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蒼雷の高翔  作者: 氷華 青
12/31

勝利と諦観

放課後。一緒に帰ろうと言ってくれた友人の誘いを心を痛めながら断り、僕は教室に残った。同じく、教室に残っていた風花も、少し心を痛めているようだったが、僕ら以外の最後の一人が教室を出ると、何かを決心したように、こちらを向いた。

「あのね、天。私………天のことが好きです。だから、もし、良ければ………つ、付き合ってください!」

僕は、心を打たれて、暫く何も言えなかった。そして、頭が思考という武器を取り戻す前に、妙に落ち着いた声で、僕は言ったのだ。

「僕も、風花のことが好きだ。また、よろしく!」

「うん!」

その後、彼女に抱きつかれた僕は、取り戻しかけていた思考回路をショートさせかけた。

風花は今日、クラブがあるそうなので、先に教室を出て行った。

僕も、声に置いていかれた気を落ち着かせ、少し後に、教室を出た。廊下に、煌輝がいた。

「風花、幸せにしろよ」

「もちろん。僕は、彼女も君も、悲しませない」

「そう、それがお前だ。青澤天だ。期末テストも、頼りにしてるぜ。もちろん、俺はお前に勝つけどな!」

「ああ!」

拳を思い切り突き合わせ、大分痛かったが、ここは我慢。この最高のクラスで、次は何が起きるのだろう。




拳を思い切り突き合わせ、めちゃくちゃ痛かったが、ここは我慢。あいつなら、天なら、風花を幸せにできると確信している。

さて、今日はサッカー部の練習をサボり、川辺で新技の練習だ。チャリを漕いで、15分で河川敷に着いた。

「スカーレットゾーン!」

魂の炎が、だんだん外側に出てくる感覚。それは服や肌を燃やすことなく、胸や腕、それから脚に実体化する。だが、これでは松明にも劣る。もっと、大きな火を。




体育祭から数日後の放課後。アドバンスクラスの教室で、アドバンスクラス総員がクラブにも行かずに集まっている。

「皆、期末テストは二週間後である。今から対策をしておかねば、中間テストのような、僕以外全滅するという事態になりかねん。わからぬことは、国語、社会なら僕か緋空に、数学、理科なら数野か砂田に、英語なら姫路か速水に聞け」

これは勉強会。これから、週に一度開くことにするつもりだ。ここから皆を強化すれば、アドバンスクラスは一人も犠牲者を出さず、圧倒的強さをスタンダードクラスに見せつけることができる。

「青澤天。僕は貴様には負けない」

『代わってくれ。俺にリベンジさせてくれ』

誰かが音無き声で言った。




俺は、誰だ?いや、俺は、確かに智楯槍都だ。なら、俺の体を動かしているこいつは、誰なんだ?こいつが本当の俺?そんなことはないと信じたい。

「なあ、誰だか知らないが、代わってくれ。青澤天や織田綾音に、リベンジしたいんだ。お前じゃなく、俺に、リベンジさせてくれ!」

この声は、届いただろうか。もしかして、前に聞こえていた音のない声は、こいつの声だったのか?きっとそうだ。どんなタイミングで、入れ替わるのだろうか。わかるまではまた、眼を閉じていよう。




