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第34話 守り神

「クロスー。おれらもう寝るぞ?」


そうドロガは声をかけた。


「あぁ。先に寝ててくれ。俺はもう少し起きてる。」


そう返したクロスはロディアの体を触った。


「ほとんど傷はない。爪も生えてきたな。気分はどうだ?」


「とてもいい…全然痛くない……」


「そうか。良かった。」


「でも左目が暖かい。」


「あぁ。今再生を試みてる。できるか分からないがな。」


「なんでこんなに良くしてくれるの?」


「お前の妹探すためだよ。うちのリーダーが決めたんだ。それに従うしかねぇんだよ。」


そう笑うとロディアもつられて少し笑った。


「お。今笑ったか?初めて見たぞ。お前の笑顔!」


「わたしも……わたしも久しぶりに笑った……」


「じゃあ今日はロディアの笑顔記念日だな。」


「なにそれ」


2人は一緒になって笑った。


***


翌朝…


「おはよーって、クロス、おめぇロディアと寝てんのかよ。」


「あれじゃない?左目がどうのこうのってやつじゃない?」


そしてドロガはクロスをバシバシ叩いて起こした。


「なんだよ!いてぇな!!」


飛び起きたクロスにドロガは笑った。


「で、ロディアの目はどうなったわけ?」


そう聞くマリナにクロスは冷静に答えた。


「あぁ、回復したぜ。まだ不慣れでピントが合わせにくいらしいがちゃんと治った。」


「そ。さすがね。うちの司祭は。」


そしてドロガが声を張った。


「よし!ロディアの妹探しに行くぞ!」


「ちょっと待てよ。ずっとロディアを背負っていくつもりなのか?さすがに無理あるぜ。せめて義足だけでも……」


「無理だよ。ここら辺にそんな店ないと思う。」


そう言うマリナにクロスは落胆した。


「あるよ。わたし知ってる。」


その言葉に全員の視線がロディアに集まった。


「グラディウスの人で足を飛ばされた人がいてついて行ったことがある。」


「なんでグラディウスに着いて言ったんだ?」


「私はグラディウスに潜伏してた。」


「「「なんだって!!??」」」


「フィミアはグラディウスに連れていかれた。だからわたしが助けなきゃ行けないと思った。だってお姉ちゃんだからね。」


「ロディア。それで……」


「うん。潜伏がバレて拷問の末、目と手足と…色々を失った。」


そう話すロディアは爪のない右手と髪を上げて欠損した右耳を見せた。


その場の全員が凍りついた。


「わたしは復習しようとは思わない。でもフィミアを助けたい。協力してほしい。」


「元よりものつもりだ。妹探しはな。」


「そうね。仕方ないわ。ドロガ様様のご意向だからね」


「行くか!グラディウス!」


「ほんとに来てくれるの?」


そう目を丸くしたロディアにドロガは言った。


「しかしだ。お前は今じゃただのお荷物!義足を買いに行くのが先決だ!」


「でもわたし…お金ない……」


そう言うロディアにドロガは満悦の表情で言った。


「心配するな。今のおれ達は小金持ちだからな」


***


「フリン様、変わりましたね。前はもっとネガティブ〜な感じでしたけど。」


「それを言ったらシエロもクルヴァも一緒だろう?」


『そんなことない。僕は元々こうだ。』


「そうですよ!フリン様だけです!」


フリン達4人は黒魔術の魔法使い ダイレンに会うため、南の国トゥルムホークへ向かっていた。トゥルムホークへ向かうにはまず悪魔の地とも称されるニエヴィデン地帯を通ることが必須だった。


