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2020年2月14日(金)

かなり長くなってしまった最終話です。

やっとヤンデレ解禁です。

後半ヤンデレ色が強くなりますのでご注意ください。(作者的には微ヤンデレだと思っていますが……)

 バレンタイン当日の朝はいい天気でちょっとだけ恨めしく思ってしまう。

 きっと今日はみんなソワソワしてドキドキする一日になるんだろうな。当然、モテる須賀くんは一日中誰かから告白されて、あの残酷で優しい言葉を紡ぐのだろう。

 そう考えたら何だか悔しくてキャビネットに置いたままの袋から徐に箱を取り出し蓋を開けると、パクリと一粒口に放り込んだ。

 まさか自分で買ったチョコを自分で食べるはめになるなんて、購入した時には思ってもみなかった。

 でももう渡す相手もいないのだから決別の意味を込めて食べてやったのだ。

 甘い甘い高級チョコレートは美味しくて優しくて、油断するとすぐに決壊しそうになる涙腺に慌てて蓋をして学校へ向かった。


 朝から講義を受けて、マキちゃんと昼食を食べて他愛ない話をする。

 須賀君に告白する前のいつもの自分、いつもの時間に戻っただけ。

 時折聞こえる「チョコ渡した?」なんて会話に胸の奥が痛むが、それには気が付かないふりをしてやり過ごした。


 昨日、遠回りして帰ったため疲れたことと前日の寝不足からか、ぐっすりと就寝した私の顔は普段通りに戻っていて、登校するなり私の顔を確認したマキちゃんを安心させることができた。

 このまま今年のバレンタインも何事もなく過ぎていくんだなと、講義が始まるのを待っていたのだが……。

 始業時間を過ぎた頃、先生から送られてきた「休講」のラインに学生達が悪態を吐く。この先生はいつも連絡が遅くて学生から不評だった。

 溜息を吐きながら私も帰り支度をはじめると、隣に座ったマキちゃんがクイっと私の顎を掴んで上を向かせた。


 いつもなら「もっと早くに寄越せ! そしたらさっさと帰ったのに!」と真っ先に文句を言うマキちゃんの只ならぬ様子に私は首を傾げる。しかも顎クイって……。


「リナ、顔貸しな!」


 マキちゃんの言葉に帰ろうとしていた幾人かの学生がギョッとしたように振り返ったが、鞄からゴソゴソと化粧ポーチを取り出した彼女を見て納得した顔で教室を出て行く。

 今日の最終時間の講義だったため、休講になった教室はあっという間に私とマキちゃんの二人だけになってしまっていた。

 マキちゃんは誰もいなくなったのをいいことにアイシャドウ、アイライナー、マスカラにチーク、大小ブラシとビューラーなど様々な化粧道具を取り出すと、嬉々として私の爪にネイルを塗り始める。


「えっと、マキちゃん? 一体何を?」

「せっかくのバレンタインだもん。もちろん化粧に決まってるでしょ!」


 そう言ってあっという間にネイルを仕上げたマキちゃんがにんまりと微笑んで、私は何が何だかわからないまま彼女の指示通り瞼を開けたり閉じたり、瞳をあっちこっちに動かしている間に劇的変貌を遂げたのだった。



