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氷の貴公子(生徒会長)、貧乏令嬢の一挙一動に毎日心臓が爆発しそう。〜照れたら負けの【赤面決闘】を挑まれていますがもう限界です〜  作者: 杜英智
赤面決闘の幕開け

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第1話 告白は、決闘の始まり

読みに来てくださってありがとうございます。


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ。

第1話 告白は、決闘の始まり


「アルベルト・フォン・グラナート様!」


「私と――『赤面決闘』を申し込みますわ!」


昼休みの渡り廊下に、私の声が響き渡る。


前方を歩いていた銀髪の青年が、ゆっくりと足を止めた。


振り返った黄金色の瞳が、まっすぐ私を捉える。


「……また君か」


低く、地を這うような冷徹な声。


その整った顔には、今日もピクリとも表情がない。


彼こそがこの学院の頂点、


実力ランキング第1位の4年生、特待生クラス主席。生徒会長にして、公爵家の嫡男だ。


その冷徹な美貌から、彼はいつしかこう呼ばれるようになった。


「氷の貴公子」と。


ひそひそと囁く女子生徒たち。


「あれはAクラス、実力ランキング第2位3年生のセレナ様よ!」


「またアルベルト様に挑むの? 懲りないわねぇ」


クスクスと笑う。


だが、私にとっては死活問題なのだ。


ここは、グランベル魔導学院。


王国最高峰の魔導士を育成する、実力主義の名門校。


貴族も平民も関係ない。


魔導決闘では、実力さえあれば上位の相手に挑むこともできる。


身分ではなく、実力こそがものをいう学院だ。


そして、この学院には――


もう一つ、


古くから続く少し変わった決闘がある。


その名も『赤面決闘』。


どのような手段であれ、先に相手を「赤面(照れ顔)」させた方が勝ち。


そして、学年主席のアルベルト様だけが持つ


『グランベルカード』を勝ち取れば、なんと一ヶ月分の学費が全額免除される!


(今月中にあのカードを奪わないと、我が貧乏男爵家は破産……私は強制退学ですわ!) 


(絶対に負けられません!)


今日。


私は、とっておきの作戦を考えてきた。


今までの作戦は全部失敗……。


だったら今回は――


私は小さく拳を握る。


(恋する女の子になりきる!)


胸がドキドキする。


これは勝つための演技。


そう自分に言い聞かせながら、一歩ずつアルベルト様へ近づいた。


その瞬間――


カーン!!


澄んだ鐘の音が廊下に響き渡る。


『赤面決闘、開始!』


「アルベルト様」


彼は無表情のまま私を見下ろす。


相変わらず、綺麗な顔。


その黄金色の瞳と目が合った瞬間、心臓が跳ねた。


だ、大丈夫……演技なんだから……!


私は制服の裾をぎゅっと握り締める。


「私……」


喉が震える。


これは決闘。


演技に集中!


「私、アルベルト様のことが……好きです」


廊下が、水を打ったように静まり返った。


「えっ……」


「告白……?」


周囲の生徒たちが息を呑む。


私は勇気を振り絞って、彼を見つめ続けた。


(赤面してくださいませ!)


「……すまない。今はその気持ちに応えられない」


アルベルト様は、眉一つ動かさずに言い放ち、私の横を通り過ぎていった。


ん?足元が微かにフラついていたような……?


いえ、気のせいですわね。


(ああ、今日もダメでしたわ!)


カーン! カーン! カーン!


『赤面決闘、終了。


防衛成功。


勝者、アルベルト・フォン・グラナート』


私はその背中を見つめたまま立ち尽くした。


「また……勝てませんでしたわ」


渾身の作戦だったのに。


「次こそは……絶対に赤面させてみせます!」


悔しさをごまかすようにそう呟き、私は廊下を駆け出した。


生徒たちは私の後ろ姿を見送りながら、ひそひそと話している。


「あーあ、セレナ様また負けちゃった。これで10連敗?」


「でも不思議よね。赤面決闘って、勝ったら相手のランクカードを奪えるルールじゃない?」


「そうそう。生徒はみんな、クラスごとのカードを1枚持ってる決まりだものね」


「なのにアルベルト様、セレナ様に勝っても、一度も彼女のカード(80ポイント)を奪ったことがないらしいわよ?」


「ええっ!? 慈悲深いのかしら?」


「さあ? ただ単に最上位のグランベルカード(100ポイント)を持つ彼からしたら、下のカードなんて興味がないだけじゃない?」


「カードを取られない限り、セレナ様は月に何度でもアルベルト様に挑戦できますわね」


私は歩きながら、ふと思う。


今日も負けてしまいましたけど、


また明日も、アルベルト様に挑戦できる。


「ふふっ、次こそは絶対に勝ってみせますわ!」


◇(アルベルト視点)


バタン!!