その道中オズゾーの馬車に揺られ物思いにふけっていた。


「いや、みんな変わったんだよ。シエロもクルヴァも、あいつらに毒されたんだ。」


『全くだ』


「嫌なのですか?」


そう問うシエロにフリンは笑いかけながら言った。


「いいや、むしろ良いよ。この方がいい。前よりもの冒険が楽しくなる。」


「私もそう思います。」


『 僕もそう思う。』


「みんな変わったんだな。きっと幸せの兆候だ。」


そういうフリンにシエロは笑った。


「どんな兆候ですか。」


「だから幸せがすぐそこまで来てるってことだよ!」


「だといいですね。私もそう思うことにします。」


そう微笑んだシエロにフリンは話を変え真剣に話した。


「しかしだ。このパーティには大きく欠落しているものがある。」


「なんですか?」


「司祭、つまりはヒーラーだよ。」


「はぁ、確かに必要ですね。」


「この先小さな国があればそこで勧誘して、招き入れればいいが…それができなければ悪魔の地、ニエヴィデン地帯にそのまま入ることになる。」


「ニエヴィデン地帯は一切国が存在しない場所で、麻薬や、臓器、人身などの売買が行われているとも言われている場所ですからね。なんせ、魔族、魔物の温床とも言われているだけあって心配です。」