「マキちゃんって天才?」


 鏡を覗いた私が最初に言った言葉は本当にお世辞ではなかった。

 化粧が終わって見せられた鏡には地味だ地味だと毎日見飽きていた私の顔はそこには無くて、代わりに華やかな美人が映っている。

 あの地味顔がここまで劇的に変わるなんてと感心している私に苦笑しながら、マキちゃんは化粧で汚れた手を洗いに席を立った。


 暫く呆けたように自分の顔を鏡で見ていたが、考えてみると自分の顔に見惚れていることが恥ずかしくなって鏡をしまう。

 そうして今日あるはずだった講義の教科書を眺めていると、その上にガタンっと鞄が置かれた。

 何だろう? と思い顔を上げると、そこにはとんでもなく不機嫌な顔をした須賀君がいて息を飲む。

 まだ会いたくなかったのに……そう思って視線を逸らすとグイっと片頬を押さえられて、強制的に彼の方を向かせられてしまった。


「なんでライン返してくれないの? 電話もでてくれないのは何で?」

「……ごめん。忙しかったから」


 聞いたことがないほど低い声で問われたことに内心動揺するが、平静を装ってなるべく自然に答える。

 すると私の返事を聞いた須賀君の怒りが更に増したようだったが「ん?」と私の顔を凝視したかと思ったら途端に微笑んだ。


「化粧、変えた?」

「? ああ、これ? マキちゃんがしてくれたの。バレンタインだから」

「そっか。普段もいいけど、雰囲気変わっても可愛いね」

「ありがとう」


 もう彼の『可愛い』には惑わされない。

 サラリと感情を込めずに言った私の『ありがとう』に一瞬だけ不思議そうにした須賀君が口を開いたのと、マキちゃんが帰ってきて私に告げたのはほぼ同時だった。


「今日さ……」

「リナ、今日の合コン駅前7時集合ね」

「うん、わかった」


 マキちゃんの言葉に私は笑って頷く。

 合コンに行くことが須賀君に知られれば、彼はすぐに私に興味なんかなくなるだろう。

 そりゃ、そうだ。幾ら振られたとはいえ、ほんの数日前に「好きです」と告白しておいて堂々と他の男を漁りに行く女なんて誰だって「は?」と思うだろう。最もセフレとかならそっちのが都合がいいのだろうが、いくら好きでも私はそんな関係になるのはご免だった。

