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【書籍化】闇纏いの魔女と黎明の騎士【コミカライズ決定】  作者: 村沢黒音@『闇魔女2巻』3/6発売
番外編

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筆頭相談役・ココちゃん


 それは、カフェ・ローワンでの出来事だった。

 お昼の時間帯、ルシルの使い魔・ココは中庭で休憩していた。ベラの使い魔・ピーちゃんと枝で寄り添って、さえずり合う。


 ふと、ココの体に影が落ちた。

 ココは顔を上げて、少し驚いた。目の前に立っていたのは、レナードだった。


「実は……」


 レナードは真面目な表情で、ココの姿をじっと見つめる。


「君に相談がある」

「え。ぼ、僕……?」


 ココは目を丸くして、翼で自分を指さした。

 レナードがココに声をかけてくるのは稀だ。ココも自分からは話しかけたりしない。今、ルシルは店の中で食事中だ。


 ――ルシルがいない時を狙って、わざわざココに声をかけてくるとは、何の用なのだろうか?


 レナードは木の横に佇む。


「ルシルが最近、気になっている物や、欲しがっている物はないだろうか」


 ココは羽ばたいて、レナードの肩の上に乗る。そして、翼を羽ばたかせた。


「それって、事前調査? ルシルにプレゼントでもするの?」

「ああ。ルシルが喜びそうなものはいくつか思いつくんだが……。一番は、魔導書だろう」

「うんうん、そうだね」

「だが、本人に探りをいれてみたが、目ぼしい本はすでに自分で持っていそうだった」

「うんうん」

「アクセサリーや服には興味がなさそうだ」

「まあね~」

「魔導具なら欲しがるだろうが……。これも興味がありそうな物は、すでに入手済みの可能性が高い」

「あー。ルシルのお給料の使い道は、ほとんどが食事か、魔法関連だから」

「やはりな」


 レナードは静かに息を吐いて、ココの姿を横目で捉えた。


「そこで、君の知恵を借りたい」

「へへ……あの英雄様がね~。僕の力を借りたいなんてね」


 ココは気分を良くして、胸毛をもふもふと膨らませる。


「いいよ! 僕が知っているとっておきの情報、教えてあげる」

「助かる」

「ルシルが欲しいのはねえ、石だよ!」

「……石?」

「箒に埋めこむ用の魔法石さ。最近、無理な飛行をしたせいで、少し欠けちゃったみたいで」

「ああ……なるほど」


 レナードは覚えがあるのか、目を細めた。

 魔導士が使用する箒は、一般的な掃除用の品とは異なっている。穂の中央に魔法石を設置することで、風の流れを制御しやすくしているのだ。ルシルの箒には、赤い魔法石が使われている。

 先日、ジークとの対決の際、ルシルは箒を酷使していた。その際、魔法石がわずかに欠けてしまったのだ。飛行には問題がないが、空気抵抗が大きくなるため、箒の制御が難しくなる。


「有力な情報をありがとう」


 レナードはほほ笑むと、感謝するようにココの胸毛を撫でた。

 そして、大きな果物を枝に置いてくれる。


「わー!」


 ココは目を輝かせ、その果物に飛びついた。



 ◇


 

 その日の夜のこと。


 ココはルシルと共に、カフェ・ローワンを訪れていた。ルシルはベラとお茶をしながら話をしていたが、今日は疲れていたのか、途中からうとうととし始める。

 そして、とうとうソファで横になって眠ってしまった。


 いつもであれば、ベラはすぐにルシルを叩き起こして、家に帰らせるのだが……今日はちがっていた。

 ルシルの体にそっと毛布をかける。


 そして、ベラはカップを持って、ココとそばへとやって来た。


「ココちゃん、お話してもいいかしら?」

「ん、なに?」


 ココは体全体をくいっと傾ける。


「ルシルについて教えてほしくて……。ルシルって辛い食べ物が好きでしょ? 最近、特にはまっている料理とかってない?」

「お料理? ……なに? 君が作ってあげるの?」

「まあ、そんなところね」


 ベラはうっすらとほほ笑む。ココはテーブルの上で、翼をパタパタとさせながら答えた。


「それならねえ、チキンティッカだよ! 熟れすぎた木苺よりも鮮烈で、真っ赤なやつ」

「え、真っ赤って……?」


 チキンティッカとは、ヨーグルトとスパイスに漬けこんだ鶏肉のことだ。繁華街ではよく屋台で、串に刺した物が売られている。普通のチキンティッカなら、茶色か、ほんのりと赤い物が多いのだが……。


「騎士団のそばに、たまに来ている屋台さ。辛さを調節できるんだけど、ルシルはいつも、いっちばん辛いやつを頼んでる」

「……相変わらず、雑な食生活しているのね。この子は」


 ベラは呆れたように目を細めて、ルシルの姿を見る。ルシルはすっかり安心しているのか、緩み切った寝顔をさらしていた。……元悪女とは思えないほどの、だらしのない口元だ。


「とにかく真っ赤になるほど、辛いやつがいいってことよね?」

「うん!」

「そう……味見するのが大変そうだけど。やってみるわ。ありがとう、ココちゃん」


 ベラはココの前に、ナッツを置いてくれた。


「わー!」


 ココは目を輝かせ、そのナッツに飛びついた。



 ◇



 そして、その次の日のこと。

 ココの前に現れたのはジークだった。


 普段、ルシルが騎士団の本部で働いている時、ココは暇していることが多い。たいていはルシルの机で昼寝しているか、屋上で風に当たっているかだ。今日は屋上で過ごしていた。


