第36話 プロテンス4号
「さて。デイカジノからグラディウスに行くのにはとにかくトップに話を通さないとな。裏側に入ったらいいのかな?」
そうずかずかと関係者以外立ち入り禁止の看板を無視して裏側に入っていった。
「おい!あんた客だろ!出ていけ!ここは関係者以外立ち入り禁止だ!」
「おれはユダだ。あんたらの幹部に会わせろ。」
「なるほど…あんたがユダか。」
そう呟いたウェイターの男はニヤリと笑った。
「ははっ!こいつがユダだってよ!みんな笑っちまえ!」
笑い声が響く場にドロガは「バレたのか?」と疑問符を浮かべた。
「あ…ユダって言うか。ユダの仲間ってい……」
その時だった。ドロガの背後から頭に脳が揺れるような激痛が走った。
そして金属バットを持ったもう1人のウェイターが笑った。
「ははっユダを連れていこう。ボスの元へ。」
「今月は給料が弾むぞ。」
「全員で美味い飯を食いに行こう。」
***
黒い布を被らされたドロガは椅子に縛り付けられていた。
目を覚ましたドロガを見て布が剥がされた。
「久しぶりだな。ユダ。俺だ。フェルーノ。」
そこには白髪の男が堂々と座っていた。
「フェルーノ!まさかお前か!」
「顔を変えたのか。ユダ。そろそろ本当の顔を見せたらどうだ?お前の魔法なら容易いもんだろう。」
「なぁ。ユダ。あの時の事を腹を割って話そう。それからでもいいと思うんだ。お前の首を飛ばすのは。」
「あの頃ってなんだよ。おれはユダだけどそれは知らないぞ。」
そういうドロガに男は机を叩いた。
「いい加減猿芝居はやめろ!おまえはいっつもそうだ!どこかでずっと俺を見下している!」
「いや、だからほんとに知らないんだって!」
「なぁユダ。俺は別にいいんだぜ?いつお前が死のうとも。だが、あの時の事は解決させたいんだ。喧嘩別れは避けたいんだよ。ユダ。」
「なぁ、そういえば何があったっけ?」
「シラを切るなよ。ユダ。俺とお前は兄弟のように思っていた。息子のように育てた。しかし、あの時だ。麻薬が沢山詰まった。グラディウスの財産、二番基地にて、おまえは爆発事故を起こした。故意的にだ!」
「そりゃ、するだろ。麻薬だろ?」
「そういう所が嫌いなんだよユダ!」
そう叫んだ男にドロガは少しビクッとした。
「もういい。牢に入れろ。」
そう手下に手をパッパッとするとドロガはまた布をかぶさられて牢屋に入れられた。
***
「あんた。おいあんた!」
ドロガが目を覚ますとある老人がいた。
「ここ…は?」
「牢の中だよ。俺はナジャータ。あんた?」
「ドロガだ。おっと。いけねぇ。ここではユダで通してる。」
「…ユダか!お前には憎き因縁があるんだ。よくも息子を!!」
そう拳をあげるナジャータにドロガは焦った。
「待て待て!おれはユダのフリをしたドロガだ!」
「なんだ。そうか。悪かった。早とちりだったよ。」
「全くだ。」
「で、あんた。ユダになりすますとはどんな事情で?」
「あぁ。おれはホロノウス打倒のため、グラディウスにユダのフリをして乗り込んだ。友人は自分が潜入した時の名前のユダを使えばどうにかなるって言っていたんだ。」
「あんたはユダの友人か…。もしここを出られたらお前の友人を殺すことになる。いいか?」
「あぁ。あいつは強すぎるからな。返り討ちになるなよ?ナジャータ!」
「心外だな。」
そしてドロガが切り出した。
「その…ユダはなにかしたのか?」
「フェルーノと共謀して俺の息子を殺したんだ。フェルーノがグラディウスのトップになる為にな。」
「リグルスがそんなことを…」
そう呟いたドロガをナジャータは見逃さなかった。
「リグルス?誰だそいつ。」
「あぁ。ユダはレグルスの仮の名前なんだ。もしかしたらその」
「レグルス…。覚えておくよ。ドロガ。」
「でもナジャータはこんな牢に?」
「いや”ボスの指針を蔑ろにした”とは言われたが、なかなか納得入ってなくてな。」
「どうするつもりだったんだ?」
「息子を殺されただからな。フェルーノにお灸を添えてやったつもりだった。」
「フェルーノにお灸を添えるって…おっちゃん何者だ?」
そしてナジャータは答えた。
「俺はグラディウス先々代のボスだ。」
「!!!?」
***
「ねぇ…どうする?」
「何がだよ。」
「暇じゃない?」
そう話すマリナとクロスの2人は肌寒い中、ホロモノスハウスの前で佇んでいた。
「なんか、なんだかんだすぐに済んじゃったね。」
「ひとえに俺のおかげだな。」
「そうだね。これはクロスのおかげだよ。」
「やめろよ恥ずかしいだけだろ」
「あははっ面白いね!クロスは。」
「うるせぇな。」
そしてマリナはハッとした顔で言った。