いよいよ暑さも真っ盛りになってきた、今日この頃。

「あっぢぃー」

と、潮。

「それなー」

こちらは、昇輝。練習中は、体育館はサウナを通り越して、蒸し地獄だ。

「でもな、ほれ」

潮がタオルを持つ。すると、乾燥タオルはみるみるうちに濡れタオルになった。

「すげえー!」

「あー、いと涼し」

「急に古典!?」

やっぱり僕はツッコミに回ってしまう。

「よし、じゃあ、今からゲームで」

キャプテンの神鳥(かんどり) 翔飛(しょうと)先輩だ。ホルスの能力を持つらしい。見たことはないが。

「翔飛、久しぶりに能力戦やろーぜー」

副キャプテンの花川(はなかわ) 鷲一(しゅういち)先輩が、翔飛先輩に能力戦を申し込んだ。鷲一先輩は、トトの能力を持つらしい。少し、覗いてみることにした。

「ラブオール、プレイ!」

サーブは翔飛先輩。上手いが、変わった点は無いように見えた。しかし、違った。

「おわっ!」

シャトルをとった鷲一先輩のラケットが、跳ね飛ばされた。

「タービュランスサーブ」

「ワン、ラブ、神鳥」

「やっぱ、先輩は違うな」

横で見ていた潮も言う。そう、サーブからして、違うのだ。

次の翔飛先輩のサーブも、タービュランスサーブだった。しかし、一ポイント前と違ったのは、鷲一先輩がそれを返したことだ。

「イーグルロブ!」

高く上がったロブは、獲物を見つけた鷲のような勢いで、急降下した。しかし、翔飛先輩はその弾道を、ずっと前から見据えていた。

「フェニックスライズ!」

僕の、ル・ヴォル・ブレケラヴノスを超える高翔だった。

「スマッシュ・オブ・リヴァイヴ!」

「トゥー、ラブ、神鳥」

スマッシュは、僕の雷霆スマッシュの比ではなかった。それにしても、あんな速いシャトルを、どうやってスイートスポットに当てたのだろうか。

「フェニックスアイだよ」

僕の心を読んだように、蛇野(へびの) 恭牙(きょうが)先輩が言ってくれた。

「翔飛の眼、最初は黒だったけど、今は深緑色だよね?」

「ああ、そうですね」

「それが証拠だ。今、翔飛は、鷲一のショットの五打先までを視ることが出来ている。だが、鷲一にも同じような能力があるんだ。ただし………」

「オーバー、ワン、トゥー」

「ただし、何ですか?」

「ただし、鷲一の眼、アナラシスアイは、三打先までしか視ることが出来ない。だが、鷲一は鷲一で、瞬間の判断がトトの能力で最大限に引き出されている」

「なるほど。勝負は互角というところですか」

「ああ」

鷲一先輩のサーブ。

「イーグルサーブ!」

的確なコントロールで手前のラインギリギリに。しかし、その手を読めている翔飛先輩はしっかり返す。バックハンドでの、強力なプッシュだ。

「エターナルレイピア!」

クロスに急角度で。しかし、鷲一先輩はそれを返す。でも、僕が言うのもなんだけど、甘かった。もう一度エターナルレイピアを打たれて、シャトルはコートに着いた。

「オーバー、スリー、ワン」

能力戦だけをやっているわけにもいかないという理由で、ファイブポイントマッチのこのゲーム。もっと見たかったけど、自分の試合の番が来たので、見ることはできなかった。

最初は潮とのファイブポイントマッチだった。結果は、一対五。潮も高校から始めたのに、もうこんなに差が生まれている。どうすればもっと上手くなれるんだろう。まだ、僕は諦めない。まだ二年あるんだから。次もファイブポイントマッチだった。相手は、ネイビークラスの神山(かみやま) 雪薙(せつな)君。彼は、本当は一部リーグだけど、今日は特別に対戦してもらった。雪薙君は、本気でやってるわけじゃないのに、ついに僕は零対五で負けてしまった。その後も何回かゲームをしたが、結局一回も勝てなかった。これは僕の持論だが、僕はバドミントン部で邪魔者なのではないかと最近思う。弱いくせに、五月蝿いし。だから、早く邪魔者から抜け出す為に、とにかく練習を頑張ろうと思っている。邪魔者だからといって、クラブを辞めようとは思わない。諦めたら、終わりだ。翔飛先輩と鷲一先輩の試合は、翔飛先輩の勝利で終わったそうだ。練習が終わり、家に帰って、宿題や入浴をして、ベッドへ。そのとき、ある言葉を思い出した。僕はそれを呟く。

「Winners never quit, quitters never win」

勝つ者は諦めない。諦めない者は勝つ。バトミントンのウェアに書いてあった文字だ。しっかりと心に刻み込み、僕は眠りについた。

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