 すると、ココの前にジークがやって来た。

 ココがくいっと首を傾げていると、ジークは手すりに背中を預けて、ふうと息を吐く。


「……疲れたなあ」

「さぼり?」

「はは、見逃してくれよ? レナードにバレたら、静かにキレられるから」


 ジークは明るく笑って、ココの体をつついた。


「なあ……聞いてもいいかな?」

「僕に?」

「そう。ココ大先生様の知見を借りたい」


 大げさな言い草だが、ジークの愛嬌が合わさると、何だかいい響きに聞こえるのだった。ココは気分を良くして、胸を張った。


「ふふん、いいよ。何でも聞いて」

「ルシルがさ。最近、欲しい物って、何かないか?」

「んー?」


 ココは首を傾げる。


「それ、昨日、レナードにも聞かれたよ」

「え!? そ、そうか……。なんて答えた?」

「それはねえ」

「あ、いや、やっぱいい! どう考えても二番煎じだ……。じゃあ、ルシルが食べたい物! 料理で気に入っているものが何か、教えてくれ」

「それはねえ、昨日、ベラに聞かれた」

「ぐう、二番煎じ……!」


 ジークは悔しそうに拳を握る。


「完全に出遅れたな……。どうしよう」


 ココは片方の翼をジークに差し出す。「ちょうだい」をするようなポーズで。


「情報提供料。レナードは果物で、ベラはナッツをくれたよ」

「え?」

「もっとすごいものくれるなら、とっておきの情報、教えてあげる」

「ぐう……! この使い魔、ちゃっかりしてるな……」


 ジークは困ったように呻いてから、言った。


「わかった。君が食べたいと言ったものを用意する。これから3日間、連続で!」

「わー!」


 ココは目を輝かせ、ジークの肩に飛びついた。


「あのねえ、ルシルが欲しいのは琥珀糖(こはくとう)だよ」


 ジークは意外そうに目を見開く。


「え? でも、ルシルって、甘いものが苦手なんだろ?」

「琥珀糖はなんだか、食べているうちに気に入ったみたいだよ。色が綺麗なのもいいって。でも、外国のお菓子なんでしょ? このへんじゃ手に入らないって困ってた」

「……そっか」


 ジークは思い出に浸るように目を伏せる。


「……琥珀糖は、アンジェリカの好物でもある。俺なら、どこで買えるのかも知ってる」


 目をつぶって、ふうと息を吐き出す。

 屋上を風が通り抜け、ココの白い毛を揺らした。


 ジークはココの顔を見て、明るい笑顔を見せる。


「ありがとな。ココ大先生様、頼りになる」


 優しく翼を撫でられて、ココはその気持ちよさに目を細めた。



 ◆



 それから数日が経った。

 ルシルはカフェ・ローワンに呼び出されていた。


 ココを肩に乗せ、ルシルは箒でローワンに向かう。

 扉を開けると、店の中は真っ暗だった。人の気配もしない。


「あれ? ベラ……?」


 ルシルは首を傾げながら、中へと入っていく。

 中央の辺りまで来た時、突然、明かりがパッと灯った。


 ぱん……!


 周囲からクラッカーの音が鳴り響く。


「おめでとう~!」


 ルシルは目を丸くして、足を止める。そんな彼女の頭上に、クラッカーの紙吹雪が降りかかった。


「ルシル、おめでとう」


 ベラがカウンターの奥から現れる。彼女が持っている皿には、真っ赤に染まったチキンティッカが盛られていた。


「おめでとう。ルシル」


 店の奥にいたレナードが、小さな箱を持って現れる。


「誕生日、おめでとう!」


 柱の陰からは、ジークが。

 彼はリボンを結んだ瓶を手に持っている。その中には宝石のように輝く琥珀糖が入っていた。


「おめでとう~!」


 パーティ帽子をかぶったマリサが、ソファの影から現れる。彼女の手には、手作りらしいお花の工作が握られている。


「え……みんな……」


 ルシルが呆然としていると、ベラがニコニコとほほ笑んだ。


「サプライズパーティよ。……驚いた?」

「ええ……とても」


 ルシルは胸に手を当てて、ほっと息を吐く。


 そして、皆の顔を見渡した。


 優しくほほ笑む、レナードとベラ。

 元気に笑う、ジークとマリサ。


 皆の顔を見ながら……ルシルは内心で、苦笑いしていた。


(うちの使い魔はお喋りってこと……みんなに教えておいた方がよかったかなあ?)


 まったくもう……、という気持ちをこめて、ルシルは肩にいた使い魔をつつく。


 皆がココに相談して、好物やら欲しい物やらを調べてくれたことは、知っている。お喋りなココがすべて教えてくれた。


 ――それでも。


(サプライズがあることを知っていても……それでも)


 胸が詰まって、ルシルは何も言えなくなった。

 誕生日をお祝いしてもらえることが、こんなに嬉しいなんて知らなかった。


 ルシルは皆の笑顔に囲まれながら、そっと目の端をぬぐった。


本日より、闇魔女2巻が発売となりました!

またもや、えいひ先生にとても素晴らしいイラストを描いていただきました。


ジークがとても可愛く、かっこいいです!


また、このお話の第三部を2月頃に更新する予定と記載していましたが、

今年の秋ごろの予定に変更とさせてください。

年内には必ず更新するので、お待ちいただけると嬉しいです!

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(3/6金)2巻発売します!
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こちらは1巻です。
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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます!! 優しくてちゃっかりしてるココちゃんがとても可愛いです(*˘︶˘*).。*♡ココちゃんの胸毛きっともふもふしてて触り心地いいんだろうなぁと思いながらほのぼのしてました(≧▽…
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