↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠密侍女は推し令嬢を幸せにしたい!〜推しの兄は同士ですが、何故だか私にも甘いです!?〜  作者: 九条 睦月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/64

33-2.潜入(2)

本日2回目の更新です。

 注意深く歩みを進めると、やがて甘い匂いがしてきた。目をこらすと、赤い実が見える。

 見れば見るほどラズベリーと区別がつかない。私は身を屈め、その実にそっと触れた。


(ラズベリーよりも固い。ロメロの実で間違いないわ)


 念のため、葉も一緒に採取する。それを用意した袋に入れ、上着の内ポケットに忍ばせた。そして、立ち上がって周りを窺い、危険がないことを確認する。


(うん、大丈夫。誰もいないわ)


 人の気配はしない。けれど、隠密は解かずに畑を離れる。そして、集合場所である大木へ向かった。

 そこには、ラックさんとは別の諜報部員さんがいるはずなのだ。彼に、アンリ兄様にしてもらったように踏み台になってもらって、外に脱出する手はずになっている。

 大木の場所まで戻ると、人の気配がした。私は、先ほどと同じ合言葉を口にする。


「アカ」

「ミ」


 その時だった。


「何者だ!」

「!」


 私と諜報部員さんが驚いて振り返ると、そこには一人の男が立っている。


(いつの間に!? 他に人の気配なんてなかったのに!)


 男はじりじりと距離を詰めてくる。


「逃げてください。彼は厄介です」


 諜報部員さんが小声で呟き、塀の側に行こうとする。でも、私はそれを止めた。


「ここで逃げても彼は追いかけてきます。まずは異変を知らせないと」

「何をこそこそ話しているんだ! お前、どこの間者だ?」


 男は更に近づいてくる。

 隙をつこうにも、その隙がない。ただ歩いているだけなのに、戦闘力の高さが窺えた。

 たぶん、彼が索敵のスキルを持っているだろう男だ。このまま逃げたとしても、彼の動きを封じない限り逃げ切れない、そう直感した。


(現状じゃ、私の隠密が破られたのかどうかわからない……)


 姿を現してから声がしたので、スキルの力関係はわからない。スキル発動時にも私が見えていたのか、見えていなかったのか。

 それにあの男は、自らが声を出すまでこちらに一切気配を察知させなかった。これは、とても一筋縄にはいきそうもない。

 私は意を決し、笛を吹こうとした。が、即座に遮られる。ナイフが飛んできたのだ。私は間一髪でそれを避ける。


「おかしな真似をするな。……女、お前の目的はなんだ? それに、そこにいるのは……ジョンか。数ヶ月前に入ったばかりの下男だな。お前ら、いったい何を企んでいる?」

「……っ」


 男がそう言った瞬間、諜報部員さん──ジョンさんが攻撃を仕掛ける。男がそれを躱す隙を狙い、私は思い切り息を吸い込み、笛を吹いた。そして、戦いに加わる。


「チッ! 女も戦闘員か!」

「二対一じゃ、分が悪いわねっ」


 二人がかりの攻撃にも男は対応し、向こうからも仕掛けてくる。


 なるほど、彼は相当できる。でも、たった一人で声をかけたのは悪手だった。応援を呼ぼうにも、私たち二人を相手にしてはかなり困難だ。こちらとしても、そうさせるわけにいかない。


 ジョンさんの蹴りを躱し、バランスを崩す男に殴りかかるが、その手は強く振り払われる。隠密を使って姿を消し、背後から攻撃しようとしても、寸前で躱される。


(隠密が効いていない……?)


「どう……なってんだっ……! いきなり消えたり、現れたりっ! なんてっ……速さだっ!」


(あ、効いているみたい。動きが速すぎて消えたように見えるって勘違いしてる)


 隠密スキルが破られていないことに少し安堵しつつも、攻撃の手は緩めない。

 彼を逃がすわけにはいかないのだ。他の人間を呼ばれると、面倒なことこの上ない。必ずここで倒さなければ!


「なん……だ……」


 戦闘の最中、彼が突然視線を上に向け、驚愕の声をあげた。それに反応し、私とジョンさんも空を見上げる。

 空が黒い。いや、夜なのだから当たり前だが、そうじゃない。


「うわ……気持ちわるっ」


 思わずそう呟いてしまった。

 だって、ものすごい羽音を響かせながら、コウモリが空を覆っていたのだから。

 私は込み上げる恐怖心に抗いながら、再び笛を吹く。すると、コウモリたちが一斉にこちらに向かって飛んできた。


(うわーーーーんっ! 怖い! 不気味! 気持ち悪いーーーーっ!)


 私は心の中でそう叫びながら、隙を見せた男の背後に回って動きを封じる。そして、また笛を吹いた。


「おい、なんだ! 放せっ! うわっ! こら、来るな! 来るんじゃねぇっ!」


 コウモリたちは、笛の音に向かってやって来る。音を出している私の元へ。それはつまり、男のところへ──。


「ぎゃあああああっ!」


 コウモリたちが男に群がった瞬間、私はその場を離れる。


「ジョンさん!」

「はいっ!」


 ジョンさんは塀に寄って、腰を屈めて手を組む。


「すぐに後を追います」

「お待ちしていますっ!」


 私は助走をつけて、ジョンさんの手に足をかける。そして空を飛び、塀を越えた。

いつも読んでくださってありがとうございます。

いいな、面白いな、と感じていただけましたら、ブクマや評価(☆☆☆☆☆)をいただけますととても嬉しいです。皆さまの応援が励みになります!

どうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。