課題と勇気
体育祭当日。走り幅跳び、走り高跳び、借り物競走、騎馬戦。色々な競技が過ぎ、次は100m走。ちなみに、能力を使うことは自由だ。だから、騎馬戦において夕辺と潮は圧勝した。100m走は、白熱した。たかが20秒弱の時間だが、風花は元から早く、しかも追い風に乗るというほぼ反則のような形で圧勝した。続いてのリレーでは、煌輝のニトロエンジンの甲斐もあり、二位だった。そして最後は、コロッセウムだ。サポーターの風花を探す。しかし、僕には見つけられなかった。そう言えば、昨日サポーターのリハーサルはなかった。これは一体、どういう事だ?
「さあ、最後は全国でもここだけの競技、コロッセウムです!課題は、『サポーターを救え!』今日専用に作った人口湖の底に、サポーターがいます。出場者の皆さんはそれぞれ『自分のサポーター』を救ってください!ちなみに、サポーターの皆さんは、硬い成分でできた手錠と足枷で動けなくなっております!それを解いてあげてから、湖の外に自分と自分のサポーターが出たら勝ちです!サポーターの皆さんは水中呼吸薬を飲んでいるため、三十分は水中でも呼吸ができます。しかし、三十分を超えたら━━━。どうなってしまうのでしょうか!?さぁ、そうなる前に、救ってあげてくださいね!それでは、コロッセウム、スタート!」
なんて競技だ。教員の中に、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』にでもハマった者がいるのか?
「天ぅぅぅう!」
煌輝の声が聞こえる。観客席を見上げると、立ち上がっている彼が見えた。
「小鳥遊に、風花になんかあったら、許さねぇぞ!」
僕はその声に、心を奮わせた。そして、彼に向かって拳を挙げた。
「おう!任せろ!!」
僕は叫んだ。僕の胸に、火が点った。そして、みんなもう潜っていることに気づく。自らの体を、電磁波に乗せて、細胞レベルで送る。「テレボルテージミクロ(10,超高速移動)」(青澤天、残り422点)。一気に風花のところへ。
「天、助けて!」
「わかった。動かないで」
「うん」
「雷霆スマッシュ(15,150)!」(青澤天、残り407点)
よし。一つ切れた。しかし、息がもたない。とりあえず、トランスミッション(5,情報伝達)で『ちょっと息を整えてくる』と風花に送る(青澤天、残り402点)。そして、テレボルテージミクロ(10,超高速移動)で水面へ(青澤天、残り392点)。そして、十秒後、もう一度テレボルテージミクロ(10,超高速移動)で湖底へ(青澤天、残り382点)。
「雷霆スマッシュ(15,150)!」(青澤天、残り367点)
「あれ?切れてない!」
「マジかよ。なら………雷霆スマッシュ改(35,500)!」(青澤天、残り332点)
「切れた!ありがとう!」
「早めに上がろう」
「うん」
「テレボルテージミクロ(10,超高速移動)」(青澤天、残り322点)
「片倉さん、すまん、俺の能力では切れやん!」
「日本橋!やべぇ、切れねぇ!」
水面から顔を出して、同じく顔を出した風花に、僕は言った。
「先に上がってて。後で絶対、上がってくるから」
今日は僕は、ハリー・ポッターになってやろう。テレボルテージミクロ(10,超高速移動)。(青澤天、残り312点)
「青澤………?小鳥遊はどうしたんや?」
トランスミッション(5×2,情報伝達)。(青澤天、残り302点)『先に上に上がってて。片倉さんと日文は僕が助ける』と伝える。
『わかった。頼んだ、青澤!』
二人とも、呼吸が危なかったようだ。半ば溺れそうになりながら、すごいスピードで上がっていく。そして、もうすぐ開始三十分。
「雷霆スマッシュ改(35,500)!」(青澤天、残り162点)
四回使って、二人とも助ける。
「青澤君、ありがとう!」
「天、感謝」
僕が上がって行った時には、もう全員揃っていた。
「さて、ここで青澤君が上がってきました!これより、順位発表に移ります!一位、アドバンスクラス、おめでとうございます!二位、クリムゾンクラス!三位、スカイブルークラス!四位、ビリジャンクラス!五位、ネイビークラス!六位、パープルクラス!七位、ピンククラス!」
そうだ。体育祭であることをすっかり忘れていた。これでは、クラスメイトに顔向けできない。
「天………いや、でも、これでよかったんだよ!みんな無事だし!」
「ごめん………。良く考えれば、先に上がっとくべきだったんだ。僕の独断でクラスが負けた。いくら謝ったって足りないよ」
「ただし!ピンククラスの出場者、青澤天君は、ネイビークラス、パープルクラスのサポーターも救いました。彼のこの勇気ある行動に、追加点を付与します!彼は今日のベストヒーローです!」
まさかの事態だった。こんな、小説みたいなことが起きるんだ。いや、能力を使える時点で小説みたいなんだけど。ピンククラスは、全種目で二位だった。力を合わせるのって、楽しいな。次のコーラス大会では、優勝したいところだ。
「天、今日の放課後、上手いこと教室に残れる?」
「いいけど、なんで?」
「それは秘密!じゃあ、お願いね!」
風花の顔はあのときと同じように紅潮していた。




