そんな出会い
栄えているわけでもなく、寂れているわけでもない、郊外の小さな集落。
そこより僅か離れた地点に、数人の男がたむろしていた。
涼しく、過ごしやすい季節だというのに、汗だくで座り込んでいる彼らの傍には、人間の大人一人余裕で入りそうな大樽が6つ。
何やらわけがありそうだ。
善行の足掛かりとなりそうな気配がする。
修一に目配せをすると、男らの方へ足を向けた。
「何事だ」
「あ?なんだアンタ」
「あー。スンマセン。ただ、どうしたのかなーって、心配になったもんで」
永く生命活動を続けてきたせいか、無感情な声と無機質な言葉のおかげか否か、早速警戒されてしまったらしい俺に代わり、修一が顔を覗かせる。
どうやら連れてくるという判断は正しかったようだ。
俺の方への警戒が僅かに緩め、修一を見る男達。
「変わった服だな。あんちゃん。貴族か何かかい?」
「え?あー…っと」
男らの問いに修一が言葉を詰まらせる。
そういえば修一は学生服のまま。
何か装備を与えてやればよかったかとは思うが、それも今更だ。
修練も兼ねてギルドで金を稼ぎ、買わせるとしよう。
アドバイスくらいはするが、勿論買うのも稼ぐのも修一自身だ。
「これはそこで拾った。遥か東にある島国の者だそうだ。貴族ではないが商家ではある」
「そ、そうそう!ちょいと外の珍品を買い集めようと思ってね」
口から出任せを言うのもこれで幾度目か。
どの勇者も大抵面倒事に巻き込まれる為、その都度俺の誤魔化しスキルが磨かれたものだ。
「商人だぁ?なぁんも持ってねぇじゃねぇか」
「え゛。あ、あー……いやぁ……」
男の怪訝な視線に修一は困り顔で頭を掻き、ちらりとこちらを見る。
前言撤回。連れてこなければよかった。
「荷は森でこいつに喰われた」
実はあの後回収しておいたスライムの死骸と、それからついでに喰われていた戦士だか、冒険者だかの溶けた装備を亜空間から取り出す。
特に重要な物でも無い為適当な位置から取り出したそれらは、俺の目の高さからガラガラと重力に従い地に落ちた。
「一応遺品なんだし、もっと丁重に扱うとかないわけ?」
修一がぼやくのが聞こえた。
俺の縁者ではない為粗末に扱ってしまったが、そう言われればこれもどこかと縁のある者の形見。
何の感慨も持たない俺からすればただのゴミだが、縁者からすれば宝ともなる物だ。
「……ふむ。以後気を付けよう」
魔王=善イメージの為にも。
「い、色々言いたいことがあるんだが、アンタ、これどっから出したんだ?」
茫然とした様子で人間が口を開く。
空間と空間を繋げる魔術は、人間の間では既に廃れている高等技術だ。
少なくともこんな片田舎で見る魔術ではない。
それ以前にこれは魔術ですらないのだが。
「先程目の前で見ただろう。亜空間だ」
「あ、亜空間てお前……」
驚くべきか、呆れるべきか選び損ねたような顔になった男。
腕に覚えのある魔族にとっては、使い勝手の良い魔法として重宝しているポピュラーな魔法の一つなんだがな。
「それより、何故このようなところで座り込んでいるのか、聞かせてもらおう」
「それよりってお前!自分がどんだけ凄いことやってるかわかってんのか!?」
「……?自慢でもされたかったのか?」
「違うわ!」
その後も、たった二人でスライムを数十体も倒したことやら何やらと騒がれたが、軽く流して問いに対する答えを促すと、諦めたように溜息を吐かれた。
意味がわからん。




