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18.一生お側に

 


「ヴィー!! いるか!?」

「ジャック、さま……?」


 突然現れたジャックさまに目をぱちくりさせると、勢いよく駆け寄られて。瞬く間にジャックさまの胸の中に閉じ込められた。ジャックさまを見上げると珍しく焦りが滲み出ている。


「あの……?」

「――よかった……。ヴィーが俺から逃げたかと思って、心配した」

「ふふ。急にどうされたのですか?」


 きっと急いでここまでやって来られたのだろう。いつもより体温が高いジャックさまの胸に擦り寄るととっても安心する。ふんわりと良い香りを空気と一緒に吸い込む。やっぱり、わたくしの居場所はここだ。


「わたくしがジャックさまから逃げるなんてことは有り得ません。ですが、どうして逃げたなどと思ったのですか?」

「……それは。ヴィーの所に潜ませている影から、裏口で何者かが密かに公爵家を出発したと聞いて……」

「!!!」


 秘密裏にルナ達を出発させたけど、それすらもジャックさまのお耳に入っているだなんて。わたくしはびっくりすると共に、ジャックさまの執着心を嬉しく感じてしまう。


「出発したのはルナとわたくしの侍女ですわ。今朝ルナが人間の姿に戻ったので、早めに公爵領へ送った方が良いかと思いまして……」

「!? そ、そうだったのか……。はあ、ヴィクトリアのことになると僕はどうも本当にダメだ」


 落ち込むジャックさまが愛おしくて、今度はわたくしからぎゅうっと抱きしめる。普段は冷静沈着なジャックさまだけど、わたくしことになると余裕をなくすお姿は、堪らなく愛おしい。


「仮にジャックさまが本当にダメだとしても、一生お側にいますわ」

「それじゃあ、今日から皇城に一緒に住んでくれる……?」


 捨てられた子犬のような目をしたジャックさまが眩しい。

 やっぱりルナの言う通り、今日から皇城に住むのは決定事項だったみたいね。


「はい、喜んで。どんなジャックさまであっても、お慕いしております」

「ほんとうに……? 僕が狂おしいほど君を愛して、閉じ込めてしまいたいと願っていても?」

「ええ。これから先も、ずっとジャックさまと添い遂げます。でも、閉じ込めるならば、側室などお迎えしないでくださいませね」

「ああ。僕はヴィー以外、他に何もいらないよ」


 その言葉に安堵しわたくしは自然と穏やかな笑みが浮かんだ。そのままジャックさまを見つめると、仄暗い眼差しに光が宿った気がした。




 ***




 馬車の中も終始離れず、皇城の中に入ってもエスコートされて手のひらを預ける。それだけかと思いきや、腰に腕がまわって引き寄せられる。抱きしめられたことは何度もあるけれど、数多く人がいる皇城で堂々と密着する様がとんでもなく恥ずかしくて堪らない。


 我慢できず耳まで赤くなると、ジャックさまが耳元で囁く。


「ヴィー、駄目じゃないか。衆人の前でそんなに可愛い顔を晒してはいけないよ」

「ジャックさまとこんなにも触れ合っているのですもの。照れてしまいますわ」


 か細い声で紡がれた言葉は、ジャックさまの耳に入る。その直後にジャックさまが周りをゆっくりと見渡す。

 すると瞬く間に集まっていた人達が、見事に散っていった。ジャックさまは何をしたんだろうと不思議に思うも、どんどんと歩みを進めるものだから振り返ることはできなかった。


 奥へ奥へと入りこんで、皇宮を通り過ぎた後も、まだ進む。奥に進むごとに自然が多くなって、秋の枯れ葉を踏むと小気味良い音がサクサク鳴る。


(もしかして、この先って……)


 ここは皇子妃教育で来たことがある。行き先は思った通り、贅を尽くして作られた後宮のようで。白亜の門をくぐると、手入れの行き届いた庭園に、煌びやかな装飾、そして少人数の使用人が列をなして頭を下げていた。


「これからここで暮らそう。全部ヴィーのために用意させたんだ」


 よく見たら、わたくしの好きな薔薇が沢山咲いている。ふんわりと華やかな香りが漂ってきて、気持ちが穏やかになる。それに、装飾もわたくし好みに変わっている。以前来た時よりも随分と印象が変わっていて、わたくしのためにジャックさまが用意してくれたと伝わってくる。


「ジャックさま、ありがとうございます……!」

「感謝しないで。これから君を閉じ込めるんだから」

「それでも、嬉しいのです」


 別にジャックさまに閉じ込められたって構わない。だって今まで愛のない結婚をすると思っていたのだもの。


 何だか、これからジャックさまの妃になれると実感が湧いてきて胸が熱くなる。


「……ヴィーは本当に可愛いな。早速だけど中へ入ろうか?」

「はい」


 中へ入ると、大広間へと案内された。

 そこに用意されていたのは、純白のウェディングドレス。縫い付けられた紫水晶がキラキラと輝いている。


 これは誘拐される前に試着しようとしていたものだ。


「わあ……! ウェディングドレスまで用意してくださっていたのですね」

「バタバタしてしまって試着出来なかっただろう? 疲れていなかったら、僕にヴィーの美しい姿を見せてほしい。もちろんあんな事が起こったし、今日でなくてもいいけれど」


 そんなこと仰られては、早く着てお見せしたくなる。


「お部屋まで案内してもらった後、早速試着をしたいです」

「ありがとう、ヴィー。すごく楽しみだ」





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