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氷の貴公子(生徒会長)、貧乏令嬢の一挙一動に毎日心臓が爆発しそう。〜照れたら負けの【赤面決闘】を挑まれていますがもう限界です〜  作者: 杜英智
聖女、現る(前編)

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第18話 聖女の猛攻

読みに来てくださってありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ。

第18話 聖女の猛攻


「それではぁぁぁぁーーーーっ!!」


「魔導決闘ぉぉぉぉーーーーっ!!」


「始めぇぇぇぇぇーーーーっ!!」


ゴォォォン!!


開始の鐘が鳴り響く。


クララ様は両手の甲を私へ向ける。


そこには、


直径三十センチほどの鋼鉄の輪。


その外周には、六枚の鋭い刃が等間隔に取り付けられている。


両手に一つずつ、鋼鉄の輪が装着されていた。


「でたぁぁぁーーーっ!!」


「両手に装着された魔導武器――『聖輪』!!」


「六枚の鋭い刃が、獲物を狙うように構えている!!」


「決闘用に威力は制限済みだ!」


「だが、直撃すれば激痛は免れないぞぉぉ!!」


「そしてぇぇぇぇぇ……」


マックス先生が叫び続ける中、


「起動。」


クララ様は静かに告げる。


シャリン……


シャリン……


キィィィィン――。


聖輪が、高速で回転を始めた。


「聖輪、起動ぉぉぉぉぉっ!!」


「回ったぁぁぁぁぁーーーっ!!」


「聖女の魔力を受けた六枚の刃が高速回転!!」


「さあセレナ選手、この難敵をどう攻略するぅぅぅぅっ!?」


「なっ……!?」


私は思わず目を見開く。


(回転する武器ですの!?)


観客席から歓声が上がる。


「出た!」


「初めて見たぞ!」


「クララ様の武器だ!」


「聖女様って武器も使えるの!?」


「すごい……!」


私は思わず叫んだ。


「私も何か武器を持ってくればよかったですわーーーっ!!」


観客席からどっと笑いが起こる。


「そこかよ!」


「セレナ様らしい!」


クララ様は私を静かに見つめる。


その瞳には、余裕があった。


「本来は、飛ばすこともできますわ。ですが、決闘では飛ばせないよう制限されています」


飛ばせなくて助かりましたわ!!


あんなものが飛んできたら、絶対に避けられませんもの!!


「エヴァンスさん。」


「あなたが決闘を受けてくださって、本当に良かったですわ。」


「え?」


私は首をかしげる。


クララ様は、口元だけをわずかに緩めた。


「あなたは今、学院で最も注目されている方。」


「そんなあなたに勝てば、今度は私に注目が集まりますもの。」


「注目されれば、私の人気もさらに高まりますわ。」


「人気は力です。」


「その力があれば、救える人も増えますのよ。」


「ですから――。」


聖輪がゆっくりと構えられる。


「ここで負けていただきます。」


私を利用するおつもりですの?


でも……。


(私だって負けられませんわ!!)


私は拳を握る。


「私も同じです!」


「クララ様に勝てば、グランベルカードに近づけますもの!」


「絶対に負けませんわ!」


「参ります。」


次の瞬間。


ドンッ!!


地面が砕けるほどの勢いで、クララ様が一気に距離を詰めてきた。


(速いっ!!)


「《アースウォール》!」


私は反射的に土壁を作った。


ガギィィン!!


聖輪が激しくぶつかり、土が大きくえぐれた。


(重い……!)


なんて威力ですの!?


「まだこれからですわ。」


クララ様は続けざまに聖輪を振るう。


ガガガガガン!!


土壁が次々と削られていく。


私は必死に後ろへ飛び退く。


防ぐだけで精一杯ですわ!


でも……。


土壁は通用しています!


「おおっとぉぉぉーー!!」


マックス先生の実況が響く。


「セレナ・エヴァンス選手、防戦一方だぁぁぁーー!!」


「クララ・ド・ベルモン選手の猛攻が止まりません!!」


「セレナーー!!」


キリル王子が身を乗り出した。


「無理するなーー!!」


「危なくなったら棄権しろーー!!」


「お前はもう十分頑張ってるぞーー!!」


私は答える余裕もない。


ご、ごめんなさい……。


今は返事をしている暇がありませんわ……!