「あーしたちはお役御免だね。さ。あとは暇つぶし!ターンバックストリートでショッピング!!」
「ショッピング?ははっ、どうせ死にかけの店かホームレスが看板立てた露店しかないだろ。」
そう呆れた顔をするクロスにマリナは「チッチッチ」と人差し指を揺らした。
「クロスくん。そういう場所ほどディグると宝が出てくることがあるのだよ。」
「そうか。まぁいい。着いてくよ。」
「え、いいよ別に。つまらないでしょ?」
「ちげーよ。女ひとりでターンバックストリート観光だなんて危険だっていってんだよ」
「そっか。そうだね。行こっか。ボディーガードクロス」
「はぁ…お前と喋ってるとカロリー使うわ。」
そしてはターンバックストリート西の区域、A区にて、マリナ、クロスによるショッピングが始まった。
「おじさん、これいくら?」
そうマリナが指差す先には顔が半分になったネックレスがあった。
「あぁ。これは銀貨2枚だ」
そういう男にクロスは口を挟んだ。
「だめだ。高すぎる。マリナ。他に行こう。」
「でもなんか惹かれるんだよね…」
「だーめだ」
「えーけちぃ」
「ほら、行くぞ!もっと他の物にしろよ。センスわりぃな。」
「悪くないもん!あーしがハイセンスすぎてクロスの目が死んだ魚の目なだけだもん!」
「俺が死んだ魚の目なら、お前は落ちてくる金をパクパクしてる鯉だな」
「鯉ー!かわいくない!」
そういうマリナにクロスは笑った。
「とにかくお茶しよ!お茶!喉乾いて死にそぉ〜。」
「あー。そっか。それもそうだな。探すか!」
そういうクロスの目を盗んでマリナは遠くへ行ってしまった。
「あぁー!あいつ!まじで自分勝手だな。」
そしてマリナは走って、さっきの男の店に向かった。
「おじさん!さっきの半顔のドクロちょうだい!」
「残念。さっき売れちまったよ。」
「えぇ…運命じゃなかったのか……。じゃあ、そいつから買ってやる!どんなやつだった!?」
「あぁ。フードを被った長身の男だったよ。全身真っ黒で怪しかった。それにただならぬ魔力を纏っていた。」
「魔力!?おじさん魔法使い!?」
「あぁ。齧った程度にな。」
「でもそっか…ただならぬ魔力…」
「まぁ、あの魔力じゃあ、酷く強いだろう。縁がなかったと思うべきだな。」
そこへクロスが走ってやってきた。
「おい!お前!勝手にどっか行くんじゃねぇよ!なんも買ってねぇだろうな!」
「買うつもりだったんだけどね。先を越されちゃったみたい。」
「まぁ、良かった。おっさん、悪かったな。うちのマリナが。」
「いいのさ。」
そして1呼吸置いたあと男は話した。
「嬢ちゃん。黒い服の男を探すのはやめておけ。そいつ見た事かもしれねぇ。おれの読み通りならグラディウスのボウェールかもしれねぇからな。」
「ボウェール?」
「あぁ。縊死場のボウェール。首吊りの魔法を使う男だよ。顔は見た事ねぇが。俺の見た男はただもんじゃねぇ雰囲気が漂っていたよ。」
「縊死場のボウェールは強いのか?」
そう問うクロスに男は言った。
「強いさ。グラディウスで1位2位を争うほどにな。」
「フェルーノが1位じゃねぇのか?」
「ドン・フェルーノはそこまで強かねぇよ。ただ、己のカリスマ性だけで成り上がった男だ。サシでやりあったとしたらボウェールには敵わないな。」
そこにマリナが「はい!はい!」と手を挙げて質問した。
「グラディウスに魔法使いは居るの?」
「あぁ。いるさ。ボウェールこそターンバックストリートでは最強の魔法使いだよ。」
そう語る男にクロスはマリナに聞いた。
「最強の魔法使い。マリナ、勝てるか?」
「わかんないよ。なんで?」
「いや、なんでもないけどな。もし出会っちまった時、対処できるかなって思ったんだ。」
「そんな事ないでしょ。」
「そうだな。そうあって欲しいよ。」
そう話すマリナとクロスに店の男は手を払うような仕草をした。
「ここは店の前だ。買わねぇならどっか行ってくれねぇかな。」
「あぁ、わりい。」
露店街から出た2人はまた、ショッピングを続けた。
「結局なになら買っていいわけ?」
「いや、カフェとか。酒場とか。時間潰すならそんなもんだろ?」
「でもあーし、作戦が上手くいっているか、不安なってきた……」
そういうマリナにクロスは言葉を濁した。
「うーん。どうするか。」
「一旦見に行くとか…?」
「透明人間作戦が破綻するじゃねぇか!」
「でも、ちゃんと割れてるかどうか…」
そこへ号外を配る少年が自転車で走ってきた。
「号外号外!」
「それを手に取ったマリナとクロスはニヤッと笑った。」
【「号外」ホロノウスにスパイ発覚!グラディウスからのスパイ容疑で容疑者を処刑か!】
