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【応仁の乱編】第十四段 下剋上の兆し

【応仁の乱編】第十四段 下剋上の兆し


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十一年の乱を見届けた今、我の胸にあるのは、安堵ではなく、むしろ深い胸騒ぎだ。

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篁様へ申し上げ候。

此度、下界にて見届け候仔細、左の如くに候。

乱は収まり候えども、下界の有様、乱前とは似ても似つかぬものと相成り候。守護大名ども、京での戦に明け暮れし間に、その領国にては、家臣たる守護代・国人どもが実権を握り始め候由に候。中には、主を差し置きて国を乗っ取らんとする者すら現れ始め~~~~~~~

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現代語訳

篁様、報告します。

今回見たことを書いておきます。

乱は収まりましたが、下界の様子は乱前とはまるで違うものになってしまいました。守護大名たちが京都での戦に明け暮れている間に、その領国では家臣である守護代や国人たちが実権を握り始めているようです。中には、主人を差し置いて国を乗っ取ろうとする者まで現れ始めています。

こういう下剋上――下の者が上の者を凌ぐ振る舞い――は、この乱より前にはそれほど目立たなかったことですが、幕府の権威が地に落ちた今、各地で堰を切ったように広まりつつあるように見えます。将軍の名前すら、もはや誰の心にも重く響かない様子です。

私が見るところ、この乱の本当の意味は、東軍が勝ったか西軍が勝ったかではなく、「上の者が上であるという道理」そのものが崩れ去ったことにあると思います。この先、家柄よりも実力がものを言う世が来るのではないかと、私には妙な確信めいたものがあります。

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思えば、この十一年で我が見てきたものは、一つの秩序が音を立てて崩れていく過程そのものだった。この先、崩れた秩序の隙間から、いったいどんな者たちが名乗りを上げてくるのか。家柄も血筋も持たぬ者が、実力一つで名を上げる――そういう世が来るのだとしたら、我はこの目でそれを見届けねばなるまい。

篁様への務めを賜りてより、早いもので百六年。この百六年で、我は一つの秩序が音を立てて崩れていく様を、これでもかというほど見せつけられてきた。

この乱で崩れた秩序が、この先どこまで広がっていくのか。楽しみと言うには不謹慎かもしれぬが、少なくとも、退屈はしなさそうだ。




兼好法師の黄泉報告書【応仁の乱編】

--完—


兼好法師の黄泉報告書【下剋上編】へ続く


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