ひろし、驚く
扉から球場に出たおじいさんたちは、社長の案内でホームベースの前に作られた特設ステージの上にあげられた。
そこへウグイス嬢のアナウンスが流れた。
『これより、本日のベスト・ピッチャー賞とベスト・バッター賞を発表いたします』
「「「わーーーー!!!」」」
それを聞いた初柴はニコリと笑い、おじいさんは信じられないといった表情になった。
『ベスト・ピッチャー賞。ひろし選手』
「「「わーーーー!!!」」」
スタンドのアカネたちも大興奮で声を上げた。
「やったぜ、じいちゃん! まじで優勝だ!!」
「ひろしさん、すばらしい!!!」
「やったー、おじいちゃん!」
「ははははは、ひろしさん、やりましたな!」
「きゃーーー!!」
「まぁまぁまぁ!」
「すごい! ひろじいちゃん!」
『ひろし選手には、記念の盾と100万プクナ。そして後ほど記念ジャージが送られます』
「「「わーーー!!!」」」
おじいさんは記念の盾を受け取ると、思わず涙を流した。
「「「ひろし! ひろし! ひろし! ひろし!」」」
スタンドからひろしコールが起こると、実況のタックがステージに上がって、おじいさんにインタビューを始めた。
『ひろしさん、今日は最高のピッチングでした! おめでとうございます!』
「ありがとうございます」
「「「わーー!!」」」
『この喜びを誰に伝えたいですか?』
「おばあさんにつむぎちゃん、そしていつも私に良くしてくださるイリューシュさん、めぐさん、アカネさん、黒ちゃんさん、大熊笹さん……。みなさんのお陰で賞が取れました」
「「「わーー!!」」」
それを聞いたアカネたちは涙を流しながら喜んだ。
「じ、じいじゃん!」
「び、びろじざん」
「おじいちゃん……」
「はっはっは、ひろしさん」
「ひろしさん!」
「もう、はずかしいわ……」
「ひろじいちゃん」
『ひろしさん、初柴選手にホームランを打たれた時に笑っていましたが』
横に居た初柴選手もそれを聞いて笑うと、おじいさんも一緒に笑いながら答えた。
「あ、はい。やられてしまったぁ、という感じでした。ははは」
「「「はははははは」」」
パチパチパチパチ
スタンドからは拍手と笑い声があがった。
『では最後に、ひろしさん。スタンドの皆さんに一言お願いします!』
「みなさん、ご声援ありがとうございました。とても心強かったです!」
おじいさんはそう言って深々と頭を下げると、スタンドからは大歓声があがった。
「「「わぁぁああああ!」」」
ー それから1時間後、スタンドの選手出入り口 ー
選手たちが帰る中、おじいさんはマサにお礼をしていた。
「マサさん、今日は頼もしいリードありがとうございました」
「何言ってんの! 今日のベスト・ピッチャーじゃない!」
「いやぁ、はははは」
「でも、さすがだったよ。最後はおれのリードじゃなかったし」
すると、翠たちが柵の向こうからマサを呼んだ。
「マサ! 最高だったわよ!」
「かっこ良かった!」
「やるじゃない! 最後のヒット!」
「おれ男だけど、惚れたわ!」
「おいおい、男に惚れられても嬉しくねーぞ!」
「「あはははは」」
その時、おじいさんにメッセージが入った。
ーーーーーーーー
アカネ:じいちゃん、今日は最高だったよ! 入り口でドラゴンで待ってるよ
ーーーーーーーー
「あ、すみません。みなさんが待ってくれているみたいで」
「うん、おれもそろそろ行くわ。今度またバリードレに遊び来てよ」
「はい、ぜひ」
「んじゃ、またね!」
マサは翠たちのところへ走っていくと、翠たちはおじいさんに笑顔で手を振って頭を下げた。
おじいさんも深々と頭を下げて顔を上げると、マサは翠たちと一緒に転移していった。
マサを見送ったおじいさんは、ゆっくりと球場の横を歩いて入り口に向かうと、向こうからつむぎが走ってきた。
「ひろじいちゃん!」
「あぁ、つむぎちゃん」
つむぎはおじいさんに抱きつくと嬉しそうに言った。
「ひろじいちゃん、カッコ良かったよ!」
「ははは、ありがとう、つむぎちゃん」
「みんな、あっちで待ってるよ」
「ああ、行こうか」
つむぎはおじいさんの手を取ると、一緒に入り口へと向かった。
すると空から、みんなを乗せたドラちゃんがゆっくりと降りてきた。
バサッ、バサッ、バサッ、バサッ、ズゥゥン
「ひろし様、お迎えに上がりました。どうぞお乗りください」
ドラちゃんはゆっくりと着地して尻尾を伸ばすと、おじいさんはつむぎに手を引かれて一緒にドラちゃんの背に乗った。
おじいさんが背中に上がると、みんなが笑顔で迎えてくれた。
「じいちゃん、最高だったよ!」
「ひろしさん、素晴らしい投球でした!」
「おじいちゃん、凄かったよ」
「ひろしさん、最高でしたな!」
「わたし興奮しちゃって、きゃーしか言ってなくて」
「あなた、お疲れさまでした」
「ははは、みなさん本当にありがとうございます。今日は楽しく試合ができました」
パチパチパチパチ!
