ひろし、大いに笑う
この後も、マサ対タマシリ(勝者タマシリ)、マユ対軍神零式(勝者マユ)の試合が続いた。
そしてさらに、メイ、ナミ、ルル、めぐ、ライラが参加した、溶岩ようかん早食い選手権(勝者ライラ)、
イリューシュ、翠、おじいさん、ナミが参加した精密射撃選手権(勝者、イリューシュと翠がノーミスで同点勝利)、
海、社長、ライラ、メイが参加した「ルルの光の魔法を最後まで耐えきれたら10万プクナ」(勝者、社長。しかし賞金は山分け)、
そして「ゲーム川柳」大会。
哲夫「大戦 敵と味方が わかりません」
和代「哲夫さん だいぶ在庫が 合いません」
めぐ「大福を じつはこっそり 食べてるの」
イリューシュ「あらいやだ 間違って味方 Headshot」
(勝者、良い発音で5文字を表現したイリューシュ)、
さらに、アカネ、黒ちゃん、大熊笹、社長、ライラが参加した「くさい排泄物、正座でどこまで耐えられるか選手権」(勝者、大熊笹)が行われ、
最後にはリングの上でルルのライブショーが始まった。
「みんなー! みんなのアイドル、ルルだよー!」
「「わーーー!!」」
ルルは音楽に合わせて可愛くダンスを始めると慣れたパフォーマンスで歌い始めた。
「♪あなたにー、届いてー。この気持ちをもっと~♪」
するとなんと、魔術武闘家のマサがサイリウムを振り回してキレッキレなヲタ芸を打っていた。
ブンブンブンブン!
「♪いつでも-、あなたを想ってーるのー♪ いくよっ!! オイ! オイ!」
ルルがみんなを煽ると、マサは跳び上がって両手を突き出した。
「オイ! オイ! オイ! オイ! はっはー! 今日は最高の日じゃねーか!」
そして渾身の掛け声を決めると、それを見ていた翠は少し驚いて呟いた。
「マサ……、あなたのそんなキラキラした笑顔、初めて見たわ……。最高に輝いているわね……」
こうしてみんなは日が暮れるまで盛り上がると、少しずつログアウトしていった。
「じゃーねー」
「うん、またね!」
「それでは失礼いたします」
「ではまた」
「さようなら」
「今日はお世話になりました」
おじいさんは懐で眠ってしまったタッちゃんを撫でながら、おばあさんに言った。
「今日はとても笑ったなぁ」
「ええ。こんなに笑ったのは久しぶりですね」
するとアカネとめぐも手を振りながらログアウトしていった。
「じゃ、あたしたち帰るね。またあした!」
「おじいちゃん、また明日!」
「はい、また明日もおねがいします」
「さようなら。おやすみなさい」
おじいさんとおばあさんはアカネとめぐに挨拶すると、おじいさんが桜の下にいた茂雄に話しかけた。
「茂雄さん、私たちもそろそろ帰りますね。茂雄さんは……」
「あぁ、ははは。私は先週から、ずっとこの世界にいるんです」
すると、それを聞いていた哲夫がやってきて茂雄に話しかけた。
「茂雄さん、もしかしたらベッドから起き上がれないのでは……」
「……はい、その通りです」
「そうですか。実はわたしも寝たきりでして、もうずっとVRをグラスをかけたままなんですよ」
「あぁ、そうでしたか」
するとイリューシュがやってきて茂雄に話しかけた。
「茂雄さん、よかったらこの家に住んで頂けませんか? 部屋が空いていますので」
「ええっ? いや、それは申し訳ありません。わたしはピンデチふれあい苑で寝られますので」
「茂雄さん。実は、大きな家を建てたのは良いのですが、部屋が余ってしまっていて……。住んでもらえると嬉しいんです」
「ああ、いや、その」
茂雄が迷っていると、イリューシュが茂雄を案内するように言った。
「よかったら中に入りませんか? 見ていただいてから決めて頂ければ」
「あ、……はい」
茂雄は心なしか嬉しそうな表情になって頭を下げた。
するとその時、哲夫たちと一緒に残っていた美咲がみんなに言った。
「では、わたしたちも家へ帰ります。今日は本当に笑いました。はは」
するとイリューシュが笑顔で答えた。
「ええ、笑いましたね。哲夫さん、和代さん、美咲さん、またお会いしましょう」
「哲夫さん和代さん美咲さん、またお店で」
「またお会いしましょう」
「ありがとうございます」
「はい、宜しくおねがいします」
「では、また」
美咲と哲夫と和代は頭を下げるとH区画の家へと歩いて帰っていった。
庭にイリューシュとおじいさんとおばあさん、そして茂雄が残ると、イリューシュはみんなを家の中に招いた。
「茂雄さん、みなさん、さぁ中へどうぞ」
「はい、ありがとうございます」
茂雄とおじいさんたちは自動ドアを抜けて一緒に家の中の大広間へ入った。
そしてイリューシュは茂雄を2階の部屋へと案内した。
「茂雄さん、こちらの部屋なのですが」
「あぁ、とても素晴らしい部屋ですね。ですが本当に良いのでしょうか……」
「ええ、大きなベッドもありますし窓からは桜が綺麗に見えますよ」
茂雄はそれを聞くと窓から庭の桜を眺めた。
「ああ、とても美しいですね……」
「1階にはナミさんのお友達の白たんさんが居ますけれど、大広間もご自由にお使いくださいね」
すると白たんがイリューシュの後ろからニュルッと現れた。
「白たんです。宜しくおねがいします」
「あ、茂雄です。宜しくおねがいします」
茂雄と白たんが挨拶をしていると、おじいさんが1階からお茶セットとポットを持ってきて部屋の机に置いた。
「茂雄さん、どうぞ。宇治のかぶせ茶です」
「ああ、これはこれは上等なものを……。急須もすばらしい」
「この急須の良さを分かって頂けますか。ははは」
おじいさんが嬉しそうにすると、茂雄は笑顔になって話し始めた。
「みなさん、今日は本当にありがとうございました。……実は今朝、自分でも具合が悪くなっていくのが分かったのですが……」
茂雄は少し下を向いて続けた。
「その時に、『良かった、これでヨシ子のところへ行ける』と思ってしまったんです。そうしたら、どんどん意識が混濁して……」
それを聞いたおじいさんは茂雄に言った。
「茂雄さん……、生きるのを諦めてしまったんですね」
「はい……。私は妻が死んでから喪失感で抜け殻のように生きてきました。ですが今日は感動したり大笑いしたり……、ははは」
「ははは。今日は、とても楽しかったですからね」
「はい、こんなに笑ったのは久しぶりです」
「茂雄さん。茂雄さんも今日から仲間ですから、明日からも一緒にたくさん楽しみましょう」
おじいさんが茂雄の手を握ると、イリューシュとおばあさん、そして白たんも一緒に手を握った。
「みなさん、ありがとうございます。お言葉に甘えて、こちらに住まわせていただきます……」
それを聞いたみんなは笑顔になると、しばらく茂雄とお喋りをして部屋を出た。
おじいさんは和室に行くと、懐のタッちゃんを下ろしてこたつの中に入れた。
すると近くで尻尾を振って待っていたララ助が嬉しそうにこたつの中入ってタッちゃんの横に伏せた。
「ははは、仲良しですね。おやすみなさい」
おじいさんは静かにこたつの布団を下げると、ララガのお母さんがやってきて、こたつの横にゆっくりと伏せた。
おじいさんたちはララガのお母さんの頭を撫でると、手を振り合いながらログアウトしていった。




