13.サザランド公爵家からの招待状
どうすればアイリーン様のお力になれるのか。そんなことを悶々と考える日々を経た、とある日のことだった。
「え? サザランド公爵夫人からお茶会の招待状が?」
「そう、今朝届いたそうよ。公爵夫人が婚約者候補と親睦を深めるため、らしいわ」
「あの、でも、それって……」
「当たり。どちらのご令嬢が息子の嫁に相応しいか、見極めたいってところでしょうね!」
一日の仕事が終わり、部屋に戻った私は、いつものようにエルシーさんとのおしゃべりに興じていた。そこで聞かされたのだ。
サザランド公爵夫人が、アーネスト様の婚約者候補であるアイリーン様とダニング侯爵令嬢、シャルロット様を招いて、お茶会を開催することを。
エルシーさんの言うとおり、公爵夫人はどちらの令嬢が公爵家に相応しいのか確かめたいのだろう。
「うーん……仕方がないのかもしれませんが、なんだか複雑です」
「そうよねぇ。未来の義母の御眼鏡に適うかどうか、テストみたいなものよね。私は絶対無理だわ」
そう言って、エルシーさんはペロッと舌を出す。こういったお茶目なところが、私よりも年上だけれど可愛らしい。
エルシーさんは子爵令嬢で、家格も私より上なのに、気取ったところが全くない。こういうところも、私が彼女を好きだと思う理由だ。
「うちは貧乏子爵家で、一の姉様は幼馴染の男爵令息を婿にしたし、二の姉様は平民の商家に嫁入りしたし、どっちも気兼ねなかったのよね。私も別に爵位にはこだわってないから相手は平民でもいいと思っているし、これからもそういったこととは無縁だわ!」
エルシーさんは子爵家の三女で、長女のお姉様を「一の姉様」、次女のお姉様を「二の姉様」と呼んでいる。三人姉妹の末っ子だけれど、何故か姉御肌なのが面白い。でも、末っ子特有の無邪気さみたいなものもあり、皆に好かれている。
しっかり者だけれど人懐こいエルシーさんは、人の警戒心を解くのが上手いのか、皆が知らない情報でも何故か知っていたりする。だから、このお茶会の情報もきっと……
「私もそういうのは無縁でありたいです。……で、エルシーさん、この情報ってもしかして……」
「うん、まだ他の人は知らないわ」
思ったとおりだ。
「出席はせざるを得ないでしょうけど、旦那様も奥様もレオナード様も、手放しで歓迎といった感じではなかったわね。そもそも、人を見定めたいなら個別に呼べって感じよね」
「……ですよね」
候補二人を同時に呼ぶだなんて、ちょっと悪趣味だ。
たぶん、ご家族の皆さまもそんな風に感じたのだろう。だから、迷っている。
「断りたいけど断れない、んでしょうね……」
「そりゃそうよ。ここで引けば、負けは確定。……勝ち負けじゃないけど、これ以上アイリーン様には傷ついてもらいたくないわ。アイリーン様が今回の話に前向きじゃなければ、わざと負けるのもありだと思うけど、そうじゃないから……」
エルシーさんは私よりも長くアイリーン様にお仕えしている。だから、彼女もアイリーン様の本心をすでに見抜いているのだろう。
「アイリーン様に敵うご令嬢なんていません!」
私がそう断言すると、エルシーさんは驚いた顔をした後、ニッと笑った。
「そうよね! なんといっても、アイリーン様は淑女の中の淑女ですもの!」
「えぇ、そのとおりです! アイリーン様が選ばれないわけないです!」
「当然よ!」
結局、エルシーさんもアイリーン様のことが大好きで、「推し」なのだ。
私たちはアイリーン様への深い愛を確認し合った後、明日に備えて眠りにつく。
(当日は、侍女としてエルシーさんか私がついて行くことになるのよね。やっぱり、先輩のエルシーさんが行くのかしら……)
それに対し異論はないけれど、何でもいいから力になりたいと願う私は、なんとかご一緒できないかと考えを巡らせるのだった。