クララ様は静かに右手を掲げた。


「《聖光雨》!」


上空へ無数の光が浮かび上がる。


「えっ……?」


次の瞬間。


無数の光の矢が雨のように降り注いだ。


「きゃあああっ!」


「《アースウォール》!」


私は慌てて土壁を何重にも作った。


ドドドドドドドッ!!


激しい音が闘技場へ響き、砂煙が一気に舞い上がった。


マックス先生が魔導拡声器を握りしめ、大声で叫ぶ。


「おおっとぉぉぉぉーーーー!!」


「クララ・ド・ベルモン選手ぅぅぅーー!!」


「容赦ない猛攻だぁぁぁぁーー!!」


「対するセレナ・エヴァンス選手ぅぅぅーー!!」


「土壁で耐える! 耐える! 耐えるぅぅぅーー!!」


「防ぐので精一杯だぁぁぁーー!!」


キリル王子は拳をぎゅっと握り締め、思わず身を乗り出した。


「おいっ!!」


「少しは手加減しろーーー!!」


「そんな攻撃、本気すぎるだろーーー!!」


アルベルト様は黄金の瞳を細め、静かに戦況を見つめていた。


私は息を切らしながら、土壁の陰へ身を隠した。


まだですわ……。


焦っては駄目。


それに、攻撃したくても届きません。


アルベルト様は、クララ様の武器が『弱点にもなり得る』とおっしゃっていました。


私は土壁の隙間からクララ様を見つめる。


(武器に弱点が?)


クララ様の猛攻は、なおも止まる気配がなかった。


あの、美しい武器のどこかに…。


私は必死に目を凝らした。


「《聖光雨》!」


光の矢が放たれる。


クララ様は聖輪を引き戻すと、再び構えた。


その一連の動きは、まるで舞を見ているように美しい。


(……!)


今の動きは……!


聖輪は圧倒的な威力を誇りますが、あの大きさですもの。


聖輪を大きく振り抜いた、その直後。


次の攻撃へ移るまで、ほんの一瞬だけ動きが止まる。


ほんの一瞬……。


でも、それで十分ですわ。


私は深く息を吸い込む。


クララ様が、聖輪を大きく振り抜いた。


(今だ!!)


「《 スカイ・グレートソード》!!」


クララ様の頭上へ、巨大な岩の剣が次々と現れる。


それらは一斉に切っ先を下へ向け――


ドドドドドッ!!


凄まじい勢いで降り注いだ。


「…………」


クララ様は焦る様子もなく、両手の聖輪を優雅に頭上へ掲げた。


ガギィィィン!!


岩の剣が次々と砕け散る。


(次ですわっ!!)


私はすぐさま左手を振る。


「《アースバレット》!!」


地面から大小の土弾が次々と飛び出し、真横からクララ様へ襲いかかる。


「!」


クララ様の瞳が、ほんのわずかに見開かれた。


私はさらに土弾を撃ち込む。


「《アースバレット》!!」


ドドドドドッ!!


土弾が次々と地面をえぐり、激しい土煙が巻き上がる。


「おおっとぉぉぉーー!!」


マックス先生が絶叫した。


「セレナ・エヴァンス選手、反撃だぁぁぁーー!!」


「頭上を囮にして、横から追撃ぃぃぃーー!!」


観客席から歓声が上がる。


「今の上手い!」


「決まるか!?」


しかし――


「《聖壁》」


静かな声が響いた。


ブォォォン!!


まばゆい光の壁が、クララ様の前に立ちはだかる。


ドドドドドッ!!


殺到した土弾が、光の壁へ次々と弾かれていく。


土煙が晴れる。


そこには、傷一つないクララ様が立っていた。


「防いだぁぁぁーー!!」


「クララ・ド・ベルモン選手、完璧な対応だぁぁぁーー!!」


「くっ……!」


私は思わず歯を食いしばる。


防御まで完璧……。


これが、クララ様……!