静まり返った生徒会長室の扉が、凄まじい勢いで閉まる。


「ぐっ……!」


アルベルトは扉にもたれかかったまま胸を押さえ、その場に膝をついた。


「閣下!?」


ライナーが慌てた様子で駆け寄る。


アルベルトの顔は耳まで真っ赤だった。


「可愛い……」


「はい?」


「可愛すぎる……!」


天井を仰ぎ、大きく息を吐く。


「『好きです』だぞ……?」


「あんな真っ直ぐ見つめられて……」


「平気でいられる男など、この世に存在するのか……?」


ライナーは呆れたようにため息をついた。


「でしたら、お受けすれば良かったのでは?」


アルベルトは力なく首を横に振る。


「違う」


「……あれは決闘だ」


「あの告白は、本心ではない」


胸の奥が少しだけ痛む。


「彼女が私に何度も挑んでくるのは、グランベルカードが欲しいからだ。」


「だが。」


「学費免除になれば、その月はもう、私を追いかけてこない。」


「……それが、一番困る。」


ライナーは静かに主人を見つめる。


「それでも、嬉しかったのでしょう?」


「……ああ」


アルベルトは苦笑した。


「人生で一番、嬉しかった」


照れくさそうに目を伏せる。


やがて、小さく息を吐いた。


「……私は、これから彼女に勝ったとしても、彼女のカードは取らない。」


「……?」


「自分のカードを持っていれば、何度でも赤面決闘ができる。」


「今、この学院でグランベルカードを持っているのは私だけだからな。」


「だから、カードを取らなければ……」


アルベルトは、静かに目を伏せる。


「彼女はこれからも、私に挑み続ける。」


「……それでいい。」


ライナーは小さく息をつく。


「……つまり、セレナ嬢が閣下のもとへ来る理由を、わざと残しておくと?」


ライナーの問いに、アルベルトはわずかに目を伏せた。


「……ああ」


「彼女が私を追いかけてくれる限り――」


ほんの少しだけ、口元が緩む。


「私は、彼女に会える」


ライナーは思わず額に手を当てた。


「待つだけでは、何も始まりませんよ」


アルベルトは咳払いを一つ。


「……分かっている」


そう言いながら、書類へ視線を落とす。


けれど。


その横顔には、どこか満足そうな笑みが残っていた。


◇


その夜。


何も知らない私は、自室のベッドへ倒れ込んでいた。


「うう、今日もダメでしたわ……!」


枕に顔を埋めて足をバタバタさせる。


ですが、落ち込んでいる暇はありません。


カードを奪って学費を免除させないと、我が家は本当にピンチなのですから!


「言葉の告白が効かないなら……


次は『胃袋』を掴みますわ!」


私はガバッと飛び起きた。


「名付けて、手作りお弁当作戦です!


男の人はみんな、女の子の手料理に弱いと本に書いてありましたもの。


明日こそ、絶対に真っ赤に照れさせてみせますわ!」


こうして、学費のために命をかける貧乏令嬢と、


彼女を逃がしたくない氷の貴公子の、


絶対に負けられない『赤面決闘』は幕を開けたばかり。


【赤面決闘の幕開け・1】


ご覧いただきありがとうございます!


氷の仮面の下で、毎日限界を迎えているアルベルトと、

学費のために必死なセレナのすれ違いラブコメです。


次回、第2話は「手作りお弁当作戦」!


セレナの手料理を前に、アルベルト様のポーカーフェイスは保つことができるのか――!?


5話~10話までイラスト載せる予定です、その後はちらほらどこかに入ります。


【投稿スケジュールです】

毎日更新(平日朝7:50/土日祝夕方19:50)予定です。


ぜひお楽しみください!


「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります!


次回もよろしくお願いいたします。

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