 これでいいんだと言い聞かせて席を立つと、須賀君の焦ったような声がする。


「え!? ちょ、ちょっと待って! 合コンって何? 坂崎さん合コン行くの!?」

「うん。行くよ」

「嘘……だろ!? 何で!? ねえ、何で!?」

「そんなの……須賀君には関係ないでしょ」

「関係ない……? ………………何だよそれ!!!」


 怒鳴る声とダアンっと机を殴りつけた音が教室に響いて、ビクッと身体が震えて反射的に瞼を閉じる。

 静まりかえった空気に恐るおそる目を開けると、そこには拳を真っ赤にした須賀君が立ち尽くしていた。


「俺の独りよがりだったのかよ……?」


 そう呟いて呆然と立ち去った須賀君はいつもよりかなり小さく見えた。



 須賀君の後ろ姿が見えなくなった頃、マキちゃんが心配そうに私の肩に手を置く。


「リナ、大丈夫?」

「うん。私は何もされてないから」


 むしろ私より須賀君の手の方が心配だった。

 あんなに強く机を叩いて骨とか折れなかっただろうか? それに彼は何故あんなに激高したのだろうと考え込んでいると、マキちゃんがふうっと息を吐いた。


「せっかく化粧したけど今日の合コン、リナは参加中止! アンタたちは2人でちゃんと話し合った方がいいと思う」

「え? マキちゃん?」

「今日渡すためにチョコ買ったんでしょ? 頑張りな!」


 マキちゃんはそう言うとささっと荷物をまとめて片手をヒラヒラさせて帰って行った。

 1人残された私はマキちゃんが言っていた言葉の意味が解らなくて途方に暮れる。


「今更、話し合うなんてできないよ……」


 今日のために買ったチョコレートは既に1粒食べてしまったし、マフラーも部屋に置いたままだ。

 貰った指輪もあの日、須賀君と女の子が抱き合っているのを目撃して以来つけていない。

 私の部屋に置き去りになったままのそれらを思い出すときゅうっと胸が狭くなるが、私の脳裏には先程立ち去った須賀君の泣き出しそうな顔がずっとチラついて離れなかった。



 トボトボと家路に向かいいつもの角を曲がり薄暗い路地へ入る。

 朝とは打って変わって曇天になった空に、小さく溜息を吐いた途端に暗がりから伸びてきた腕に羽交い絞めにされた。

 恐怖に震えながらも必死で抵抗すると耳元で聞き覚えのある低い声がする。


「合コンなんて行かせない」

「す、須賀君!?」


 驚いて声のした方を見ると酷く憔悴したような須賀君が黒い笑顔を浮かべていた。


「リナが悪いんだ。俺という彼氏がいるのに合コンなんて行こうとするから」

「か、彼氏!?」

「彼氏でしょ? 俺のこと好きだって言ってくれたじゃん! それなのにラインも電話も繋がらなくて! 今日だって、ずっとリナからのチョコ待ってたのに全然連絡くれないし! 待ちきれなくて会いに行ってみれば可愛く化粧してたから、俺のためだって思って嬉しくなったのに合コン行くとか言うし! 俺のこと弄んだの!? ペアリングだってつけてくれてないし! 安物だから? もっと高いの買えば毎日付けてくれるの!?」

「ね、値段の問題じゃなくて」

「じゃあ、何が気に入らないの!? 俺、何かした!? リナに嫌われるようなことした!?」

「だって……」


 言い澱んだ私の横を通行人が怪訝な表情で通り過ぎてゆく。

 羽交い絞めにされている私の状況に「警察に通報しましょうか?」と、問うようなその表情に慌てて首を横に振ると、須賀君が私の額にキスをして、にっこりと微笑んだ。


「リナ、雨が降る前に仲直りして家に帰ろうか」


 怖いくらいの笑みを浮かべた須賀君に私は戦慄を覚えたが、通行人は痴話喧嘩だと思ったようでさっさと立ち去ってしまう。

 須賀君はその笑顔のまま私の膝裏へ手を入れると横抱きにしてスタスタと歩き始めた。


「お、降ろして!」

「ダメ!」

「ひ、人が見てるし!」

「関係ない。俺から離れるなんて絶対に許すつもりないから」


 そう言ってアパートへ辿りつくと躊躇う私の鞄から迷うことなく家の鍵を取り出して、部屋のドアを開けてゆく。


「リナがどういう風に鞄に物を入れているかなんてお見通しだよ」


 顔は笑っているのに瞳が全く笑っていない須賀君は、私を横抱きにしたまま器用に靴を脱がせると1Kアパートのキッチンの脇をすり抜けて部屋に辿り着き、ドサッとベッドへ横たえた。

 須賀君はそのまま私の上に覆い被さると顔のすぐ脇を両腕で囲って、鼻と鼻がくっつきそうな程の至近距離で問いかけてくる。


「それで? 何で合コンなんて行こうとしたの? 俺のこと好きだって言ったよね? 俺達付き合ってるんだよね? リナは俺の彼女なんだよね? なのに何で?」


 先程からの須賀君の勝手な言い分に私の中で何かがプチンっと切れた。


「言……て……もん……」

「ん? 何?」

「言われてないもん!」

「ん?」

「好きって言ったのも私だけだし、付き合うとも言われなかった!」


 目を見開く須賀君を睨みつけて溢れ出す涙もそのままに言い放つ。


「それに須賀君、違う子に告白された時も私の時と同じように『ありがとう、嬉しい』って言って抱きしめてた! だから私だけが特別じゃないんだって、私が勝手に勘違いしただけで、須賀君は私と付き合ってなんかなかったんだって思った! だから離れようって、諦めようって思ったの!」


 グイっと須賀君の胸を両手で押して起き上がる。

 私を囲っていた須賀君の腕は呆気ないほどに簡単に外れて、捲し立てる私の剣幕にたじろぎながらも両肩に手を置いた。


「ちょ、ちょっと待って! 違う子? 告白? ……もしかして図書館のアレを見られてた? でも俺は抱きしめてなんかいないよ!」

「この目で見たもの!」

「だからそれは抱きしめたんじゃなくて勝手に抱き着かれたの! 優しく接したのは昔、告白された時に冷たくしたら刃物を出された経験があるから! あの後、ちゃんと断ったし、すぐに離れた! 俺にはリナがいるから!」

