魔物=悪説払拭キャンペーン開始なう
【天馬:勇者、魔王討伐を決意。m9(^Д^)プギャーww】
【こがね:主様、心配には及びませぬ。この黄金、全力で事の解決に当たりましょうぞ。
≫天馬 コロス。】
【ムゥベル:人間なんざ放っとけ。
≫天馬 削除。】
【天馬:こwろwさwれwるww】
「……」
続々と上げられるメッセ。
携帯画面を見つめ、顔文字と同じ顔をしているであろう天馬と、黒いオーラを発しているであろう二人を思い浮かべ、俺は沈黙した。
携帯の存在する世界から来た勇者逹ははじめ、女子高生顔負けの携帯打スキルにイメージが、と呟いていた。などとしょうもない事を思い出す。
ついでに弁解しておこう。
黄金が己のハンドルネーム、というか本名を平仮名登録しているのはうつごと開始当初、彼が携帯初心者だったからに他ならない。
決して彼が平仮名可愛い、などと思ったわけではない。決して。
【魔王:勇者は暫く様子見だ。天馬に関しては程々に、としか言えん。】
【天馬:見捨てられたww】
【前鬼:m9(^Д^)】
【後鬼:m9(・▽・)】
パチン、と黒い携帯を閉じ、瞠目。
今回の勇者はどう出ることやら。
因みに先週の勇者は殉職した。
詳しく言えば俺TUEEEEで調子づき、人間の組織した討伐ギルドとやらで上級クエを受諾。
敵のハイレベルが身の丈に合わず餌となった。
勇者なんぞ居過ぎて、既に興味の「き」の字すら消え去った俺はよく知らないが、癪に障る人間だと毎回率先して勇者観察に行く天馬がぼやいていた覚えがある。
確かヒポグリフの如くプライドの高い高慢ちきな女、だったか。
何の因果かその高慢ちきを餌にしたのは、天馬いわく高慢ちきなヒポグリフ。
御愁傷様としか言えん。
さて、勇者に関しては今のところ天馬が監視している上、暫くは観察と指示を出したため俺にすることはない。
王、といっても俺と部下達の関係は国王と人民、ではなく契約主と使い魔。
全てが俺の使い魔だから、「王」と称されたのだろう。
人王とは違い、ただ他の者より強くあればいいだけな魔王業故、書類に溺れる事も、部下にせっつかれることもない。
しかしやることもない。
俺がやる前に全て僕達が済ましてしまう。
人王が忙殺されるというならば、魔王は暇殺されるのだろう。
「……」
いっそ己も勇者を名乗るか?
いやしかし、それは50年前に実行済みだ。
ならば勇者一行に加わってみるか?
しかしそれも三度実行済み。もう飽きた。
下界巡りは、一昨日してきたばかり。
魔界巡り……却下。
ギルドランクを極める、もした。
暇だ。暇だ。暇だ。暇だ。
どうしてこうも碌な事がないのか。
勇者が現れては消え、現れては消え、現れては消え。
無限ループって怖くね?と天馬も言っていた。
俺も今現在、進行形でそう思う。終わりのない耐久動画を見ているようだ。
それもこれも、人間が魔族を敵視するせいだ。
確かに人肉を喰う奴だっているが、だからと言って全部が全部じゃない。
吸血鬼は貧血を起こさない程度に吸血を抑える。
第一近頃の人間は不味い為進んで吸血する輩などほとんどいない。
龍とて手を出さねば大人しいものだ。
その他諸々の魔物達も、己の領域を侵されなければ必要に牙を剥くような真似などしない。
そもそも魔物の住む領域を散々に荒らしたのは奴らの方。
「……そうか。それがいい」
つらつらと考えていれば名案が浮かんだ。
これならば今まで一度もやったことはないし、いい具合に長期戦となりそうだ。
早速閉じていた携帯を開き、うつごとに書きこむ。
【魔王:魔物=悪イメージ払拭キャンペーン開始なう。下界へ降りる】
世界どころか、あちらこちらの異世界でも上がった驚愕の声をスルーし、三対の黒い翼を広げた。




