自分の弱さ
「率いている少女は、僕達が出会った魔王とは違う人のようですね。ここからだと顔はよく見えませんが、それでも全然違うのは分かります」
え? 悠馬、貴方は何を言っているの? そもそも率いてる少女って、そんなのどこにいるのよ。そもそも私は、足音しか分からないわ。姿が、見当たらない。
「陽香さん、本当に能力はないようですね」
どうゆうことよ、意味が分からないわ。悠馬はただ、ただ微笑んでいる。腹立つのよね、こうゆうの。
「追いますか?」
ええそっちの方が、築田村よりも魔王に近付く気がするもの。
「追うわよ」
休憩も十分したし、全速力で追い掛けるわ! まあ私には、足音しか分からないのだけれどね。
「陽香さんに姿が見えないのなら、僕が案内するんで着いて来て下さいね」
私にそんな事を言うなんて、貴方何様なの? ホント有り得ない、有り得ないわ。
「仕方がないわね、分かったから早く行って頂戴」
慎重に進めるとか、凄いめんどくさい。堂々と着いて行ったって、別に偶然だと思うに決まってるじゃないの。偶然、気のせい、それだけで終わりよ。だってあいつらは、私達に姿が見えていないと思っているのでしょう? まあ私は、実際見えてないんだけど。
「あまり目立つことはしないよう、気を付けて下さいね? 今度は僕達が、殺される番かもしれないんですから」
殺される? 殺される? 殺す、殺す。殺・殺・殺。死死死死死死死、助けて。
「目立つことと言われても、どうすればいいのか分からないわ」
だって私に、相手の姿は見えていないのだから。貴方みたいに見えているならいいかもしれないけど、見えないと全然分かんないもん。気配も足音も、距離感が掴めないし。本当に相手の場所が、分からないんだもの。
「何もしなければいいのです。行動は僕がします、ただ着いて来て下さるだけで結構ですよ」
ついて行くだけ? それはつまり、私なんてその程度ってこと!? その通りなのは分かってる、悔しいけど私よりも悠馬の方が強い。
でもね、でもね! 嫌なのよ、私の性格じゃ受け入れられないわ。
「分かったわ、ついて行けるように努力する」
嫌なの、負けを認めてしまいたくない。怖い、怖い。怖いから、一番になりたいの。自分より弱い人の中で、勝利に浸っていたいの。ええ、私はそんな奴よ。