「私が一人暮らしだから?」

「はぁ?」

「友達とやりたい放題って言ってたのも聞いた!」

「それも聞いてたの!? どんだけ間が悪いんだよ!」

「私のこと興味ないって言ってた」

「興味大ありだ!!! あれは他の女に興味がないって言っただけで、俺はリナのことしか見ていない! リナの全部が知りたい! そりゃ、やりたいけどそれだけじゃない! 言葉が足りなかったことは謝る! だから俺のこと信じてほしい! 好きだリナ! 大好きなんだ! やっと手にいれたのに俺から離れて行かないでよ!」


 私を抱きしめて再びベッドに倒れこんだ須賀君が痛い位に身体を密着させてくる。


「リナ、お願い……」


 初めて聞いた須賀君の弱々しい声にギュウっと胸が締め付けられた。

 私だって本当は須賀君と一緒にいたい。


「うん」


 須賀君に抱きしめられながら小さく頷くと、少しだけ彼の腕の力が緩む。


「じゃあ約束通り、チョコレートは俺に頂戴?」

「う…あ!」


「うん」と頷こうとしたところで青褪めた。


(待って…私、今朝、1粒食べちゃった……)


 そんな私に須賀君が身体を離し顔を覗き込んでくる。


「リナ?」

「えーと、その……私、須賀君には振られたんだと思ってて……」

「うん。連絡が取れなかったのも避けられてたのも俺が誤解させちゃったからだったんだね。ごめんね」

「あ、謝ってほしいわけではなくて! むしろ何もかも勘違いしてた私が悪いし……」

「でもリナは傷ついたんでしょう?」

「それは、そうだけど」

「なら謝るよ。リナ、ごめん。どうしたら許してくれる?」


 頭を下げる須賀君に慌てて私は身を起こす。


「ゆ、許すとかじゃなくて……その……ごめんなさい! 私、須賀君にチョコはあげられません!」

「え?」


 途端に凍り付いた須賀君が真顔になる。


「何で?」


 端正な顔から一切の表情を無くした須賀君が私の髪を弄ぶ。

 一切甘さがなくなった声音は無機質で怖いとさえ感じた。


「やっぱり監禁かな?」


 小さく呟いた須賀君の言葉に私は首を振った。


「違う! 換金なんてしてない! 食べ物だし質屋さんとか無理だし。そうじゃなくて、ヤケになって須賀君にあげようと思ってたチョコレート1粒食べちゃったからあげられないの! だってもう渡せないと思ってたから」

「へ?」

「ごめんなさい!」


 ガバっと頭を下げると数秒沈黙が流れた後、須賀君が震えた。


(きっとなんて食い意地の張った女なんだって今度こそ呆れられた!)


 ここ数日ですっかり涙腺が弱くなってしまった私の涙がポタリとベッドに落ちた時、須賀君が笑いだす。


「アハハハハハ! 換金!? 換金ね! 全く、リナは本当に面白いんだから。危ない、危ない。俺に渡す予定のチョコ、ヤケになってリナが食べちゃったんだ? ったく本当に可愛いな」

