12.お説教
予約投稿に失敗し、本日多めの更新となっております…(;'∀')
私に隠密のスキルがあることは、レオナード様にはバレている。どうしてバレたのかはいまだによくわからない。何度も尋ねても、レオナード様は曖昧に微笑むだけなのだ。
とりあえず、他の人には内緒にしてもらえるとのことだったので、私的にはよしとしている。すごく気になるけれど。
「さて、どこへ行っていたのかな?」
怪しげな笑みを浮かべるレオナード様にビクビクしながらも、私は紳士倶楽部に行って情報収集したことを素直に白状した。いや、せざるを得なかったというか。
だって、なんか怖いから! レオナード様の微笑みって、時々妙な迫力があるんだもの!
「隠密スキルがあるとはいえ、そんな場所に潜入するなんてねぇ」
「……(うっ)」
「あそこが女人禁制だってことは、もちろん知っているよね?」
「は、はいぃ……」
「そっか。じゃあ、もし万が一、潜入がバレたらどうするつもりだったの?」
「え、えっと……とりあえず逃げて」
「逃げて? 護衛に捕まったら?」
「倒して」
「数人がかりでこられたら?」
「まとめてぶっ飛ばし……」
「はぁぁぁ……」
思い切り呆れられてしまった。
レオナード様は虚空を見つめ、ゆっくりと頭を振る。そして、再び私と目を合わせた。
(やばい! これは……)
「マリオン!!」
「(いやああああ、やっぱりぃー!)」
ムギュ。
「リェオナーリョ……」
「んん? もしかして、何か反論しようとしてる?」
レオナード様の笑顔が怖い。青筋が立っている。そして、言い訳しようにも、私の頬はレオナード様の手に圧し潰され、言葉にならない。……大ピンチ!
「いくら情報が欲しいとはいえ、そんな場所に女の子一人で乗り込むなんて!」
「りぇ、りぇも……」
「俺に一言言えば、何とかなったよねぇ?」
「……(アイリーン様を愛で守る会の時は気安く「俺」って言うけど、今の「俺」はなんか違うっ)」
「誰がどんなスキルを持っているかなんてわからない! 俺みたいに、マリオンのスキルを見破れる人間がいるかもしれないのに!」
「うっ……」
「そんな人間がいたら、どうなっていたと思うんだ!?」
「うぅ……」
私はしゅんと項垂れる。
確かにそうだ。レオナード様の言うとおり。
スキルは秘匿されていることが多い。誰がどんなスキルを持っているかなんてわからない。スキルを見破るスキルを持つ人間が、もしかしたらいるかもしれないのだ。
(……あれ? ということは)
「レオナード様は、スキルを見破るスキルをお持ちなのですかっ?」
レオナード様の手が離れ、私はようやく言葉を発することができた。開口一番がこれで、レオナード様は手で自らの額を押さえる。
「半分正解、かな」
「もう半分は?」
「危ないことをするマリオンには教えられない」
「……そんなぁ」
「マリオン?」
「うぅ……も、申し訳ございませんでした」
しおらしく頭を下げる。そして、上目遣いでレオナード様の反応を確認すると、仕方がないなというように溜息をついているのが見えた。
ホッ。どうやらご機嫌が直ったようだ。
と思ったのだけれど。
「もう一声」
「はい?」
レオナード様の整った顔が迫ってくる。
(あれ? 機嫌はもう直ったはずでは?)
これ以上近づけば、あれやこれが触れてしまうという距離になり、私は焦りに焦ってあわあわする。
すると、レオナード様は少し横を向き、なんと私の耳元にその顔を寄せた。
「俺に無断で、今後危険なことは? 絶対に?」
「……いたしませんっ」
「よろしい」
レオナード様は元の位置に戻ると、目が潰れるかと思うほどに美しい微笑みを浮かべ、私の頭をやんわりと撫でる。その手は、やがて私の頬を滑り……
「レレレレ、レオナード様!」
「おっと、そろそろ眠る時間だね。マリオンの睡眠時間を削るわけにはいかない」
「いえ、そ、それはいいのですが……(いやよくないけど。心臓バクバクだけど。そして、半分正解の残り半分がすっごく気になるけど!)」
レオナード様はもう一度私の頭を撫で、にっこりと微笑んだ。
「おやすみ、マリオン」
(結局教えてくれんのかーい!)
私は、すごすごと部屋に引き下がるしかなかった。
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