人かが見ているが、何も言わずに頭を下げている。この屋敷の主たるブレスク伯爵は、篤実家と知られる男だ。孤児院に寄付をするなど行う好人物だったが、こんなどぎつい裏の顔があったんだな。
「ブレスク伯爵は昔からの同志よ。孤児などの実験動物を我々に供給すべく動いてもらっていた。くっくっく、そなたの神眼が見抜けぬも無理はない。我々には邪神様の加護がある。情報を改ざんするなど容易き事よ。あまり、スキルを過信するのも考えものじゃて」
‥‥さしもの神眼も万能じゃないのか。異世界転生物でよく出来る無双とやらは、自分にはとても望めぬらしい。だったら、その辺は彼女達に任せよう。
「自分の甘さは分かった。そのうえで問うが、俺に何をさせる気だ。お前らが鼻で笑う神眼、役に立つとも思えんが?」
「神眼持ちであるそなたにしか出来ぬ仕事よ。魔性の心を持つ人間を選別してもらいたいのじゃ。人々の中には邪悪な魂を持つ者がおる。彼らを我々の実験台に使いたい。その為に数は多いに越した事はないでの、はっはっは!」
人間の腐った外道が。こういう手合いが、虐殺だの粛清だのとやるのは歴史が証明している。普通に信仰するには良いが、過激な狂信者ほど始末におえん。仕方ない、俺は情報を集めるのに専念しよう。暴れるのは彼女達に任せる。まったく、謝罪行脚がとんでもない事になったな。
次回、ある女性との出会い。