「……呆れてないの?」

「呆れる? 何で? ‼ リナ? 何で泣いてるの!?」


 ポカンっと顔を上げると私の顔を見た須賀君がギョッとしたように指の腹で涙を拭う。


「だって、食べちゃったんだよ?」

「うん。でも1粒だけでしょ? 残ったのくれれば全然いいよ?」

「でも3粒しか入ってなくて!」

「あ、そうなの? じゃあ2粒はもらえるわけだ」

「……須賀君!」


 ギュウっと彼に抱き着けば頭をポンポンと撫でられる。


「それで? そのチョコは?」


 笑い含みに訊かれた言葉に私は黙ってキャビネットの方向を指さす。

 そこにはリボンを解いた高級チョコの箱が紙袋の上にのっていた。

 須賀君は黙ってベッドから立ち上がるとキャビネットへ向かい、私もその後からついてゆく。

 パカっと箱を開けると敷紙しかない一つの仕切りに苦笑した。


「確かに1粒ないけど、それは俺がリナを悲しませた罰ってことにしておくよ」


 そう言って1粒を口に放る。


「うん、美味しい」


 眉尻を下げた須賀君にキャビネットの上に置いてあったもう一つの袋を差し出す。

 不思議そうな顔をする須賀君だったがちゃんと受け取ってくれた。


「チョコと一緒に渡そうと思って買ってきたの」


 でも時期遅れになっちゃったと笑うと、須賀君が中身を取り出し目を瞠った。


「これ……」

「気に入ってるみたいだったから……」

「マフラー、わざわざ買ってきてくれたんだ? 水曜日に大事そうに持ってた袋って俺へのプレゼントだったんだね。実は少しだけ気になってたんだ」

「喜んでもらいたかったんだけど、暖かくなっちゃって……」


 私の言葉は最後までは音にならなかった。

 気が付けば須賀君に引き寄せられて口を塞がれていた。


「リナの気持ちがすっごく嬉しい! 可愛い。大好き。愛してる」


 キスの合間に囁かれた須賀君の言葉はチョコレートよりも甘くて、蕩けてしまいそうになる。

 でも少し、ほんの少しだけまだ信じられなくて彼の瞳を覗いてしまう。


「ほんとに?」


 須賀君は私の頬を軽く撫でると不敵に笑った。


「まだ俺のこと信じられない? いくらでも聞かせてあげるよ? 好きだリナ、天然な所も可愛い顔も滑らかな髪もちょっとドジな所も全部、全部大好き。友達のマキに対する依存度が高いってところだけはちょっと頂けないけど、それもひっくるめて愛してる」


 須賀君の言葉に彼の胸元へ顔を寄せる。

 私を包み込むように抱きしめると須賀君が照れ臭そうに笑った。


「本当はずっと、リナって呼びたかったんだ」

「そういえば、名前……リナって呼ばれてビックリした」

「リナへの片思いが長かったからね。本当はずっと勝手に下の名前で呼んでた。ごめん」

「片思い? でも須賀君って何人も恋人いたよね?」

「俺は大学1年の時にリナを好きになってから彼女なんて作ったことないけど?」


 少しだけ不満そうな須賀君の物言いにキョトンとする。


「1年から? 私達が話しだしたのって2年の時じゃ?」

「だーかーらー、俺は1年の時から気になってたの! すげー可愛い子がいるって噂になってたから見てみたらマジで可愛いすぎてビビって、目で追うようになって気が付いたら好きになってた」

「それ、絶対私のことじゃないでしょ!」


 可愛いなんて須賀君とマキちゃんにしか言われたことないのに、一体誰の話をしているのだとムっとすると、須賀君が盛大に溜息を吐いた。


「いや、リナのことだから。これだから天然は……いや、そこも可愛いんだけど。とにかく俺はリナ一筋だからね!」

「ふぅん」

「信じてないな? じゃあお仕置きしちゃおうかな?」

「へ?」


 いきなり出てきた「お仕置き」の単語に私が目をパチパチさせると、須賀君が満面の笑みを浮かべた。


「デパートでキスするのと、大学でキスするのどっちがいい? あ、勿論どっちも公衆の面前でね」

「どっちも嫌!」

「全く、俺の彼女は我儘だなぁ~」

「普通です!」

「じゃあ、この部屋で俺に監禁されるのと、俺の部屋で監禁されるのどっちがいい?」

「え? 換金? 須賀君って質屋さんなの?」

「それは、どうかなぁ。まぁ、リナが俺から離れて行かない限りは監禁するつもりはないから安心していいよ? はい、約束の証」


 クククと嬉しそうに笑った須賀君は、キャビネットの上に置かれたままだった指輪を私の指に嵌めて蕩けるような笑顔を見せた。


R15のタグは不要でしたね…。

最後までご高覧くださり、ありがとうございました。

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