番外編 セレナの野望③ 通信
「移動に関してはすでに自動車を手掛けてるから省くね。最後に通信だ。今はどうやって言葉を遠い相手に届けてる?」
「そんなもの、手紙があるだろ。急ぐ場合は、我が国の誇る快速の伝令鳥を使うに決まっているだろう!」
セレナが胸を張る。
「でも、それは届くまで時間がかかるよね?街のあちこちに、目に見えない特殊なウェーブ……つまり『電波』を放つ高い塔を建てて、国民全員に『スマートフォン(スマホ)』という掌サイズの道具を持たせたら、大陸の端から端にいる相手とでも時間差無しで声の会話ができるんだ。そう、今、ここで会議しているようにね」
「何だと!?」
セレナの頭の中で「¥」のマークが、ものすごい勢いで高速回転を始めた。
「国民が喋れば喋るほど、国にチャリンチャリンとお金が落ちる仕組み……! 人間の『誰かと繋がりたい』という孤独の心をお金に変える、究極の錬金術……!!」
セレナはついに興奮のあまり、極秘会議室の机の上に片膝を上げて、片足を乗せた。
(お前は海賊かよ!)
「やるぞ! 今すぐ国中に『うぇーぶの塔』を建てるのだ! アルド、お前が毎日その塔のてっぺんに登って、国中に電波を垂れ流し続けるのだ!!」
(いや、俺を電波塔にするんじゃねえええ!! 毎日てっぺんでチンし続けたら、俺の体が干からびちまうよ!笑)
セレナは、ギラギラと輝く目をアルドへと向けた。
「おい、アルド! 話を聞いていたらどれもこれも儲かりすぎて、どれから手を付けるべきか選べん!」
「いや、だから、初期投資がバカ高いから順番に……」
「問答無用! 電気も! ガスも! 水道も! 通信も! 全部同時に行う!!!」
「何だとおおおおお!!!?」
アルドが本日最高の間抜けな声をあげた。
「我が国の総力を挙げ、鉄をかき集め、職人を総動員し、全インフラを一斉に稼働させる! もちろん、全ての開発、監修、地獄の労働は、開発責任者であるお前、アルドが一人で兼任するのだ!」
「死んじゃう! 労働基準法とかないのこの世界!? エレナ、助けてくれ!!」
アルドが涙目で妻にすがると、エレナは満面の笑みで言った。
「頑張ってね、アルド。私、「すいどう」が早く欲しいわ。毎日温かいお風呂に入りたいの」
(防波堤決壊ーーー!! 誰か、俺に『平凡で静かな隠居生活』という名のインフラを整えてくれえええええええ!!笑)
極秘会議室に響き渡るアルドの絶望の悲鳴は、異世界の全富を裏から牛耳ろうと企む、最強の強欲姉妹の「ガハハハ!」という高笑いにかき消されるのだった。