「あぁ、あそこは、いつ殺されても文句の言えねぇ場所だからな。」


「では次たどり着いた小国で司祭を探しましょう。」


***


「えー南下するのかよ…馬車できた意味ねぇじゃん…」


そう悪態を着くドロガにマリナはチョップをお見舞いした。


「さっきかっこいいこと言ってた奴はどこ行ったの!」


そう言う2人にクロスにおんぶされてるロディアは「ごめんなさい…」と心細く言った。


「ロディア。お前は悪くねぇんだ。謝るなよ。」


そこにドロガがロディアに話しかけた。


「なぁ、ロディア!この近くに美味い飯屋ねぇか?」


「あるよ。でもあっても法外な値段だよ。」


そこにマリナが話しに入った。


「そうだね。そろそろなにか食べようか。時間的には朝昼兼用だね。」


「そうだな。ロディア、おすすめの場所まで案内してくれ。」


「わかった。」


そしてたどり着いた場所はお世辞にも綺麗とは言えない薄汚い酒場だった。


「お…おい、ロディア。他の場所にしないか?」


そう提案したクロスに対してドロガは心躍る様子で酒場に入っていった。


「まぁいいんじゃない?行ってみようよ。」


そう言うマリナにいやいやついていったクロスはその店のの酒を飲んで絶句した。


「うまいっ!ここの酒は何年ものなんだ!!!」


そしてドロガも好反応だった。


「ハンバーグめっちゃうめぇぞ!!」


「ほんとね!ロディアちゃんは食べないの?」


「うん。わたしいらない。」


「なんで?食べないと元気出ないよ?」


「あいつらの名を口にしてから気分が悪い…」


そういうロディアにマリナはバツの悪そうな顔をした。


「そっか。無理させてごめんね」


そこへ厨房からずかずかと男が現れた。


「おい!ロディアか!?」


「ひまわりのおじさん!」


「なんだお前ら知り合いか?」


そう聞いたドロガを無視して抱き合った。


「お前…どこいってたんだ……こんな体になっちまって……」


「まだ働いてたんだね。」


そういうロディアにサンガンは涙目で問いた。


「まだ、妹を追っているのか。」


「うん。」


「もう…諦めたらどうだ?しんどいだろう?追い続けるのは。」


そして緊張の糸が切れたロディアは男に縋って泣き始めた。


「俺はサンガンあんたらは?ここの人間か?」


「いや、外から入ってきた。怖いもの見たさでな。」


「馬鹿か?ここに入ったものはここから出ることはできないんだぞ」


「大丈夫さ。おれたちにかかれば出られるんだ。」


「呆れた。なんの自信だよ。こいつがリーダーだろ?暴走させたままでいいのか?」


「まぁ、リーダーが言ってんなら大丈夫なんだろうな。」


「そうだね。」


そう言うクロスとマリナにサンガンは頭を抱えた。


「まぁいい。早めに出ることだ。ロディアのような目に会いたくなければな。」


「おう!ありがとうな。でも、フィミアを探す約束なんだ。」


「ロディアの妹か…。悪いがもう…」


そう言いかけたサンガンにクロスは被せるように言った


「最悪の事態を考えて行動してたら前が見えなくなるだけだぜ?俺らは常に前を見てる。」


「そうか。ロディア。良い仲間を持ったな。」


「なか…ま?」


「そうだ。おれらのことだぜ」


そう言い切るドロガにロディアは少し笑みを浮かべた。


「じゃあ!そろそろ行くぞ!義足探し!」


そこにサンガンが口を挟むように話した。


「義足店にはおすすめの場所がある。そこには俺の知り合いがいる。そこに頼めばいい。場所は……」


***


「ほんとにここか?ただの酒場だろ?」


「しかもcloseって書いてるぜ?」


そう怪しがるドロガとクロスにマリナは「すいませーん」といいながら入っていった。


「あいつ肝座ってんな。」


3人も後を追った。


「あの…義足を作ってもらいに来たんですけど…」


「おめェらcloseの意味知らねぇのか?」


「すみません。でも急用なんです。義足を作ってもらいたくて…」


「あぁ、そのガキか。腕もねぇじゃねぇか。」


「義手も作れるの?」


「当たり前だろ。うちをなんだと思ってるんだ。」


「酒場。」


そう即答したマリナに男は笑った。


「ここの店主 プロテンス。義手、義足、義眼、専門店だ。」


「え、でも酒場って…… 」


「ありゃカモフラージュだよ。うちみたいなハイクオリティな店がグラディウスに見つかりゃ店ごと買われちまうからな。」


「そんなヤバいんだ…グラディウス。」


そう呟いたマリナを無視してプロテンスは指示する。


「まずは採寸だ。そのガキをそこに寝かせろ」


至る所を採寸するプロテンスはドロガ達に疑問を投げかけた


「なぁ、あんたらサンガンさんの指示できたのか?」


「あぁ。そうだ。サンガンに勧められた。」


「やっぱそうかー…このガキの顔見たことあったんだよ…」


そうあからさまに落胆するプロテンスは話した。


「あの人からならディスカウントしないとドヤされるからな……」


「安くしてくれんのか!?」


そう喜ぶドロガらにプロテンスは嫌々に値引きした。


「義手義足合わせて半額の銀貨5枚でいいぜ。」


「それでもだいぶ高いな。」


そう言うクロスに「払えないなら他所に行け」と一蹴された。


そして採寸しながらプロテンスは言った。


「金がねぇならここで終わりだが、どうする?」


「構わねぇよ。おれらは今小金持ちだからな。」


そういうドロガにプロンテスは笑いながら言った。


「じゃあ、ロディアは置いて、お前らはどっか遊んでおけ。」


「今日中に作れるか?」