みんなから拍手が巻き起こるとドラちゃんがみんなに言った。
「さぁ、みなさん、飛びますよ! しっかり掴まってください!」
「「はーい!」」
バサッ、バサッ、バサッ、バサッ
こうしてみんなはG区画の家へと向かった。
◆
おじいさんたちがG区画の家に戻ると、すでに薄暗い夕方になっていた。
ドラちゃんはG区画の海岸に着地すると羽を下げてみんなを降ろし、体を小さくした。
ドラちゃんから降りたおじいさんたちは、お喋りしながら坂を登ってG区画の家に到着すると、おじいさんはそのまま和室へ向かった。
そして床の間にベスト・ピッチャー賞の盾を飾ると、嬉しそうにウンウンと頷いた。
するとみんなも和室に入ってきておじいさんと一緒に盾を眺めた。
「床の間にピッタリだね!」
「すばらしい賞ですね、ひろしさん」
「うん、ほんと今日は凄かったよ、おじいちゃん」
「ほんとですな!」
「ひろしさん、今日は感動しました」
「あなた、良かったわね」
「ひろじいちゃん、良かったね」
おじいさんは少し照れくさそうに頭をさげると、みんなに言った。
「いやぁ、みなさんのお陰です。こんなに嬉しい日はありません。ははは。いまお茶を入れますね。ええと……」
おじいさんは戸棚を開けると、先日の京都フェアで買った一番良いお茶を出した。
「今日はお祝いですから、一番良いお茶にしましょう」
「「やったー!」」
おじいさんが急須でお茶を淹れていると、イリューシュがドラゴン大福を持ってきた。
「では、今日はドラゴン大福も」
「「わーー!」」
みんなは和室で喜ぶと、おじいさんは用意した湯呑みに次々とお茶を注いていった。
そして、みんなに注ぎ終えると笑顔で話し始めた。
「みなさん、今日は野球場までお越しいただきましてありがとうございました。さぁ、どうぞお茶をお召し上がりください」
おじいさんの言葉にみんなはお茶をすすった。
「あ、うまい!」
「おいしい」
「あぁ、これはこれは」
「あら、おいしいわね」
「まぁ!」
「うん、おいしいね」
するとアカネがおじいさんに言った。
「じいちゃん、今日は最高だったよ! ピッチャーってカッコいいな!」
「いえいえ、チームの皆さんのおかげです。わたしは皆さんのおかげで……」
「なんだよ、謙遜しちゃって! じいちゃん、めっちゃカッコよかったぜ」
「あぁ、ははは。ありがとうございます」
するとイリューシュが珍しく感情を高ぶらせながらおじいさんに言った。
「もうっ、ひろしさんの投球、ほんっとうに素晴らしかったです! わたし、きゃーしか言えなくて」
「あ、いえいえ、ははは。ありがとうございます、イリューシュさん」
「最高の試合でした! また応援させてくださいね!」
「あ、はい、喜んで」
おじいさんはみんなに祝福されながら最高の時間を過ごしたのだった。




