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悪女?いいえ、サポーターですわ〜悪事がばれて追放された悪役令嬢、神様から幸せのお手伝い命じられました〜  作者: 想


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11/11

リアのひらめき

 沈黙を破るように、部屋の外から突然バタバタと走る音が聞こえてきた。


 「リリア!!」

 

 バンと扉が乱暴に開かれる。

 そこにはハアハアと肩で息をしている赤髪の男性がいた。


 「旦那様!! リリア様が!!」


 ミリーが駆け寄り、事情を説明しようとするが、父親は脇目も振らず、リリアが横たわっているベッドに駆け寄った。

 リリアの苦しそうな様子に、顔を歪める。


 ミリーは父親の行動を邪魔しないように、すっと元の位置に戻った。


(やっぱり、リリアを気にかけていたんですわ)


 食堂での振る舞いとかけ離れた狼狽ぶりに、私は心の中で胸を撫で下ろす。


「あの、旦那様……」


 事情を説明するために、医者が恐る恐る話しかけた瞬間。

 今まで痛ましそうに顔を歪めていた父親は、突然医者の胸ぐらを掴んだ。


「娘の状態は?」


「ゴホッ、ゴホッ……。

 ス、ストレスと魔法の無理な使用による高熱です……」


「魔法だと!? うちの娘はまだ八歳だぞ!?

 ……デタラメを言うと、どうなるかわかっているな」


 そう言うと、父親の手に真っ赤な炎がバチバチと音を立てて出現した。

 部屋の空気が一気に熱くなる。


 「ひぃぃぃ」

 

 さっきまで堂々としていた医者の顔が炎に照らされ、恐怖に染まる。


 ミリーもその威圧感に息を飲み、壁際に張り付いている。

 私も熱さに思わず毛が逆立つ。


「どうなんだ!? 本当なのか?」


「本当です!! 神に誓って本当のことでございます!!」


 父親は医者の胸ぐらをパッと離す。

 医者の体が、ふらっとよろめく。


 

 

 父親は深い息を吐き出し、ベッドの近くにあった椅子に乱雑に座った。

 医者は小刻みに震える手で、乱れた襟を整えている。


 また部屋の外が騒がしくなった。


(今度はなんなんですの!?)


「あなた、リリアが……

 リリアが倒れたと聞きましたわ!!」


 今度は青髪の女性が、ドレスの裾を掴みながら勢いよく部屋に駆け込んできた。

 ベッドの近くまで行き、横たわっているリリアの様子を見る。


「リリア…」


 弱っているリリアを目の当たりにしてガクッと膝が折れ、部屋の床に崩れ落ちてしまう。


「アリス!」

「奥様!」


 父親とミリーが慌てて駆け寄る。


「なんでこんなことに……」


 いつも吊り上がって見える目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。

 その様子を見た父親は、手を空中で彷徨わせていた。

 ミリーもそばにそっと控えている。


「あの……。

 お嬢様は以前、魔力を無理矢理解放してしまい、それ以降、魔力の制御ができなくなってしまっている状態です。現在も無意識のうちに少しずつ魔力が漏れ出しています。

 魔力は自分で押さえられるものですが、お嬢様はまだ八歳。魔力の抑え方をご存知ないためでしょう」


「……つまり何が言いたいんだ?」


 父親が、地を這うような低い声で尋ねる。

 医者の肩がビクッと跳ね上がる。


「お嬢様の魔力量はとても多いため、少しずつ漏れ出ていても疲れを感じる程度だったのでしょう。しかしその間、体に多大な負担がかかっていた上、ストレスが重なり、高熱となって現れたのでしょう」


「嘘よ! 魔力が流れ出ていたら、私たちが気づくもの」


 母親が顔を上げ、医者をキッと睨みつける。


「確かに魔力の多いお二人ならお気づきになられたかもしれません。しかしこのお屋敷には魔道具がたくさん仕掛けられているため、リリア様の微量の魔力と魔道具の魔力の区別がつかなかったのでしょう」


 母親は心当たりがあるのか、ハッとした顔になる。

 そのままガクッと項垂れてしまった。


「このまま薬を投与しないと、最悪死に至ってしまいます。

 なにか心当たりはございますか?」


 両親とミリーは沈黙する。


「……薬があるなら、そのまま投与すればいいではないか」


 父親がポツリと呟く。


「この薬は量を間違えてしまうと魔法が一生使えなくなってしまったり、高熱が悪化してしまうため、事実を知りたいのです」


 皆の固唾を飲む音が聞こえた気がした。

 静かに沈黙が流れていく。


(魔力が使えなくなる!? 最悪死んでしまう!? そんなの絶対ダメですわ。この大天才、リア様に解決できなかった問題などありませんでしたわ。なんとか伝えなくては)


 私は頭をフル回転させた。

 

 

 部屋の中央に集まっている両親達にバレないように、そろりと机に飛び乗る。

 ——ある本を探すために。

 

 机の上には色々な教材が積まれていた。

 しかしお目当てのものはなかなか見つからない。

 カサッ。

 皆に気づかれないように足を慌てて引っ込める。

 隅の方に空色の花畑のイラストの本が埋もれているのを見つけた。

 私はそれを咥えて、机から音を立てないように飛び降りる。

 そして考え込んでいたミリーの前にポトっと落とした。


「リア? これはどこから持ってきたの?」


 ミリーはハッとした顔を浮かべてその本を持ち上げる。

 皆の目線が一斉に本に注がれる。


「貸してみなさい」


 ミリーが父親に手渡しする。

 父親は表紙をチラッと確認し、適当なページを開く。


「これは……」


 驚きの声が響く。

 そこには、こう書かれていた。


【今日は、歴史とマナーの授業があった。歴史の授業では、大陸の戦争について話していたけれど、つまんなくてこっそり寝ちゃったー。でも、先生にバレなかったぞ! リリアちゃん、えらい! マナーの授業では、スプーンとフォークを使って音を立てないように食べられるようになってきたの。でも、先生の目は冷たいまま。あーあ、褒めてくれたらもっとやる気出るんだけどな】


 父親は無言で次のページをめくる。


【今日は音楽の授業があった。ビブラートを披露したら、先生から白い目を向けられちゃった……。でも、ピアノは上達したって褒めてもらえた!! 明日も頑張るぞっ】


「リリア……」


 母親が噛み締めるように呟く。


 そう、これはリリアの日記だった。


(これには、きっとリリアが魔法を初めて使った日のことが書かれているはずですわ! だってあの日も何か書いていましたもの)


 私は皆が日記を覗き込んでいる目の前で胸を張って座った。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


今回は、リリアの両親が娘を心配する姿が描かれました。


そして、リリアの日記を見つけたレイラ。

果たして、そこから何が分かるのでしょうか。


次回の更新日は9月27日の21:30です。

次回もお楽しみに!

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