「まて。まて。まて!俺らの作戦で死人が出るのか!?」
「透明人間作戦。必要な犠牲だね。」
「でも容疑者にはわりぃが、上手くいったことにはなるな。」
「でもクロス、容疑者が否定し続けたらどうなるんだ?」
「ターンバックストリートはそんな甘かねぇよ。疑えば即処刑だよ。」
「ほんと怖い街。早く出たいわ。」
「作戦とは少しズレたが、あとはグラディウス班だな頼むぜドロガ、ロディア、レグルス!」
***
「おい!出ろドロガ!」
「え?ぁ?」
寝起きのドロガは目の前にいる男に気がついた。
「レグルスー!」
「あぁ。お前を助けに来た。」
「じゃ、ナジャータも!」
そう言いかけたドロガにレグルスはスパッと切り込むように話した。
「あいつはダメだ。ドン・フェルーノを操作してグラディウス崩壊に繋がる行為をした。そんなやつ置いておけない」
「待てよ。なんでグラディウスが崩壊しちまったらダメなんだ?」
「あぁ。それのことなんだが……」
そしてレグルスはニヤついた。
「俺はグラディウスのフェルーノに加担してマグヌスを殺させた、レグルス改めプロテンス4号、ユダだ。よろしく。」
「プロテンス4号……」
「あぁ。元々俺はプロテンス4号、リグルスは俺が殺したプロテンス3号の名前さ。何に対しても甘ちゃんだったよ。」
そしてプロテンス4号ユダは笑いながら答えた。
「しかしあの時、超麻薬AWSSの詰まった第二基地を潰したちまった。それでフェルーノにはぶちぎられてしまった。」
そう手袋をとったユダは小指が切り落とされ、魔族指になった手をヒラヒラと見せた。
「俺はグラディウスの問題児になっちまったんだよ。。だから株を上げるためにホロノウスを滅する計画を立てたんだ。」
そこでドロガは思いついたかのようにユダに睨みをきかせた。
「ロディアはどうした…?」
「あぁ、あのガキは二度と動けないようにしておいたよ。」
「どういうことだよ!」
そうカッとなったドロガにユダは冷笑した。
「おうおう。落ち着けって」
「無理だ。ロディアに合わせろ!」
そしてユダはドロガにニヤついた
「会うか?凄惨な状態でいいならな。」
そう言ったユダの一言で男がロディアの腕を掴み連れてきた。そこにはアザや傷と血でボロボロになったロディアがいた。
「ロ…ディア…。」
そう呟くように言ったドロガは我に返ったように叫んだ。
「ロディア!無事か!生きてんのか!!」
「うん…なんとか。」
少しほっとしたドロガにユダは人差し指以外を織り込んだ状態で「パン。」と指をあげた。
その時まるで銃弾を受けたかのように鋭い一撃が頭に直撃した。即死だった。
「ドロガ!!」
そう叫ぶロディアにユダは腹を殴った。
「静かにしてなさい。」
復活したドロガはおりに飛びついた。
「おいおい!こいつアンデッドなのかよ。計画ハズレだな。」
「おめぇ、ここを出れたら真っ先に殺しに行くからな!」
「言うだけタダだよな。」
「おい!ふざけんな!ロディアを解放しろ!」
「さぁ、お前のお仲間の作戦が成功したみたいだ。アイツらが乗り込んできてるらしい。ホロノウスを叩けるのは確実だな。」
「お前…おれらを使ってグラディウスに身を置こうとしてたのか!」
「正解だ。お前らみたいなお人好しの甘ちゃんが一番使いやすくて便利なんだよ。」
「ふざけんよ…」
「俺は晴れて義手屋を卒業だ。」
そしてユダは話し始めた。
「俺はフェルーノにどうすれば好かれるのかだけを考えてきた。でもまさかお前がアンデットだとは思わなかったよ。」
「何の話だ。」
「あぁ。今思いついたんだが、お前をとことん絶望させてやろうと考えた。」
「絶望?」
「あぁ。お前が死ぬより嫌なこと!それは、お仲間を殺されることだ!そうだろ!?」
そして先程の手の形をロディアに向けた。そしてドロガは「やめろ!」と叫んだが無情にもユダは「パン」と呟いた。
ぐったりの項垂れるロディアを見てドロガは絶句した。
「ははははは!お前、ほんっと面白いな!色んな面が見れて楽しいぜ!」
「ロディア…死んでねぇだろうな!」
「さぁ?彼女の”努力次第”だ。」
「殺してやる。ユダ。」
「殺してみろ友達の1人も救えないグズには何も出来ないだろうがな!」
ドロガは涙を流しながら復讐心のこもった表情をした。それを見て笑ったユダは牢獄から動かないロディアを側近に持たせ立ち去って言った。
***
ジジッ
「こちらプロテンス2号。作戦βを開始します。」
グラディウスにはプロテンス2号と呼ばれる男と魔法使い4人が
「こちらプロテンス1号。許可する。」
そしてプロテンス1号と呼ばれた男は真剣な顔で呟くように声を発した。
「いよいよだな。ユダ。決着をつけよう。」