そう聞くクロスにプロンテスはニヤついた。


「俺を誰だと思ってる?」


「助かるよ。」


そう言うクロスとほか2人はプロンテスの店を出た。


「さて。ロディア。ここからは俺の本領発揮だ。」


***


「ロディア、あいつに任せてよかったかな…」


そう不安がるクロスにドロガは笑った。


「大丈夫だって!変なヤツじゃなかったろ?サンガンの友達みたいだしな。」


「そうだよ。きっといいヤツよ!」


「そうかなぁ…」


そこへ大声で「魔物だ!魔物が来た!」と叫び走り抜ける男が来た。


そしてクロスはその男の肩をつかみ聞いた。


「落ち着け!どこに魔物が出た?」


「西の方だ…あいつはダメだ。誰にも倒せない。殺される!」


「西…西っつったらロディアがいる方角じゃねぇか!」


そう走り出すクロスにドロガとマリナは後を追った。


「大丈夫だプロテンスがいるんだ!」


「だめだ!あいつはただの義手職人だ!」


「だぁれがただの義手職人だって?」


そこには斧を持ったプロテンスと好戦的な巨大な魔物がいた。


「下がってください!ターンバックストリートの守り神とは俺の事だ!」


「あなたが!」


そう十字を切る男にマリナは唖然とした。


「まさか、守り神がプロテンスなんて……」


軽いジャンプで魔物のいる高さへ飛び上がると斧を振り下ろし魔物を縦一文字に切り伏せた。


「これで決着!」


魔物の真ん中のコアを潰したプロテンスは魔物の塵に隠れた。


プロテンスは民衆に一気に囲まれたが煙に巻かれ姿をくらませた。


「あ!ロディア!」


そう言ってプロテンスの店に走った3人は走ったが既にプロテンスは義足を作っていた。


「まだ、できねぇぞ。」


そうぶっきらぼうに言うプロテンスにクロスは言った。


「さっきはありがとう。助けて貰って。」


「あ?助けた?あぁ。さっきの……ありゃ守り神の仕事だから。」


「毎回やってんのか?」


「いーや。俺の気分が向いた時だけだ。」


そこにドロガは割って入った。


「なぁ!おっさん!グラディウスのフェルーノって知ってるか?」


「あぁ、ドン・フェルーノな。あいつはグラディウスのボスだ。前のボスを殺して王座を勝ち取った。最恐の男よ。そいつになんか用でもあんのか?ラブレターか?」


「ロディアには妹がいるんだ。」


そう声を出したのはクロスだった。


「妹の名前はフィミア。グラディウスに誘拐されてる。」


「そんな事のためにグラディウスを相手にする気か?」


「あぁ。そうなるなら致し方ないと思ってる。」


「馬鹿だな。」


さっきまで作業を続けてたプロテンスは面と向かって話し始めた。


「時は15年前。ドン・フェルーノが幹部だった時代だ。あいつは先代のボスにえらく気に入られていた。」


***


「フェルーノ!また、大手柄だな!この調子ならターンバックストリートのボスになる日も遠くないな!」


「そうですね。ボス。」


「今回も貢献したフェルーノには、銀貨を3枚やろう」


「本当ですか!ありがとうございます。ボス。」


そう頭を下げたフェルーノに当時のボス、マグヌスは頭を撫でた。


「お前らも自分で仕事探してこい!片っ端から巻き上げろ!」


当時のグラディウスではあくまで金銭の独占が目的であったため殺生が行われることは極めて珍しかった。


そこに目をつけたフェルーノは殺害した後、金銭や金目のものを剥ぎ取るという残忍な方法に出た。しかしそれにはマグヌスも黙ってはいられなかった。


「おい!フェルーノ!お前、人を殺してるらしいな!どういうことだ!基本殺生は禁止なんだぞ!」


「そんなに怒らないでください。ボス。俺だってやりたくてやってる訳じゃないんですよ」


「なんでもいい。もう、お前は人を殺すな。次殺したら幹部から格下げだ。いいな?」


「はい…ボス……」


そしてフェルーノが次の資金回収という名の強奪に向かった際、事件は起こった。


「すいません…フェルーノさん。こいつ死んじゃった…」


そういう部下をフェルーノが殴り飛ばした。


「ふざけんな!これも俺の責任だぞ!!幹部から下ろされちまうんだ!」


「すみませんすみません!」


何度も殴られながら謝る部下に周りも止めに入った。しかし時既に遅し、部下の息はなかった。


***


「フェルーノ。お前は追放だ。仲間殺しはやっちゃならん。俺からのせめてもの温情だ。ターンバックストリートから出ていけ。」


「ボス……俺こういう日が来るかもしれないと思ってたんですよ。」


「どういうことだ?」


その時はもうフェルーノのナイフの切っ先はマグヌスの腹の中だった。


「貴様……俺を殺せるとでも思ったか!戯け!」


「いいえ、こんだけじゃ無理だって分かってますよ!」


ぐりぐりとナイフを回すフェルーノにマグヌスは呻き声をあげた。


「早く死んでください。ボス。」


「クソ……今更ボスなんて言うな。俺の部下でもないただのクズだ!」


「クズが集まったのがターンバックストリートでしょう?」


そしてフェルーノはナイフの先をマグヌスに向けた。


「俺がここのボスになる。」


「お前がボスにはなれない。ここの連中は馬鹿じゃない!誰もお前の言うことを聞かない!」


「いいえ、これからのターンバッストリートは金銭のやり取りじゃなく命のやり取りですよ。金は副産物に過ぎない。従わない者は殺す。」


「そんなのがまかり通るわけないだろ……」


「まかり通して見せますよ。ボス。俺の世界の誕生ですよ。」

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