簡単には届きませんわ……。


クララ様は静かに私を見つめた。


「今の攻撃……。」


「私が振り抜く瞬間を狙いましたのね。」


私は黙って頷く。


クララ様の口元が、ふっと緩んだ。


「思っていたより、やりますのね。」


「ですが――。」


キィィィィン――。


二つの聖輪がさらに速く回転を始める。


「ここからは、さらに本気で参ります。」


「え……?」


私は目を見開いた。


「ま、まだ本気ではありませんでしたのーー!?」


「当然です。」


クララ様は涼しい顔で答える。


「私は勝つために戦っています。」


「相手の力量を見極めることも、戦いの一つ。」


マックス先生が叫ぶ。


「クララ・ド・ベルモン選手、まだ本気ではなかったのかぁぁぁーー!!」


「セレナ選手、大ピンチだぁぁぁーー!!」


キリル王子が立ち上がる。


「おいおいおいっ!」


「まだ強くなるのかよーーーっ!!」


実況席では、アルベルト様が黙ったまま、


その黄金の瞳で、まっすぐ私を見つめている。


そして、彼の静かな声が届いた。


「エヴァンス嬢、今の攻撃を忘れるな。」


「諦めなければ、必ずチャンスは来る。」


その一言が、不思議なくらい胸に響く。


「……はい。」


アルベルト様。


私は、まだ戦えますわ。


キィィィィン――。


両手の聖輪が、先ほどよりもさらに強い光を帯び始める。


空気が震えた。


思わず息をのむ。


その瞬間だった。


ドンッ!!!


地面が震えた。


クララ様が一歩踏み込む。


「速っ――!」


気づいた時には、もう目の前だった。


ブォンッ!!


聖輪が唸りを上げる。


「《アースウォール》!!」


ドゴォォン!!


展開した土壁が、一撃で砕け散る。


「きゃあっ!」


衝撃で体が宙を舞う。


受け身を取って着地したものの、腕が痺れる。


(重い……!)


さっきまでとは威力が違いますわ……!


休む間もない。


二つ目の聖輪が迫る。


「《アースウォール》!!」


ドゴォォン!!


また砕かれる。


三枚目。


四枚目。


五枚目。


作っては壊され、作っては壊される。


土煙が舞い上がり、闘技場中が激しい衝撃音に包まれた。


「すげぇ……。」


観客席の誰かが呟く。


「あれだけ防いでるぞ……。」


「普通なら、とっくに終わってる。」


マックス先生も思わず声を張り上げる。


「セレナ・エヴァンス選手! 本気になったクララ・ド・ベルモン選手の猛攻を、必死に耐えておりますーー!!」


「まだ倒れないーー!!」


私は震える手をぎゅっと握り締めた。


足は震え、思うように力が入らない。


魔力も、もう底が見えている。


それでも――。


まだですわ。


まだ、終われません。


歯を食いしばり、震える足に力を込める。


こんなところで終わったら――。


来月はどうなるんですの?


お父様は。


お母様は。


そして、私の学院生活も――。


すべて、終わってしまいますわ。


絶対に、負けられません。


「……私はどうしても。」


「グランベルカードを手に入れなくてはなりませんの!!」


私はクララ様をまっすぐ見据えた。


その瞳から、決して光は消えない。


クララ様は、その姿を静かに見つめる。


「…………」


(これほど力の差を見せても。)


(その瞳は、まだ諦めていない。)


(……それどころか。)


(追い詰められるほど。)


(その輝きは増していく。)


キィィィィン――。


シャリン……


再び聖輪が構えられる。


私は一歩、踏み出した。


攻撃が届くまで


何度でも挑んで見せます。


私は――。


絶対に諦めません!!!


クララ様は、セレナという存在を静かに見つめていた。


その瞳にあった絶対的な余裕は、もうなかった。


【聖女、現る(前編)・3】

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


【投稿スケジュールです】

毎日更新(平日朝7:50/土日祝夕方16:50)予定です。

ぜひお楽しみください!


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次回もよろしくお願いいたします。

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